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Periphery / Periphery Ⅳ: Hail Stan

Misha"Bulb"MansorことMisha率いるプログレッシブメタルバンド、3年振り通算4枚目のフルアルバム。

2010年にセルフタイトル作でデビュー、10年代プログレッシブメタル(即ちDjent)の看板と共に、世界中へとその名前を轟かせた脅威のバンド。

Djent生みの親とされるMeshuggah(本人達は否定)の影響下にある超絶テクニカルな音像で瞬く間にシーンの頂点へと登り詰めた彼らですが、2nd以降はDjentサウンドは比較的鳴りを潜め、自ら課したDjentlemanの宿命を打ち破りつつ、キャリアを塗り替えてきました。

とはいえ10年代のDjentブームの火付け役は間違いなく彼らだし、その自負も確実にあると思います。自らの音楽のマーケティング戦略として“Djent”を用いていただけであって、まさかここまでのムーブメントへと拡大していくことはMisha自身も予測出来ていなかったんじゃないでしょうか。

正直なところPeripheryがまともにDjentしてたのってせいぜい1stアルバムくらいで、それ故に超えられない壁と揶揄される展開になってしまったわけですが、そういう輩をテクニックとセンスと完成度でもってねじ伏せていく反骨精神というか、
こいつらかなり強かで本物であるということを頭から分からせていくアーティストとしての気概みたいなものを感じます。

そんな彼らが怒涛の10年代を締めくくるべく、セルフタイトル4作目となる『Hail Stan』を完成させました。

まず#1「Reptile」からしてやばい。キャリア最長の17分トラックをアルバム冒頭に持ってきて、“これが聴けなきゃペリファンじゃないペリ〜”と言わんばかりのトンデモ構成でアルバムは幕を開けます。
2nd以降実験的に取り入れてきたオーケストレーション成分をふんだんに用いたイントロ、相変わらずキレッキレのリフ捌きと構築美、ボーカルとしての限界をとっくに突破してしまったSpencer Soteloの圧倒的パフォーマンス。

#2「Blood Eagle」は“我こそは正統なるDjentKING”を高らかに宣言するような圧倒的グルーヴィーな音の壁を構築し、同ジャンルのTessesacTやBetween the Buried and Meを彷彿とさせるような展開、フレーズが盛り込まれていたり、まさに10年代を総括するような曲。

#3「Chvrch Bvrner」はテンポの速いグルーヴと性急な歌い回しでDillinger Escape PlanのGregを連想させられます。というかSpencerの表現力って無限の引き出しがあるのかしら。
ギター3本なおかつ鉄壁のリズム隊に埋もれることがない・・・近年稀に見る逸材なのでは。

#4「A Garden in the Bones」はミニマルな演奏から歌メロを挟むたびに肉厚になっていく楽器隊、かと思えば2ndの頃から好きなお遊びエレクトロを織り混ぜメロウな展開へと昇華させます。

#5「It's Only Smiles」はPeripheryが前から好きだった爽やかでポップなブレイク曲で、アルバム毎にこういう曲必ず入れてくるよなっていう謎の安心感を与えてくれるのであります。

#6「Follow Your Ghost」はダーティーなリフとガツンガツンと脳を揺さぶる刻み、やはり中盤からはテクニカルになっていきます。

続く#7「Crush」はダンサンブルなアンセムソング。こういう遊び心をいつになっても忘れない感じが良いですね。ラストはJRPG、それこそ故・すぎやまこういち氏を思い浮かべずにはいられない。

#8「Sentinent Glow」は彼らには珍しくスラッシュメタル風の疾走ナンバー。MarkとMishaによるサイドプロジェクトHaunted Shoresのアイデアが詰め込まれていそうな雰囲気。

#9「Satelites」は#1に次ぐ長尺ナンバー。エモい歌唱がメインのバラードで進行、4分半から一気に感情を爆発させSpencerの歌唱も最絶頂を迎えたような歌いっぷり。そして後半はそれこそ10年代を締めくくる最後のDjentを聴いているようなそんなグルーヴに包まれて終幕。

改めて聴いてみて、2010年代Djentの頂点たるその諸相を垣間見た気がしました。

というか彼ら2010年デビューで既にEP含め8作も世に放ってて、既にベテランバンドのような貫禄すら漂っているわけですが、まだ10年ですよ。結局あれやこれやと揶揄されながらも、新しいリスナーを獲得し、常に一歩先を見据えて動き続ける姿は強かだなというのがよく分かるし、実に現代的と言えるバンドだと思います。

★★★★★



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