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Acranius / Mercy Denied (2022)〜最高に聴きやすいスラミングデスメタル〜

ドイツ出身スラミングブルータルデスメタルバンド、5年振り通算4枚目のフルアルバム。今作から元Science of SleepのボーカルMarcus Jasakが新たに加入し、ツイン体制に。

これは激アツすぎる加入なんだよな。Science of SleepはポストWhitechapel的な硬派なデスコアをやっていたバンドで、2017年に解散してしまったけど非常に良い作品を残していた。再び彼のボーカルが聴けるのは素直に嬉しい。

まあぶっちゃけた話、2ndからフロントマンを務めているKevin Petersenの個性が激ツヨなこのバンドに、新たなボーカルが必要だったのかは微妙なところ。
でもMarcusのグロウルはそれこそWhitechapelのPhil Bozemanを思わせるディープさがあるから、キャラクターとしては中々強いよね。

で、彼らの音楽性ってスラミングブルータルデスと表現しているもののデスコア成分がかなり強い。音質もグチャッとしておらず割とクリア。そういう意味では結構色んな人が聴けるバンドなんじゃないかと思う。

#1「Rule Of Seven」から早速Marcus登場。筋肉質なグロウルを披露しているのが彼だね。で、このMV面白いのが初代ボーカルのTommが主演してるっていう粋な演出。やはり音質は分離が良く、なんか小綺麗なスラム。聴きやすさは抜群なんだけど、コアなリスナーからするとアレかもね。個人的には好きだよ。Marcusの加入によって一層デスコア感増したかも。

#2「Despairbound」はデロデロのグルーヴをまといながらモッシュを誘発するようにドラムがアグレッシブに攻めていく。分かりやすいブレイクダウンもデスコア的。

#3「Scorn」は素っ頓狂なノイズとブラストがごちゃ混ぜに。ボーカルは2人とも叫んだりパートを分けたり工夫していて、単純に攻撃性が増したよね。BPMを上げる場面や機械的な刻みが入ることもあり聴いていて楽しい曲。

#4「No Dignity」はミドルグルーヴとベースが際立ったイントロがニューメタルコアっぽい。そこからはいつものスラミングデスなんだけど、今作は機械的に刻む場面が増えて一層聴きやすくなった。ブルデスだけどすっきりクリアな感じ。

#5「Ruthless」はBig Chocolateがフィーチャー。ゲテモノ祭りを開催してる。ただでさえボーカル2人なのにそこに客演迎えるっていうね。最後のすんげえ良いとこを彼が持っていく。

#6「Still Unconquered」はかっちりとタイトなドラミングが曲を引っ張る。中盤から攻撃性を高めて爆走に転じていく場面はかなりスリリングで良いね。

#7「Mercy Denied」は仰々しいリフでノリノリのスラムを聴かせるタイトルトラック。やはり聴きやすさという点でこのバンドは秀でてる。ただどっちの層にも響かない説も微レ存。

#8「Crooked Leech」は肉厚なツインボーカルを響かせながらズンズンと打ち鳴らすスラムデス。スラミング系あるあるだけどもう少し爆走してくれてもいいよな。ドラムの足数で攻撃性を保つ手法なんだけど、それ以外の密度が少ないと曲の個性が少し落ちる。

#9「Feigned Death」はリズミカルなドラミングと少し明るめのデスメタルリフが聴ける。あれ、この曲良いじゃん。聴きやすさに振り切ってる感じがするし、これがAcraniusの形なんだろうな。その分ボーカルをツインにしたのは正解かも。

#10「Embittered」は本作の中でもかなり攻撃力が高い。スラムパートのエグみは本作の中でも最高潮に下劣。でも後半は聴きやすいグルーヴパートにもつれ込む。

前作からさらに聴きやすいスラミングデスになった。元々聴きやすい部類だったけど本作はかなりマイルド。

最高に聴きやすいスラミングデスを目指してるなら成功してると思うけど、どの層がこれを求めてるのかって問題はあるよね。

せっかくボーカル2人いるんだし、もう少し激烈な方向性にシフトしたら面白いことになりそうな予感。期待を込めて星4つ。

★★★★☆








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