日刊Rocket
次号は記念すべき20号です!
雑誌作りは今や編集者の執念がなければできないものだと考えています。大出版社の資本で、思い入れもなく作られている雑誌はここ数年で淘汰されていくことでしょう。小出版社ならなおさら厳しい。どれだけその雑誌を本気で作っている編集者がいるか、が、生命線となっていくでしょう。もはや書店店頭に本や雑誌を置いても、書店が減り、書店に人が来なくなっているのですから、売れません。存在を知られることもありません。
そこで3年前我々のようなベンチャー出版社が考えたのは直売り、手売り感覚。取材させていただいたアイドルさんたちが、SNSでそれを拡散してくれて、ファンが一部書店や通販で買ってくれる。あるいはライブ後の物販で買ってくれる。その流れで一定の界隈で認知度を上げながら、部数を伸ばしていければーー。
その狙いは3年という時間をかけて、小さな成功と呼べる段階まで来ている気がします。この期間に編集者としてもかなり新しい知見を得ました。どうすればあと500部伸びるのか。どうすればこの日に100部売れるのか。リアルとWEBで、また発売日と発売1年後で、売り方は千差万別ですが、こうすれば1部売れる、今度はあれをやれば10部売れる、という一定の法則がいくつも見えてきたのです。SNSはめちゃくちゃ大事! 前職でも20年以上雑誌編集者をやってきましたが、分業(編集・広告営業・書店営業)されている分、見えてない部分、実感として体得していないことが実に多かったのです。
あと、これからの雑誌は今までよりも読者の皆さんと密接な関係になっていくと思います。昔は編集者と読者のつながりはアンケートはがきだったりしたわけですが、今はその気になれば直接(リアル・WEB)語らうことが可能です。そして理想の形を共有しながら本や雑誌を作り上げていける。もちろん最終的には編集者が決めます。決めなければならないのです。それはリスクを負うのも、責任を持つのも編集者(出版社)なので、そこの最終判断は任せてもらうわけです。
独りよがりではなく、出来る限り望まれるものを作る、媚びるのではなく、求められているものを、編集の経験とスキルを持って調理(デザインというべきか)して提供する、明確にそういう時代になってきました。
今までもそうだったよ、という方もいると思います。ごもっともです。また、今までは勘が良かったり、特殊な嗅覚のある編集者が、ちょっとブームを先取りしたり、新しいブームを巻き起こしたりというケースもあるにはありました。しかし、早くて週刊、さらに月刊、季刊といった刊行ペースでは日々、秒単位で更新されていくニュース、話題、流行などにはとても追いつけず、スピードの面ではとても太刀打ちできません。
そうなると本や雑誌は、取り上げる人や事象をある程度の分量で、しっかりとした情報の深さをもって伝えていくことが大事になってきます。Rocketで言えば、その時その時のリリースに合わせた宣伝ぽい記事よりは、なぜアイドルになったのかとか、生い立ちから、音楽へに向き合い方、将来の展望、人生観など、しっかりとしたインタビューと、素敵な写真(写真集のように保存したいくらいの)を掲載することに意味があるなと思うわけです。
当然、読者の希望に応えようとして台割(雑誌の設計図)を組んでも、編集者の経験やスキルが大したことなければ誌面は魅力を伝えられず、雑誌も売れなくなるでしょう。そこには良い緊張感が生まれます。編集者は常にアンテナを張り、学び、努力をし、少しでも読者の想像の上をいくものが生み出せるようにしなければなりません。Rocket編集部では常に限界を超え続けなければならないとスタッフに言っています。筋トレみたいなもので、サボればすぐに誌面に出ます。これくらいかな、ではダメ。置きに行ってはダメ。校了の最後の一瞬まで、攻めるところは攻める、直せるところは直す、寝てる暇があったらキャッチコピーを直す、そんな感じで少ない人数で作っているんです(まあその時期の弊社は完全にブラック企業です。いいんです、好きでやってるので)。
ちなみに台割の時にイメージした誌面が完璧に再現できたなと思うことはほとんどなく、いつも完成した雑誌を見ては泣いてます。あと少し頑張れることはなかったか、と。80%くらいできたら、かなりいい方なんじゃないでしょうか。その辺り他の編集長さんとかに聞いてみたい。
そんなこんなで来年1月には20号が出ます。思えば本当にいろんな方に助けられてここまできました。次も妥協なき1冊を作るべく正月も返上で制作してまいります。そしてこの20号から定期購読とオンラインサロンの良さを併せ持つ定額のサービスを開始したいと思っています。サービスもりもりで、読者の方は十分元が取れちゃうようなサービスにしていきます。これも2020年の弊社の課題として1年くらいかけて成功させたいと思っています。
純粋に楽しいって思ってくれる方々と、次々と新しい何かを生み出していけたら。Rocket Baseの4年目もさらに加速して突っ走ります。
Rocket Base 水野寛
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