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The Contortionist / Exoplanet (2010)

インディアナ出身プログレッシブメタルバンドの2012年デビューアルバム。
キーボーディストを交えた編成はどことなくノースカロライナのBetween The Buried And Meを彷彿とさせられる。

この手のバンドにあるある、“初期は荒くれていた”が徐々に独自性が開花してオサレプログメタルに落ち着いていく流れは、The Contortionistも一緒。

殊にこのアルバムについてはプログレッシブデスコアと表現されたほどだ。

後期の振り切れた彼らも好きだが、年代といいこのアルバムの傑作度といい、これは1発書かんとだめやろて。

2010年代以降のバンドにはマストとなったDjent成分を、要所の緊張感ある部分でキザミズムとして登場させ、テクニカルなリフとごちゃ混ぜにしていく。

ボーカルはかなりエグみの強いグロウルと中音域の咆哮がメイン。時折入るクリーンはスペーシーに加工されてブヨブヨだ。
冒頭に挙げたBTBAMは異色と言えるフレーズ(ジャズ・ブルース・カントリー)と言った要素を飛び道具的に用いることでカオティックな音像を作り上げたのが『Alaska』〜『Colors』であったわけだが、

The Contortionstについてはウィットに富んだ曲展開を見せる。落ち着いたアンサンブルはポストロック的であり、柔らかに主張するシンセは空間美を押し広げていく。 

一聴してカオティックなことには間違いないが、そこはかとない切なさをギュッと凝縮したような展開がところせましと並ぶ。シューゲイズの影響もかなり受けているだろう。

そして音作りが非常にモダンである。モダンプログレッシブメタルコア+デスメタル+プログレを確かな構築力でもってまとめ上げている。ここを俺は一押ししたい。

個々のメンバースキルがお互いを潰し合うことなく完璧なバランスで組み上げられているんだ。

美しく切ない、そして破壊的である。そんな尖った要素をアンサンブルの中で完全に共存させられるバンドはそういない。

メンバー構成を見てもその後はオサレプログレに移行することはほぼ確定していたので、初期の荒くれはこのアルバムのみだが、プログレッシブデスとして評価は間違いなく星5つである。

この完成度のアルバムがデビュー作ですか。正直信じられない。アグレッシブなパートでの圧倒的攻撃性、シンセで彩るスペーシーなアレンジ、シューゲイズ的な音の洪水。

リダックス盤をリリースしてることからも、随分思い入れもあったんじゃないかな。

プロデューサーにKen Sushiを採用してるが、ええ仕事をしてくれたんじゃなかろうか。よくこんなアクの塊みたいなバンドをまとめあげたもんだ。

この頃既にBTBAMは宇宙を題材にしたトンデモアルバムをリリースしているので、いささか差をつけられてしまった感はあるが、単なるフォロワーの域は脱して彼らなりのプログレッシブサウンドを見事に確立したことに拍手を送りたい。

このアルバムの完成度は先も言ったがえげつない。

#1「Primal Derective」〜#2「floulish」のアグレッションは凄まじい。BPMは高めに複雑なリフと鉄槌を振り下ろすような刻み。中盤から流麗なアルペジオを交えたチルいアンサンブルを組み込み、印象的なフレーズが楽曲に艶やかさを提供している、そしてシューゲイズ的な感情の爆発、ラストはゴツい刻みでプログデスと化すのも良いね。起伏が見事だよ。クライマックス級の曲を冒頭2曲でかっさらう。

#3「Enpire」は攻撃性MAXのプログレッシブデス。アルバム前半を締めくくる圧の強い楽曲だ。流れが変わるのが予想できる。

#4「Contact」は儚げなアルペジオからプログレッシブデスへと雪崩れ込むナンバー。しっかりメロディーのある序盤からBPMを高めていく。ゴリ押しのプログデスに良い塩梅のメロディーを絡ませていく。空間的でアトモスフェリックなメロディーとの対比が美しい。

#5「Advent」はダルンダルンのグルーヴと刻みにオブリを被せるようにアルペジオやキーボードが有機的に絡みつく。しっとりしたパートとの対比はErraとかをほうふつとさせられる。

#6「Vessel」はしっとりしたイントロからテクニカルなリフの応酬と空間美を意識した小休止を挟みながら不協和音的な刻みフレーズでゴリ押す。ボイスチェンジャーを用いたスペーシーなクリーンなんかを挟みつつ煌びやかな展開へと繋げていく。

#7「Oscillator」は高音ギターと刻みがギュンギュンっと唸りをあげながらガツガツ歪ませ、メロウなギターソロも聴ける美味しい曲。儚げなキーボードからクライマックスに向かっていくサマは美しい。


#8「Axiom」はクリーントーンのギターにキーボードを全面的に配置。以降のThe Contortionistの美学がここにつまっている。

#9〜#11は連曲。クリーンがメインの爽やかさを感じるプログレッシブメタル。次曲の流れを予想させる序盤からガツガツ刻ませた攻撃パート。続くは少し仰々しいDjentyなグルーヴから疾走感抜群に走っていく。

テクニカルだが不必要に難解にさせない#10はこういう連曲との相性が良い。

ラストはアンビエントなイントロからじんわり柔らかく音空間が支配していく。丁寧に紡がれるベースライン、リバーブを効かせたアルペジオ、主張しすぎないキーボードの音色。バランスが素晴らしい。バンドサウンドが渾然一体となって襲い掛かりクライマックスのアグレッシブパート。全く無駄がない。

アルバムを聴き終えての充足感が半端ない。バンドとしての完成されたセンスを十二分に感じ取ることが出来る。

文句は特に無い。

★★★★★

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