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Monuments / In Stasis (2022)〜UKプログレッシブメタルコアの牽引者〜


UK出身のプログレッシブメタルコアバンド、4年振り通算4枚目のフルアルバム。

2015年に脱退していたドラマーMike Malyanが復帰、各所で引っ張りだこのAndy Cizekを正式にボーカリストに迎えての新作。

メンバー変動が多すぎて活動が安定しないバンドだけど、ようやく新作がリリースされた。元ペリのボーカルChris Barrettoの脱退で正直もう無理かなと思ってたんだけど、奇跡的に復活を果たしたね。

Andy Cizekは結構厳つめのグロウルやスクリーム、エモい歌唱の両刀使い。プログレッシブメタルコアをやるには持ってこいのボーカルだと思う。なんかAndyも長居はしない予感しかないけど。

音楽性としては2010年代以降Djent系プログメタルコア。Fellsilentのギタリストの片割れJohn Browneが結成したバンドで、Acle Kahney率いるTesseracTとともにUKのプログレッシブメタルコアシーンを牽引してきたわけ。

ひとまず安心したのはAndy Cizekのパフォーマンス。まあ凄いボーカルなのは知ってたけど、Chrisの後釜ってだけで相当ハードル上がるからね。グロウルについて言えば正直Chrisのが激烈感があって良かったかなと思うけど、Andyはクリーンが魅力的。そう、エモさで言えばErraのJesseに肉薄するよ。

今作はゲスト陣の豪華さも凄いね。かのMick GordonやペリのSpencer Sotelo、そして元FellsilentでありMonumentsにも所属していたNeema Askariがクレジットに名を連ねる。

どうやらMV以外がYoutubeで非公開になってるので、聴きたい人はストリーミングかフィジカル買おう。

#1「No One Will Teach You」のイントロでまず高まったよね。アグレッシブなリフとエフェクトをかけまくったウィスパーボイスから、艶やかな歌唱でフェードインするAndy。バウンシーなパートへと移行し、程なくしてエモいコーラスへ。
ていうか序盤の展開が前々作の「I, The Creator」を彷彿とさせられる。もはやセルフオマージュに近い。

#2「Lavos」はテクニカルなメロディーが光る序盤と粘り気のあるグルーヴパートとの対比で魅せる曲。リフもかっこいいけど新ボーカルAndyの表現力の高さが凄い。振り絞るようなスクリームやハイトーンがえげつない。ボーカルのエモさで激烈感が薄まるかと思ったんだけどそんなことなかったね。クレジットを見るとこれもMick Gordonと共作。

#3「Cardinal Red」はDoomなどのゲーム音楽製作者として有名なMick Gordonとの共作。リフにめちゃくちゃフックがある。Andyの歌唱パートではテッセ的な幽玄なアルペジオにバキバキのリズム隊が乗っかる。そんでコーラスから一気にテクニカルなDjentへと雪崩れ込んでいく気持ちよさ。これはMonumentsの中でも最高傑作と呼べる仕上がり。派手さは無いけどエレクトロな装飾も緻密に施していて隙が全くない。いやこれはすげえアルバムかもしれない。

#4「Opiate」はトリッキーなギタープレイを一瞬見せてアトモスフェリックな歌唱に突入。そうそう、Andyの加入で予想してたのはこういう曲。でもここまで比率で言えば明らかにグロウルやスクリームが多い。同郷のテッセがスクリームを捨てた一方でMonumentsはむしろ攻撃性に焦点を当ててきたのかもしれん。

#5「Collapse」はいきなりアグレッション全開。ハイピッチのスクリームとグロウルを巧みに使い分ける。歌メロは入るけど明らかに攻撃性重視。これぞDjentと言わんばかりの性急な刻みやテクニカルなプレイを連発。しかもこの曲の5分弱あるんだよな。そのほとんどを攻撃的な展開に割いてる。

#6「Arch Essence」は序盤にTesseracTを思わせるグルーヴを聴かせる。そしてすぐさま攻撃的なパートへと移行、歌メロはほんのエッセンス程度でほとんどがスクリーム。中盤でSpencer Soteloが登場してドラマチックな歌唱を見せると展開が変化。オーケストレーションをバックにまとわせながら徐々にスケールを広げていく感じはPeripheryっぽさもあるね。

#7「Somnus」は性急なグルーヴに早口にまくし立てるスクリームが絡み付く。コーラスやメロディーは入るんだけど、本作は一貫してメロに割く時間が短い。それによって明らかに攻撃性が上がっている。

またしてもMickとの共同作#8「False Providence」。アンビエントなエレクトロやオーケストレーションは彼によるものだろうか。本作の中では比較的歌メロにスポットを当てた曲で、中弛みするかと思ったけどそれが全然そんなことない。

#9「Makeshift Harmony」は高音ギターをかき鳴らしたりピロったりするイントロから歌メロがメインで進行。Dance Gavin Danceとかを彷彿とさせられるプログレッシブなポストハードコア曲。

#10「The Chimmerian」はキャリア最長の8分に及ぶ大曲。テクニカルなイントロを聴かせた後はキラキラとしたメロディーやアグレッシブなパートを交互に繰り出していく。物憂げなアルペジオを聴かせた後はアヴァンギャルドなプログレッシブメタルコアへと変貌。

正直あまり期待していなかったけど、これは間違いなくMonuments史上最高傑作と呼んで問題ないと思う。

2020年の「Animus」や2021年の「Deadnest」といったシングル曲をアルバムに収録しなかったのも本作に対する自信の表れなのかもしれない。

いや、もしかしてデラックス盤リイシューとかで追加収録とかしちゃうオチか?

★★★★★










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