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While She Sleeps / SLEEP SOCIETY(SPECIAL EDITION) (2022)〜様々なサブジャンルを飲み込んだ新世代メタルコアバンド〜


UK出身メタルコアバンド、2021年リリースの4枚目フルアルバムに新曲を追加収録したデラックス盤。

UK出身ではBMTHやArchitects、Bury Tomorrowなんかと並んで人気のあるバンド。

10年代以降のバンドってイメージが強いこのWhile She Sleepsだけど、結成は2006年。何気にキャリア15年を超えるベテランなんだよな。

初期はメタリックハードコアを軸に叙情的なリフと咆哮で攻める硬派なイメージがあったけど、作を追う毎にどんどん大衆化していってる。“俺らは売れてやるんだ”という確固たる意志を感じるね。

バンドとして生計を立てていくのがどれだけ難しいかってことに対しての皮肉を綴ったマーチを販売したり、ファンコミュニティを立ち上げたりと、プロモーションにおいても非常に現代的なアーティストだなと思う。

ぶっちゃけた話このバンドって1st以外まともに聴いてなくて、なんか以降は売れ線行きおったなコイツら・・・みたいな感覚で普通に新作とかスルーしてたってのはここだけの話だ。

で、『Sleep Society』もリリース当初は全く聴いてなくて、デラックスバージョンが出るこのタイミングでようやく重い腰を上げた感じだ。

新曲の追加で16曲1時間超えとなかなかヘヴィーなアルバムだがそれなりには聴き込んでみた。

悪くない。むしろこれは確かに“売れる”と思った。

初期の叙情派メタリックハードコアはやっぱり鳴りを潜めてて、HIP HOPからの影響をモロに反映させたり、デジタライズされたスケールのデカい曲が多い。
でも一つびっくりしたのは、リフやギターソロといった要素が完全に排除されているわけじゃなくて、しっかりあの頃のWhile She Sleepsが息づいてるのを感じたこと。

ソングライティングではプロデュースも務めるリードギターのSean  Longが重要な鍵になってるはずなんだけど、彼のセンスの良さは相変わらずだったってことだね。

#1「ENLIGHTENMENT?」はSEを挟んで叙情的なリードとアップテンポな刻みを見せる。初期と違うのはボーカルが明らかに歌うようになったことだよね。必然的にサビメロではテンポダウンするんだけど、メロディーは良いし後半からはアグレッシブな咆哮を取り戻す。

#2「YOU ARE ALL YOU NEED」は印象的なリフと疾走感が良い。メロディーはあるけど、この曲はがなるように歌うので攻撃性は高め。中盤からはスケール感増し増しの展開へ雪崩れ込み、フラッシーなソロが差し込まれる。

#3「SYSTEMATIC」はEnter ShikariのRouがフィーチャー。バキバキの電子音にラップ、その後もまくし立てるラップメタル的なボーカルにノリの良いメロディーが絡む。リフを除いてはこれはもう完全にシカリだよ。でもそのリフが結構カッコよかったりする。

#4「EYE TO EYE」は新曲だね。アグレッシブなイントロにバウンシーな咆哮を重ねる。メロディーは完全にクリーンだ。このクリーンボイスは誰が引き受けてるんだ?リズムギタリストMat Welshは咆哮型だから、リードギタリストSeanかベースAaranが引き受けてるのだろうか。さすがシングルカットするだけあって素晴らしい曲。

Biffy ClyroのSimonを客演に迎えた#5「NERVOUS」は儚げなピアノとバンドサウンドがスケール抜群に展開していく。MatとLawrenceのダブルスクリームはこのバンドの大きな個性だよね。ここまで捨て曲らしきものは1つもない。

短いSEを挟んだインタールード#5「PYAI」を挟んで#6「KNOW
YOUR WORTH」へ。メロディー重視の曲だけどリフが切れ味良くて、アッパーなドラムと合わさってカッコいい。

#7「NO DEFEAT FOR THE BRAVE」はスリリングなリフからメロディーが先行、一気にアグレッシブなパートへと突入、あっという間にコーラスを迎える。メロウな側面と攻撃性が非常にバランス良く、サウンドもギターリフや明瞭なリードギターがグイグイ引っ張る潔さがある。リフセンスはやっぱ最高に良いねこのバンド。

#8「THE ENEMY IS THE INNER ME」はシンセによるチルい装飾とバンドサウンドが交錯し、やはりメロディーが重視された曲。押し引きが非常に巧く、攻撃的なパートとの対比がシンプルにカッコいい。

#9「DIVISION STREET」はピアノによるバラードナンバー。

タイトルトラック#10「SLEEP SOCIETY」はデジタライズされたイントロからメロディックなギターとアッパーなリズム隊にLawrenceも咆哮が目立つ。ラップメタル的なスポークンを挟んでスピーディーなブレイクダウンを織り込む。その後はキャッチーな歌メロでフィニッシュ。

#11「FAKERS PLAGUE」は2019年頃に単発でリリースされていたシングル曲。オリジナル盤では収録されなかったけど、本作で入れてくれたんだね。デジタライズされまくってるけどやけにギターがカッコいい。こういう曲ってバンドサウンドが埋もれがちだけど、彼らの場合それが無い。

#12「THE LONG WAY HOME」は#9のようにピアノによる旋律の中歌い上げ、ダブステップっぽいアレンジや打ち込みがメインの実験的な曲。

#13は#2のアコースティックバージョン。#14「CALL OF THE VOID」はドラマチックなラストソングで、#15「DN3 3HT」はメンバーがファンに感謝を述べるSEトラック。

正直出来の良さにびっくりした。
彼らの目指す先はBMTHやArchitectsといった面々のようなよりビッグなバンドなんだろう。

まあ1stの頃のような叙情メタリックハードコアを聴きたい寂しさは感じるけどね。

ただ、本作のボリューム感でようやく満足出来たってのは正直あって、そうじゃなかったら前作と同じくらいの評価だったかも。

にしてもSean Longは稀代のリフメイカーだねえ。

★★★★★


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