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無料不妊去勢手術後に亡くなった猫達 #1

【センター聴き取り2023/2/6】

『クロちゃん』

2023/2/1
センターで不妊手術。

痩身で皮膚が薄い。皮下出血があったのでトランサミン(止血作用、抗炎症)使用。

糸:モノクリル(太さは不明)

正中切開
表面:3センチ切開
腹膜:3センチ以下

縫合
筋層:単結節
表面 単結節
皮下 連続
外側の留め:5つ(中はそれ以上)

〈遺体の確認時には、縫合糸が全く残っていなかった〉

手術当日の覚醒後に給餌した際には出血は確認されなかった。翌朝も出血なし。11時頃に連れて帰りリリース。走って逃げた。

2/4朝、腸が出た状態で発見され1時間後に死亡。

クロちゃん


『担当獣医師について』

A獣医師
動物病院に6年半勤務し、1,500匹の不妊去勢手術をしているが、腸がでた猫は居なかった。手技は今回と同じ。愛護課に移動して2年。

B獣医師の経験は不明

地域猫500匹のうち、2022年8〜9月頃、腸がでた猫が1匹いて病院を受診後敗血症で死亡。

『白黒ちゃん』

2/3 午前中に手術開始

麻酔:セラクタールとケタミンを筋肉注射。(体重測定し量を計算して投与した。実際の量は不明※ ケタミンは,痙攣発作を引き起こす可能性がある)元気があり、麻酔の効きが悪かったのでイソフルラン吸入。

オペ台は温めており、部屋の空調も有り。

術中の出血傾向はなし。

手術時間は雌で40〜45分。比較的、短時間でおわり、すぐに拮抗薬を投与。

17時にお返し18時にリリース。

リリース時に歩行困難を確認したため保護。

2/4 17時頃入院

〈入院先の病院より報告〉

2023.02.04.17:30頃に緊急で来院。この時点で強直性発作が出ており、 ミダゾラム (以下MDZ) 0.2mg/kg.im をした後、一度安静化。

T:38.0. P:190. R:30. BW:2.48kg, FAST echo: 腹水胸水なし。 腹壁ヘルニアなし。 腸管粘膜肥厚が広範囲

再度 けいれんが起きないよう、MDZをiv追加。

その後、前日に避妊手術を愛護センターで実施していたこと、 直進ができずに右斜めに歩行していたこと、瞳孔の左右不対称や痙攣発作を考え、前脳病変を疑い治療開始。 可能性として周術期の低酸素や脳虚血を考えた。 大きな構造上の異常は認めず、中枢神経系の病変を考慮した治療とした。 完全な診断には脳の観察やMRIなどが必要と考え、仮診断としている。 心拡大はなく輸液可能と考え、 ラクトリンゲルとMDZ をそれぞれCRIで夜間も輸波実施。 脳圧軽減を期待しプレドニゾロンをscした。

翌日にかけては意識状態は良く、光や音に反応しており、嚥下も可能であるが、 横臥位のまま起立不能。 四肢の反射を見ようと触ると四肢を一時的に伸展固縮するような姿勢をとるが、それ以上の行動には移せない程度の神経状態であった。

血液検査を再度実施し、大きな変化は認めなかった。

オーナーの希望で本日中の退院を希望されたためMDZなどを徐々に減量し、お迎えの18時半までにMDZは終了。けいれん発作の再燃は認めなかった。

変わらず脳浮腫の可能性もあるが、オーナーの自宅管理で十分な水分摂取は不可能と予想されるので浸透圧利尿剤は処方せず、プレドニゾロンのみを処方した。 抗菌薬も検討したが、おそらくコンペニアを打っているのかと 予想されたため使用は見送った。

2/5朝に亡くなりました。

白黒ちゃん


『リリースについての問題点』

センターからは、リリースの目安として、しっかり歩行出来ていれば良いという口頭での曖昧な指導のみ。

捕獲器やキャリーに入った状態ではふらつきの確認が困難であると同時に、仮に病的な歩行困難があったとしても、それが麻酔の影響なのか覚醒をしていないのか?依頼者には判断が難しい。

今後は、終了時間を記入して、何時間後にリリースが出来るが、それ以上時間を置いても歩行出来ない場合は病院へ連れて行くなどの注意喚起を記載したペーパーが必要なのでは?

『職員研修について』

研修は愛護課へ配属した際に、課の経験者から教わるのみ。主に臨床経験がある職員が配属される。全員に臨床経験があるわけではない。今後はTNRに特化した手技の研修も取り入れたい。

『ボランティア・獣医師からのアドバイス』

【M獣医師】
私がいた病院では連続での縫合は行っておりませんでした、一斉TNRの先生方もそうだったと思います。いろんなやり方ありますので、それぞれのやり方でメリットデメリットありますが、確かに連続だと早いですが、1箇所外れると全部外れるので、TNRはよせにくくても単純の方が良いかと思いました。また、腹膜は、私がいた病院ではナイロン糸(吸収糸より外れにくい)で縫っていました。一生残りますが、吸収糸よりアレルギーなどの反応は出にくかったと思います。(一斉では吸収糸だったかも)また、A先生のところではTNRでも皮膚はワイヤーです。ワイヤーは食いちぎることはないので(それでも、いつの間にか外れています)それも一考かとも思います。本当に各病院でいろんなやり方ありますし私がいたのは何十年も前ですので、センターのやり方が今は一般的かもしれませんが、再発防止には、連続縫合ではなく特に腹膜は単純縫合を行う(1針取れても全部取れるということはありませんので)、外れにくい糸を検討するなど、あるかとは思いました。縫合は私はできれば全部単純で行って欲しいですが、他の獣医さんの考えも聞かれた方が良いとは思います。

【スペイクリニックのボランティア】

栄養状態が悪く、皮下組織が薄く、縫合に自信がないなら、何でもかんでも手術せず、少し栄養状態が改善してから手術しなさいです。

結紮が下手なのか皮下組織を連続で縫合するのでこのような事故が起きるのです。

しかも皮膚が3センチで腹膜切開はそれより小さいとは
逆です!

トレーニングが必要です。

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