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低ナトリウム血症の補正

電解質異常はホメオスタシスの破綻であり、補正するときは基本的にゆっくり行うのが基本となる。※早く補正することで問題となることのほうが多い。
例:橋中心髄鞘崩壊症
【低ナトリウム血症の補正】

電解質の補正の計算では以下のように記載されている。
Na(mEq/L)=(140-血清Na)×0.6×体重(Kg)
K(mEq/L)=(4.5-血清K)×0.6×体重(Kg)
NaClの補正は、1-2mEq/kg/時以下


低ナトリウム血症をみたときにチェック項目

高血糖、高脂血症の有無はチェックする。
 高血糖→血漿浸透圧高値
 高脂血症、高タンパク血症→血漿浸透圧正常
 本当の低ナトリウム血症→血漿浸透圧低値
 ※血漿浸透圧=2×血清ナトリウム+血中ブドウ糖/18+BUN/2.8
血漿浸透圧を測定
尿浸透圧を測定
 尿浸透圧を測定し、心因性多飲症、大酒家を鑑別する
 ※尿浸透圧=(尿比重-1.000)×(3~4)×10000 (例:等張尿1.010=300~400)
ビールで水分を取っているにも関わらず、水分のみで食事=溶質(Na,K,タンパク)は摂取していないことが多い。したがって、尿を最大限に希釈しても尿量を確保できないので水が体内にたまり、低ナトリウム血症になる。治療は、食べればよくなるし、点滴してもよくなる。しかも急激に。
橋中心髄鞘崩壊症にならないように、5%ブドウ糖液などで補正速度の調節が必要な時もある。

低ナトリウム血症の補正の思考アルゴリズム

①血漿浸透圧を測定し、偽性低ナトリウム血症を除外する
②尿浸透圧を測定し、心因性多飲症と大酒家を除外する
③細胞外液量が増加、正常、減少を判断し、診断する。 
増加:心不全、肝不全、ネフローゼ症候群、腎不全
正常:SIADH、甲状腺機能低下症、副腎機能不全
減少
尿中ナトリウム<10mEq/L:腎外性ナトリウム喪失(嘔吐、下痢)
尿中ナトリウム>20mEq/L:Na喪失性腎症(利尿薬など)

【低ナトリウム血症の補正速度】
血清ナトリウムの上昇幅は1日に10mEq/L未満にしておく。

①体液減少型低ナトリウム血症
水分もナトリウムも不足している
(代表的疾患)利尿薬、嘔吐・下痢、熱傷、運動誘発性低ナトリウム血症

②体液正常型低ナトリウム血症
ナトリウムだけが不足している
(代表的疾患)SIADH、多飲症

③体液貯留型低ナトリウム血症
水分が過剰である
(代表的疾患)ネフローゼ、心不全、肝硬変

<鑑別手順>
「脱水あり」:体液減少型低ナトリウム血症
「脱水なし、浮腫無し」:体液正常型低ナトリウム血症
「浮腫有り」:粘膜や皮膚に浮腫があるなら、体液貯留型低ナトリウム血症

【検査】
まず血清ナトリウムを補正して意識が戻ったら低ナトリウム血症の原因検索、意識が戻らなかったら意識障害の原因を低ナトリウム血症以外に求める。
もちろん、脳の器質的疾患除外目的で頭部CTは撮影する。

低ナトリウム血症の補正方法

大原則:尿と同じナトリウム濃度の輸液を尿量と同じスピードで点滴すれば、血清ナトリウム値は変化しない
まずは高張液(細胞外液+塩化ナトリウム20mEq追加または生理食塩水+α)をゆっくり投与していき、採血で経過をみる方法でもよい。
120mEq以下のときは、やや早めの補正かつ頻回の採血でモニタリングする


3%生食の作成方法

生食500mLから100mLを破棄し、10%食塩水120mLを足して3%生理食塩水を作成 50-100mL/時間で点滴し、2時間毎に血液検査を行う。

すぐに補正しないこと!
※低ナトリウム血症の補正するときは、輸液と尿とのバランスで考える。また、嘔吐・下痢などの場合はには、尿に加えて喪失される体液を考慮に入れなければならない!

例)体重50kg 血清ナトリウムは116mEq/L 尿中ナトリウム濃度は50mEq/Lで尿量は24時間で2Lの場合
①細胞外液の量を計算し、体内の総Na量を計算する
 50kg×0.2=10kg 10L×116mEq=1160mEq(体内にあるNa総量)
②喪失するNa量
 50mEq/L×2L=100mEq
③補正後の値を計算
 (1160mEq+投与する総Na量mEq-100mEq)÷10l=補正後のNamEq/l

例)尿検査から考える:簡易版(80~250mEq/day)
通常は心因性、ネフローゼ、心不全、肝硬変といった病歴がなければ、
ナトリウム減少型がほとんどである。
血中Na:123mEq/L
随時尿中ナトリウム:50mEq/L、随時尿カリウム:45mEq/L
そして、尿中ナトリウムが少なければ、ナトリウム摂取が不足していることが多い。私が担当している患者さんは抗がん剤投与中の患者さんが多く、殆どは食事摂取不良によるナトリウム減少が大半だ。
→細胞外液の輸液に塩化ナトリウムを加えて、それを輸液として投与する。そして、採血検査で経過みていく。連日の採血検査でナトリウム濃度の変化を測定し、適宜調整していく。急ぎすぎず、ゆっくりでいい。

注釈)
わかりやすく学べる書籍を紹介するが、電解質異常は深く学習すればするほど難解に考えてしまう傾向となる。
基本的にはベースとなる疾患(消化器内科なら肝硬変、末期癌、下痢)などから推測は可能となる。最近は免疫チェックポイント阻害薬による電解質異常(甲状腺炎や劇症型糖尿病など)もあるが、まずはその事実を把握することが重要。
大切なことは、”ホメオスタシスの破綻に急いだ補正はダメ!”

水中毒による低ナトリウム血症もあり、youtubeでわかりやすい動画があるので、
それも挙げておく。


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