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で、結局のところ納税方法ってどんなものがあるのか調べてみた(国税バージョン)

2023年3月15日、所得税と贈与税の2022年分の確定申告期日が終わりましたね。執筆時点の3月16日ではまだ個人の消費税課税事業者の方で残タスクがある人もいるかもしれませんが、ひとまずお疲れ様でした。

社長の山本です。会計士と税理士もやっています。

■納税手続に詳しい人って意外といない問題

さて、我々税理士の仕事は①税務代理(お客様の代わりに税務申告等をすること、つまりエージェント)、②税務書類作成(申告書等を作る)、③税務相談の3点がメインです。その辺は世間的にも「まあそうでしょうよ」という反応だと思います。けれども、意外にも税金の納付、つまり納税についてはわりと実務では二の次というか、ちょっと知識として苦手意識があるんじゃないかなと感じるのですよね。

納税額の計算は申告書を我々が作った結果として「こんなん出ましたけど」とお伝えするので、そのプロセスに詳しいのは税務でご飯を食べている税理士としては当たり前なわけですが、それを納付するのは納税者さんなので「あとは払っといてねー」というパターンがほとんどです(納税管理人をしてる税理士さんは例外として)。そのとき、HOW(どうやって払うか)は、毎回その税理士さんが得意とする納税方法の指示みたいなものに思考停止して従うものなのだろうなと。

他の税理士さんはわかりませんが、少なくとも私は納税の方法について体系的に理解しているか、と問われるとこれまでの実務の中で出会ってきた納税方法、つまり理論的と言うより一度やったことがある納税方法しか語れないなぁ、と思ったんですね。しかもあくまで手続の話なので資格の試験勉強に出てくるわけでもないですし。

そんなわけで、自分の勉強のためにあらためて国(=国税庁)が用意している納税方法(今回は国税のみです)を並べてみました。

■とりあえず何種類あるのか数えてみた

結論から言うと大きく7種類あるんです。7種類ですよ?!びっくりしましたね。調べる中で、freeeさんのコンテンツがすごくまとまっていて、これ読めば終わりでいいじゃん...とも思ったのですが、それではnoteにならないので私も微力ながら無理やりこの企画を進めます。

1. 窓口納付

私を含め昭和以前生まれの人間が「税金の納付」と聞けば真っ先に思い浮かべるオーソドックスな方法。紙の納付書を金融機関(銀行、信金、信組、郵便局)の窓口に持ち込み口座引落 or 現金で支払う、もしくは紙の納付書を税務署の窓口に持ち込み、現金で支払うこともできます。確定申告をしたことがある方、会社で経理に携わっている人には「あぁ、あの淡いオレンジとピンクのやつか…」となるやつです。

意外と書き方に細かいルールがあって書く人間にとっては何気にストレス大きいのですが、パソコンとかインターネットとかマジ無理!という方も一定数いるので、納付書携えて窓口行っちゃってぇ〜、という最終手段みたいな指示は私も何度かしたことがあります。

というかe-Tax(電子申告)じゃなく紙で申告する人にとっては令和の今も実質的にはこれしか選択肢ないんじゃなかろうか(確定申告書等作成コーナーで作って最後だけ紙に印刷する人は別かもしれませんが。その辺も実は詳しくなりたい欲はある。)

https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/24200042/noufu_houhou.htm

2. コンビニQR納付

独断と偏見で言うならあまり流行ってなさそうなこの方法。税額が30万円以下しか対応していません。ほとんどの人はそれで足りるとしても、インターネットで操作しているのに最後だけコンビニに出かけるんかい!というワークフロー全体を考えるとUXとしてフィットする人はいるのかなぁ、というのは疑問が残るのですが、他方で「いや、体を動かして納付したという記憶を焼き付けないと不安なんです」という人も一定いるのかもしれないなと思うと、銀行に並ぶのはいやだけどコンビニならいいや、という層には刺さるのかもしれません。

いずれにせよコンビニの公器としてのマルチプラットフォーム感ってすごいなぁといつもながら関心させられます。

https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/conveni_qr_nofu/index.htm

3. スマホアプリ納付

2022年12月にデビューした最もNEWな出来立てホヤホヤの納付方法。余談になりますが所得税のスマホ申告といい、国税庁はスマホ活用にめちゃくちゃ投資していますね。といてもいいことだと思います。実は2022年(令和4年)の所得税では私も自分の確定申告を実験も兼ねてスマホ申告してみましたが、かなりUXはいい感じでした。(納税は振替納税(7.を参照)なのでスマホアプリ納付は試していないのですが)

ただしこのスマホアプリ納付、ネーミングセンスに欠けないですか。「Pay納税」とか名付けた方がイメージしやすくてよかったのではないかと個人的な感想。

https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/smartphone_nofu/index.htm

4. クレジットカード納付

読んで字の如くクレジットカード決済で納付をするものです。私も一度いつかの源泉所得税の納付をこれでやってみましたが、楽でしたね。ECサイトとかで慣れ親んだクレカ決済ですからね。

ただし7種類の中で唯一手数料かかかります。そして高い!ランチ1回分が消えることはザラだと思いますが、資金繰り的に1ヶ月後の引き落としになるので、その分の金利だと思えばまあ、仕方ないかな、という整理ですね。

https://kokuzei.noufu.jp/

5. インターネットバンキング納付

今回の7種類の中で、一番わかりにくいのがこれだと個人的には考えています。加えて断片的な情報がネットに溢れていて、正直全体感を理解している方が少ないのもこれです。けれど、一番使い勝手がよく、定量的な統計情報は調べていませんが実務的に最も使われている、電子納税らしい電子納税農法だと思いますので、そのため少し長くなりますが丁寧にまとめます。

これいきなり強烈にディスりますが、圧倒的に名前が悪い。ダメですよこんなの。絶対にPay-easy(ペイジー)納付と呼んだほうがみんな幸せです。私はお客さんには「ペイジー納付」と言っています。

見たことありますよね、このマーク

https://www.jampa.gr.jp/payeasyより画像データ

ペイジー機能に対応している金融機関のインターネットバンクもしくはATMから操作して振り込むというものです。ただしATMからペイジー納付している人は寡聞にして聞いたことはありません。基本的にはネットバンクでの操作ですかね

注意点は「対応している金融機関」というのがクセなところです。みんな大好きネット専業銀行の楽天銀行、住信SBIネット銀行、GMOあおぞら銀行が非対応です(執筆日2023年3月現在)。きつい。他方でPayPay銀行だけは一人気を吐いて対応しています。いよっ!PayPay銀行!口座開設の審査もう少し優しくしてね!

それで、このインターネットバンキング納付をあらためペイジー納付ですが、さらに納税者を混乱させる言葉として「登録方式」と「入力方式」というものが出てきます。個人的見解ですが、"インターネットバンキング納付"なんていう荷の重い名前を課されてしまったが故に、電子納税と聞いたときにググるとこのペイジー納付がさも「私が電子納税代表である」みたいな顔して検索結果に出てくるわけですが(本当に知りたいのは「6. オンライン・ダイレクト納付」のことかもしれないのに、です)、さらにそこに入力方式やら登録方式と書かれていて、思考停止の末『よっしゃ、銀行の窓口行こか!』みたいな生産性の低いことが日本各地で起こっているんじゃないかなとすら想像しています。何を隠そう、数年前まで私がそうでしたからね

さて、ペイジー納付のうち入力方式と登録方式ですが、これは解説記事がそこら中に落ちているので、私が読んでわかりやすかったサイトを下記に貼っておきます。私が税理士だからなのか、登録方式が実務上は多いんじゃないか、入力方式は難易度高すぎないか、と感じるのですが、紙面の関係上ここでは省略させてください。

登録方式

入力方式

最後に余談として再びネーミングについて言及しますが、Pay-easyと書いてペイジーって読ませるの、企画会議では「いいねそれ!」となったんでしょうが、ちょっと狙いすぎましたよね。個人的にはスベってると感じています。知らないと読めないでしょ。「ペイ・イージー」と知らずに声に出して人に恥かかせるんじゃないよ。知らないほうが普通でしょうよ。

6. オンライン・ダイレクト納付

これも名前からだけでは想像しづらいネーミングですよね。e-Taxから申告したらメッセージボックスという受信箱に「あなたはこの内容で申告送信して、こんな感じで我々(=税務署)としては受理しましたよ」的なメッセージがくるんですね。そのメッセージのサイトの一部のボタンを押すと「直接(=ダイレクトに)」納付する金融機関口座が選べるんです(この口座は事前の申請により複数登録できます。)。あとは画面に出てくる候補の中から、どの口座で納付するか選び、納付日を指定して確定ボタンを押したらおしまい、という、わりと法人運営で納税に接する機会が多い人にはかなり便利なサービスです。正直「電子納税」と言った場合、対応する税目の多さも加味するとこれが一番王道な気がします。

7. 振替納付

日本が世界に誇る、みんなが知ってる「口座振替」という方法を利用した納税方法です。こちらも上記6.オンライン・ダイレクト納付と似ていて、確定申告したらあとは申告した納税額が勝手に指定期日に事前に登録した金融機関口座から引き落とされる、という納税です。まあ便利。しかも、これは中間予定納付にも対応しているので、まさに口座振替の面目躍如というか、究極納税期日忘れてても毎期の確定申告さえちゃんとやっていれば勝手に何がら年中何かしらの国税の納付期日が来てもその期日に引き落とされるのでも納付忘れによる遅延というのが起きません(引落日にちゃんと残高さえあれば)。ですが、対応する税目が所得税(申告所得税)と消費税の2種類に限られるということで、そこは注意が必要です。(法人には使いにくい)


なお、後付けになりますが、1.窓口納付以外は、「電子納税」として国税庁は整理しているようです。

■納税方法は単独で存在するにあらず

以上7種類をざっと見てきましたが、実際には好きなものを選択できるわけではなく、税目・申告方法・税理士利用の有無といった川上に来るワークフローと、あとは納税者の置かれている環境(e-taxの利用者識別番号を取得しているかどうか..etc.)の影響を受け消去法により決まる側面があります。本当はこのエントリーでその辺の代表的な組み合わせにも言及したかったのですが長くなったのでまた改めてまとめようと思います。また、今回は個人の方を暗にターゲットとして国税のみまとめましたが、法人の経営者さんや経理の方からするとむしろ地方税のほうがより納税方法のペインは深く広いと思いますので、地方税の納税方法のまとめも作るつもりです。

以上、お読みいただきありがとうございました。


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