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Architects / Hollow Crown (2009)〜マスコアからの大躍進〜

UK出身メタルコアバンド、2年振り通算3枚目、2009年リリースの作品。今や天下を取ったと言えるArchitects、現ボーカルSam Carter加入後2作目。

当時は同郷のBring Me The Horizonの弟分的な扱いでプッシュされていた記憶があるけど、サウンド的には全然違う。

元々のルーツはThe Dillinger Escape Plan系のマスコア系のカオティックな音が特徴で、クリーンも歌えるSamが加入したことで若干大衆向けの音楽性へと変化していっていた時期がちょうどこの頃。

明瞭なコーラスも本作では大々的に導入されており、幾分かキャッチーになったことで、その人気も目に見えて火が付いたと思う。

年中ツアーに出て、アルバムも2年に1回のペースで確実に作り上げていくというストイックな姿勢も、彼らの人気を押し上げていった一つの要因だろう。2006年デビューで既に9枚のアルバムリリースを成し遂げていることからも徹底ぶりを分かってもらえるはずだ。

彼らのアルバムはどれも素晴らしいが、初期の締め括りとして今作をフェイバリットに挙げる人も多い。キーボードやシンセ、より鮮明な歌メロを導入する次作『Here And Now』は彼らにとっても転換点だと思うので、確かに本作は初期の総括的なイメージが強い。

何より本作はリフのフックが凄まじい。ルーツにあるマスいハードコアとメタルコアを融合させ、カオスとキャッチー性を両立した稀有な作品だ。マスコア勢がここまで振り切った作品をリリースすることは実に珍しい。アングラな匂いを漂わせていた前作とは明らかに異なっており、メタルコアのムーブメントを的確に捉えた意欲作と言えるだろう。

#1Early Grave」は性急なリフ回しでらしさを見せながら、適度にシンプルさを演出する疾走パートや叙情メロディーが折り重なった名曲。ここぞの場面で登場する歌メロや、ラストの緊迫感が最高潮に達するビートダウンも聴きどころ。

#2Dethroned」はマスコア的なノイズやコロコロと転がるリフを軸に、メタルコアの解釈を加えた楽曲。中盤からは叙情的なメロディーと歌メロを大々的にフィーチャー。前作までの雰囲気と本作のモダンな空気を上手くブレンドしたこれまた良曲。

#3Numbers Count For Nothing」は爆裂ドラミングと疾走をとことん突き詰めたアグレッシブな曲。前のめりな中にも時折フックのあるギターが顔を出す。このセンスの良さはバンドのブレインでもあった故Tom Searleの影響が大きいだろう。彼は皮膚ガンでこの世を去るまで、このバンドのアイデンティティを確立させるために大きな貢献を果たした。
多くのバンドが、メタルコアというジャンルにおける個性の主張という点で苦労する中、Architectsは早い段階でアイコニックなリフ捌きや曲展開を定着化させ、バンドの個性を軸に様々なアイデアをアルバムに盛り込む余裕を見せている。


#4Follow the Water」もフェイバリットに挙げる人が多い曲。フックのあるリフが所狭しと並べられており、しかし難解になりすぎず縦ノリ感もしっかりと維持。鋭いギターの連発に鉄壁のリズム隊が骨子を支える。若干線の細いクリーンやヤケクソ気味のスクリームはSamがまだ成長段階にあったことを伺えるが、以降バンドの顔として圧倒的な存在感を放っていく、その片鱗は感じ取ることが出来る。

#5In Elegance」もArchitectsらしい鉄臭いリフワークが主だが、打ち込みなどエレクトロ要素を積極的に取り入れている。これらはTomの兄弟でありドラマーのDan Searleによるアイデアだろう。メロディックハードコアのような切なさも感じる曲。

#6We're All Alone」はマスコア要素の強い曲。ブラストや転調を激しく繰り返しながら叫びまくる。本作の傾向でもあるけど、マスコアと叙情メロのせめぎ合いが素晴らしい。

#7Borrowed Time」はタイトなリズム隊が炸裂する。かき鳴らすギターにアッパーなドラムがガツガツと絡んでいく。

#8Every Last Breath」はArchitectsらしい不協和なメロを連発。中盤にミニマルなパートを挟んで、叙情性の高い壮大なラストへと向かっていく。

続く#9One of These Days」はジェットコースターのようなマスコアナンバー。煽りまくるビートダウンで締める。

#10Dead March」はフックのあるリフを連発しつつも、本作では最もキャッチーと言えるメロディーをフィーチャーした曲。クリーンにもまだ青さが残ってるね。

#11Left with a Last Minute」はメロディックハードコアとメタルコアを融合させたようなナンバー。カオティックなフレーズは顔を出すが、前半はどこか甘酸っぱさがある。中盤でブレイクダウンを挟んで再び疾走。ラストはカオティックな落とし。

#12Hollow Crown」は序盤はクリーンがメイン。Samは本作から本格的に歌うことを目指しており、以降の楽曲でもこういったアプローチは度々取られることになる。

カオティックなマスコアだった前作前々作から、メタルコアやメロディックハードコアといった要素を上手くブレンドさせ、大きく躍進を果たすことに成功した快作。

★★★★★







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