「マスク絶対につけない主義者さま」と「マスク自粛警察どの」

昼間にJRの電車に乗りました。おそらく一番乗客が混まないだろうとのことで、先頭車両にしました。比較的空いていましたが、感染が気になるので、椅子には座りません。車両の一番前で、運転席との隔壁の角に陣取りました。周囲には誰もいません。

しばらくすると、その車両の中央辺りから、声が聞こえてきます。車両の中央付近の椅子に2人の男性が隣り合せに座っており、どうやらなにか文句を言い合っているようです。話の内容がぼんやり聞こえます。片方が「マスクをつけろ」と言い、もう一方がそれをずっと拒否している。電車内は空いており、空席もあります。それなのに、二人はずっと隣り合わせに座っているので、2人はあたかも会社の同僚のように見えました。どこかの現場に行って、一緒に会社に戻っているところかもしれません。ところが、しばらくして分かりましたが、実際には全くの他人らしい。偶然に隣り合った。それならば、なぜ言い合いをしているのだろうか?わざわざ、隣り合わせに座らないで、どちらかが別の席に移動して、離れればいいのに・・。

当初は、「マスクをつける・つけない」の話でした。コロナ感染のメカニズムや通常の風邪との類似性など、かなり高尚な内容も聞こえておりました。そのうち聞きかじっていた知識が「ネタ切れ」になったのでしょう。いつのまにか「座席をめぐる縄張り争い」へと、争点がずれてしまった模様です。「勝ち負けのバトルゲーム」にご執心でいらっしゃる。どちらも一歩も動こうとしません。両者の間では、おそらく「席を譲ったほうが負け」なのでしょう。その点だけは互いに共通の認識のようです。言葉を交わさないまでも、まさに「阿吽の呼吸」で、勝ち負けのルールが出来上がっている。当初は「感染防止」の議論だったのですが、いつのまにか「勝ち負け」のバトルゲームにすりかわってしまいました。しばらくすると、マスクの男性のほうが、目的地の駅で先に降りることになり、バトルは中途半端なところであっけなく終了しました。


「マスクをする・しない」という話は、たいしたことではありません。それに「座席を譲る・譲らない」も、これもさして重要な話ではありません。席はたくさん空いていますので、そんなに仲良く隣り合わせに座る必要はありません。些細なことなので、そもそも見知らぬ人との間でバトルをしてまで、頑張る必要はない。通常の人ならば、その場の事象を俯瞰して見て、「これは頑張る必要はない」と理解するものです。外向きにはバトルをしながらも、現状を客観的にみて、つまり別のことを同時に考えて、事象の重要性や適切な対応策を考えるわけです。ところが、この方々は、言い合いをしながら、別のことを同時に考えられないのでしょうね。バトルに一生懸命すぎて、ものごとの重要性を判断できないようです。TVのニュースで「かっとなって、やってしまった」という表現を頻繁に聞きます。まさにこの状況が「かっとなって」というものと思われます。


ところで、今日このご両人が隣り合わせたのは、偶然の出来事です。マスクをつける・つけないという話題は、対極にいるようでありながら、微笑ましいくらい、このご両人はあまりにもよく似ていらっしゃる。昔から「竹で割ったような性格」といいますが、このご両人は、きっとすべてのことに関して、裏表がないのでしょうね。判断には、非常にシンプルな「イエス」か「ノー」しかない。まわりには総天然色の世界が広がっているのですが、この方々の脳のなかの判断はいわば白黒です。ものごとの塩梅や加減を理解できないでしょうし、ニュアンスや言外の意味、比喩や反語表現なども、きっとこのご両人とも通じないでしょう。「他人の助言を取り入れる」ことは、見方を替えると「他人の命令に屈した」とも言えます。すなわち「負け」なので、絶対に受け入れられない。職場やご近所にかような方がいると、かなり面倒くさいでしょうね。


もしこれが私でしたら、些細なことで無駄な争いをして、おそらくその日1日中気持ちが回復しないでしょう。このての方はどうなのでしょうね。その都度反省していたら、反省頻りで、おそらくこのような不毛なトラブルはしないはずです。反省していないのは明らかです。たぶん1つのことしか考えられないから、別のことを始めたら、すぐに忘れるのかもしれませんね。方や「不届き者を成敗してやった」と達成感に浸り、もう片方は「おバカな自粛警察に勝った」と自負心に燃える。傍から見ると「甚だ生き辛い」ように思えるのですが、ご本人としては「特に支障はない」のかもしれません。

「かような人物が居て困る」との話を、TVのニュース番組で先日見たばかりでした。実際に「そのもの」を目の当たりにしたのは初めてですし、言行を見られたのは非常に貴重です。しかしながら、まずは、お互いに頑固頭の「似た者同士」である、つまり傍から見ますと「類似品」であり「お仲間同士」に見えることを自覚してくださいね。やはり、かなり「風変わり」でいらっしゃる。

それに、このご時世ですので、大声はいけませんわ。とにかく感染対策を標榜されるのでしたら、まずは電車の中では黙っていてくださいね。「黙食」と同じく「黙乗」か「黙車」でお願いします。願わくはテレパシーで以心伝心するか、携帯電話のLINEなどをお使いになって、是非とも「黙して」阿吽の呼吸にてバトルしてくださいませ。