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The Devil Wears Prada / ZⅡ

オハイオ出身のポストハードコアバンド、2年振りの作品。EP作品としては3作目ですね。

ビルボードTOP10入りを何度も果たしている実力者で、本作は2010年にリリースされたEP『Zombie EP』の続編となります。

00年代前半からのポストハードコアムーブメントに乗っかり、瞬く間にシーンのトップへと躍り出た彼らですが、正直このバンドが売れたのは未だ大きな謎です。

確かに1st〜2ndアルバム『Plagues』は時流に上手いこと乗っかった節がありましたが、以降はどんどんと混沌とした音楽性へと足を突っ込んでいきますし、恐らく当時のファンが普通についてこれたのは『Zombie EP』ぐらいまでじゃなかったんだろうか、そんな風に思えるわけです。

というのも、このバンドはポストハードコアを芯で行くタイプのバンドで、スラッジ、ストーナー、ポストロック、ドゥーム、ポストメタルなどなど、あらゆる要素を貪欲に取り込んで毎作品毛色を変えてきます。

アルバムとして最新作の『The Act』はまさに“ポスト”ハードコアと言わんばかりに、あらゆるジャンルから吸収し、練りまくったアレンジで聴かせるオサレバンドへと変貌しており、過去の面影はもはや感じられません。

そんな彼らがまさか『Zombie EP』の続編を作るなんて、思ってもみませんでした。こういうセルフオマージュは、失敗すると大いにずっこけてしまうため、期待と不安を抱えつつリリースを待ちました。

#1「Night Fall」のイントロを聴いて、「あれ、これは・・・?」と思いました。確かにアグレッションは感じられます。跳ねるドラミングや疾走感も戻ってきています。でもこれ、あくまで『8:18』以降で培ってきた要素を排除せずに曲作りを行なっています。シンプルなブレイクダウンこそ聴けるものの、過去作品をなぞったような感じは受けません。これは正直ほっとしました。だってそういうバンドじゃないんだから、彼ら。

#2「Forlorn」はザクザクと斬り込んでいくリフ、Jonathanによる絶妙なアレンジ、後期TDWPらしい退廃的なメロディーを織り交ぜたキラートラック。
COVID-19の世界的な大流行で、世界は変わってしまいました。
再び世界に警鐘を鳴らすために、過去作品である『Zombie』をテーマに持ってきたということなんでしょうか。

#3「Termination」は歌詞的にもしっかりと精神的続編を描いていますね。地をズルズルと這うような独特のアグレッションは『Dead Thrones』あたりを彷彿とさせます。Chris Rubeyというリフメイカーを2015年に失った彼らですが、その血筋はきちんと受け継がれていますね。

続く#4「Nora」では久しく聴くことのなかったタイプの咆哮(2ndあたりで多用してたスクリーム)が聴けたりしますが、あくまでベースになっているのは後期TDWPです。

ラストトラック#5「Contagion」は儚げなピアノイントロから始まります。これはJeremyの美メロソングか?と思った矢先に唐突な爆走。明らかに本作は全編通してアグレッションを強化していますが、ベースとなる部分は前作を引き継いでいるので質感は『Zombie EP』とは異なります。
それでも後半の分かりやすい落とし方など(刻みがまんまそれ)2010年にカムバックする過去ファンがニヤつく要素も入れてますね。

スマッシュヒットを記録した『Zombie EP』の続編ということで期待したファンも多いでしょうが、ベースとなる部分は前作までの流れを引き継いでいるように思えますので、肩透かしを食らってしまう人はいるかもしれません。
彼らの今までの変遷を良しとするか否かで本作の評価は分かれると思います。
しかし明確にアグレッシブなスタイルとコンパクトな5曲という構成を考えると、“改めて彼らを最初から聴いてみるか・・・”というそんな気持ちにさせてくれるんではないでしょうか。
少なくとも最新アルバムよりかはとっつき易くなっているので、新規ファンの方にはこっちの方が薦めやすいかもしれません。

★★★★★




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