「style」全曲解説 M15. Route
この曲はストックとして作っていたもので、本来はアルバムと無関係でした。
そのため収録する予定がなかったし、いわゆる別件として取り組んでいたものです。
ストックにはいくつか種類があります。自分の得意分野の曲をひたすら作り置きしておくものもあるし、逆に自分にはあまり馴染みのないスタイルの曲に挑戦して「ジユンペイ流○○」みたいなものを作っておくこともあります。
「Route」はその両方を掛け合わせたタイプのストック曲で、ギターは得意分野なシャッフルだけどメロディは苦手分野である“主張強め”なものでした。
僕の作る曲は比喩が多かったり全体として作品に仕上げることを意図しているものが多いので、直接的なメッセージが乗っている応援歌みたいなものはほとんど作っていないんです。
だからこそ、ストックに入れる時点で苦手に挑戦するべくメッセージ性の強い曲にしたいという意図を持っていました。
そんな「Route」をアルバムに収録することになったのは、アルバムにもメッセージを持たせたいという想いが出てきたからです。
本来はM14「若葉の秋」を最終曲にする予定でしたが、それだとベタというか、ありふれた終わり方のような気がして腑に落ちていませんでした。
アップテンポな曲から始まってバラードで終わるって、いかにも王道というか。王道は王道で確かに重要なのだけど、よくある普通のアルバムになるのも面白くない。
コースで言えば飯物が終わって締めに出てくる温かいお茶にハーブソルトとガーリックが効いてるみたいな(?)、喩えとしてどうかと思いますが、とにかく最後にひとつ強いものを要素として入れたかったんです。
その「強さ」については主にふたつの領域で表しています。
ひとつはギターで、もうひとつは歌詞です。
まずギターに関しては、音数は少ないけど中身が詰まっていて密度の高い音像をイメージしていました。
強いギターというと、ついつい歪んだ重たい音を想像してしまいますが、個人的にはなんでもかんでも歪んでりゃ良いってもんでもないと思ってます。
歪んでいるけど中身がスカスカな音もあるし、逆にそのスカスカさがクリスタルクリアで美しく響いて「強さ」とはまた違った表現になることもある。
僕の中で強いギターの音というのは芯がしっかりしてて密度の高い、オーヴァードライヴとディストーションの中間あたりの音。「Route」のレコーディングでは、普段はゲインを下げてヴォリュームで歪を稼いでいるフルドライブのセッティングをやや変更し、ゲインを上げてEQを絞り、ごりっとした感じの音触でレコーディングしました。
オケは自分の得意なシャッフルで用意していたので、ソロやオブリなんかも楽しくのびのびレコーディングすることが出来ました。
「強さ」に関わるふたつめのポイントである歌詞については、冒頭に書いた通りメッセージ性の強いものにしたいというテーマは最初から意識していました。
自分のことを歌う曲というものが僕はあまり好きではないのですが、メッセージとして強く伝わるのはやはり作家自身の体験なのだと言います。
自分の目で視て耳で聴いた経験は、想像で語る他人の色恋なんかよりもよっぽど説得力があって、テーマが普遍的であればあるほどなおのこと他人に伝わりやすい、という理屈です。
「Route」の歌詞は、音楽をこころざした過去の自分、今音楽をやっている自分、この先どのようにすごしているかわからない自分について、それぞれの視点で互いに問いかけるような構成にしました。
歌詞は、音楽をこころざした過去の自分、今音楽をやっている自分、この先どのようにすごしているかわからない自分について、それぞれの視点で互いに問いかけるような構成にしました。
音楽に対する僕の想いのすべてを詰め込んだ歌詞です。
自分自身を過不足なく表現することをテーマにした「style」というアルバムを締めくくるにふさわしい、アツい曲に仕上がったと思います。
生きていれば、迷ったり不安になったり面倒くさくなったり何もかもがどうでもよくなったりすることもあります。
それは自分がどれほど大切にしていたものに対しても、起こりえてしまうものです。
迷いや不安に打ち克って自己実現を目指そう!という暑苦しいメッセージを送るつもりはありません。
たとえ迷ったとしても答はいつも自分の歩む道=Routeの中にあるはずだから自信を持っていこうぜ、というベクトルです。
何かに挑戦しているひとや壁にぶつかっている人はもちろん、月曜朝の通勤電車が憂鬱でストロングゼロを箱買いしちゃってるような人にも届いて欲しいな。
多くのひとに聴いてもらえたら嬉しいです。
「Route」はアルバムの15曲目。下記リンクから試聴できるのでチェックしてください!
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