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Norma Jean / All Hail

01. Orphan Twin
02. [Mind over Mind]
03. Safety Last
04. Volunteer Tooth Filing
05. Landslide Defeater
06. Full Circle in Under a Minute
07. /with_errors
08. Trace Levels of Dystopia
09. Translational
10. Extra Dimensional Palate Cleanser
11. If[Loss]Then[Leader]
12. Careen
13. Anna
14. The Mirror and the Second Veil

ジョージア州出身のカオティックメタルコアバンド、3年振り通算8枚目のフルアルバム。

前身バンドのLuti-Krissの頃を含めると、なんと1997年から活動をしているバンドです。

世間的に再注目されつつある“カオティック系”と分類されるこの手のジャンルを、かれこれもう25年も続けている猛者。メンバーの流動性はとてつもないですが、バンドとしての方向性は一貫しているのも特徴ですね。

ハードコアからカオティックをメインストリームに押し上げたCode OrangeやVein.fmといったメンツ、Norma Jeanの元メンバーがFever 333で猛烈な人気を獲得したりと、明らかにシーンの流れが“来ている”今、重鎮である彼らがどんな作品をリリースするのか注目していました。

日本での注目度は殆ど皆無に見えるNorma Jeanですが、実は本国では2005年以降全てのアルバムでUS Billboard200のTop100に食い込んでるんですよね。

で、結論から申し上げると今作はUS Billboard200には登場せず。まあ仕方ないですかね。むしろこのジャンルでよくここまで来れたなという感じ。

肝心の内容なんですが、駄作かといえば全くそんなことはなくて、『Anti Mother』以降Coryが急速に培った歌心と、ヒリヒリとした焦燥感をぶつけてくるカオティックな音像はさすが。というか前作の『Polar Similar』をさらにネクストステップへと押し上げたような感覚で、とにかく素晴らしい出来栄えです。

カオティック系ならではのザラつきをそのままパッケージしたような本作、仕掛人がWill Putney(END,Fit For An Autopsy)というクレジットを見て妙に納得。

古巣のSolid State Recordsに戻って、レーベルも猛プッシュしている感じがするんですが、残念ながらセールスは振るわないようですね。不思議だ。

まず導入の#1「Orphan Twin」から#2「[Mind over Mind]」の流れが最高過ぎるんですよね。
呪詛を唱えるようなイントロから一気に感情をぶち撒け、微妙な歌い回しの変化で魅せるCory、これぞカオティックと言わんばかりのハンマーリフで叩きのめしてくるこの気持ち良さ。

続く#3「Safety Last」はアンセミックなフレーズが印象的な曲で、普通のバンドならブレイクダウンを選択しそうなところで敢えてしないシニカルな空気も良いですね。

インストを挟んで#5「Landslide Defeater」へ。Coryの歌心が光る曲で、むしろスクリームさえしてなければメロディーとして誰もが受け入れられそうな懐の広さを感じますね。アルペジオに合わせて歌っているサマはもはやArchitectsのSamさえ彷彿とさせます。カオティックとキャッチー性を本当にバランス良く組み上げてます。

#6「Full Circle in Under a Minute」は、感情の揺らめきを捉えた中盤のハイライト曲。スリリングな展開と吠えまくるCoryがもはや神がかって聴こえます。

#7「/with_errors」は後期Norma Jeanを象徴する歌心を前面に押し出した曲で、これまたキラーチューン。この表現力の振り幅は他のバンドにはなかなか真似出来ないですね。

#8「Trace of Levels of Dystopia」は一気にテンポを加速させながら畳み掛け、そのまま疾走感のあるメロディーへと繋げるナンバー。この曲も凄い良いです。前作も粒揃いな楽曲が多かったですが、本作は正直どの曲をシングルカットしても良さそう。このへんでもう傑作だというのを確信してましたね。

#9「Translational」は物憂げでミニマルな演奏からブチ切れ咆哮へと繋げて、陰鬱としたメロディーを随所に挟みながら比較的ゆったり進行していくナンバー。こういう実験的な曲って結構出オチするんですが、展開も良く練られていて全く退屈しません。

再び短めのインタールード#10「Extra Dimensional Parate Cleanser」を挟んで#11「If[Loss]Then[Leader]」へ。
もはやNorma Jeanが“エモい”世界線に到達してしまったような曲です。カオティックメタルコアでやってきたのに、メロディーが良すぎるんですよね。

#12「Careen」は不気味なサンプリングで幕を開け、ポストロック的な幻想アルペジオ、Coryは歌うことに全てを振り切った実験的ナンバー。こういうダウナーな曲がサマになっているのが凄いです。正直『Anti Mother』を初めて聴いた時は“どうしたNorma Jean?”と思ったのですが、現在の表現力の振り幅を見ている限り失敗はしてなかったんですねほんと。

#13「Anna」本作の大きなテーマでもある"All Hail"の核心に迫る事実上ラストソング。Coryがバンドに参加し、フロントマンとしてこのNorma Jeanというバンドをやってこれたことは、ファンのおかげであることを赤裸々に描いた曲。

セールス的にはやや振るわなかった今作ですが、ファンは間違いなくこのアルバムを愛し、聴き続けることでしょう。

個人的には最高傑作と呼べる出来栄えなんじゃないかと思います。
初期の暴走カオティックメタルコアからアダルトな魅力を得たNorma Jeanはシーンの中でも突出した個性を放ち続けています。

あとはメンバーの流動性さえなんとかなれば、世界を取る日が来ても全く驚きはしませんよ。

All hail!!! 

★★★★★



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