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自由のための覚悟

今朝、我が家にしては珍しく
テレビがついていた。

ニュースキャスターが
富士山の弾丸登山を抑止するため
山梨県側の登山口を午後6時から午前3時の間通行止めとし、また混雑緩和のため登山の予約システムが導入されることを告げていた。

ご来光目的の弾丸ツアーは
どうも危険なようだった。

しかし、である。
山に入るのに予約…。
そして登山とは
もともと危険なものだ。

そんな高い山
登ったことないけれど。

私はテレビ画面を凝視した。

そこまで高い山でなくとも
入山届を書くときに
私は覚悟する。

準備は充分だったかな?

ここから先は自己責任だ。
山を登るという自由の代わりに
私はこのとき自分の運命を
ひきうける。
迷子になって迷惑かけて
その間肩身の狭い思いを
させるかもしれない
両親の顔もちょっとよぎる。

それから出発する。

山ってそんなもんじゃないか?

安全って誰のためなんだろう?
危ないの知ってて止めなかった
と怒られる人のために
冒険は禁じられてゆくのかな?

山って誰のものだろう?


……


危険承知の自由がなくなっていく
気だるいような安全ばかりの
ウソくさいこの世界から
ちょっとばっかり冒険に行かせて
くれてもいいじゃないか。

予約ってなんだ?


短い時間だったから
そこまで考えていたかどうかは
わからない。

でも私は安全の気味の悪さを
感じていた。

横で私のみているテレビ画面を
同じように見つめていた次男が
パジャマがわりに着て寝た水着姿で
私に言った。

「弾丸登山するには静岡側から登らなきゃね。」


「……。」


静岡側も予約システム
導入いるかな?
私はちょっと思った。


誰のための安全か。

子どもが危険を承知でチャレンジ
するとき、嫌だけど私はそれを認めるんだろうな。

……。
予約システムアリかな。
禁止してないし。

よくわからん。

私がわからない気持ちのまま
テレビを見つめていると
次男が再び口を開いた。

「富士山の上の白いところ。
  あれはねほとんど雪なんだ。
 でも山頂には
 けっこうトイレットペーパーが
 落ちてるらしいから
 トイレットペーパーの白も
 入っているんだよ。」

私は、急にアホらしくなり
現実に帰って次男に言った。

「そろそろ水着から
 着替えたらどうですか?」

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