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【魔法使いの夜】久遠寺有珠について

久遠寺有珠はかわいい。
異論は認めない。

久遠寺有珠は一見恐ろしい冷血人間に思えるかもしれない。
実際作中では非異常存在としての草十郎、中間にいる青子、そして異常存在である魔術師の規範的な存在が久遠寺有珠であるからして、冷血というのは間違いではない。

けれど久遠寺有珠はおっそろしい可愛さを内包しているのだ。


久遠寺有珠の可愛さを語るには「魔法使いの夜」の全クリアが前提となる。
ぜひまだ達成していないならプレイしてきて欲しい。
少々時間はかかるが有益な時間が得られることを保証する。


ここから以下にはネタバレが含まれる。
警告はしたからめちゃくちゃ語る。

久遠寺有珠の可愛さが爆発するのが「番外編:誰も寝たりしてはいいけど笑ってはならぬ」である。

この作品をプレイした諸兄は思うだろう。
「ははーん、可愛いって草十郎にお願いするシーンとペンギン有珠だな?」

確かにそこも可愛い。
本編では見られなかった有珠がそこに有ってぜひとも間の話が気になるところではあるが、そこじゃないんだ。

久遠寺有珠の可愛いポイントというのはこの話の間、主に事件発生からその後の行動すべてから見いだせるのである。

ここで簡単に久遠寺有珠の行動を文字に起こそう。


久遠寺邸でパーティーが開催される。
有珠は来客たちと雑談などをしている。

第一の殺人発生:トッキー死亡
プロイによるものと判明

プロイの動作確認のためリデル殺害
プロイの解説が入る

生き返ったリデルを再び殺害

以降周りにあわせ行動

最終版、おそらく就寝中に死亡しているとみられる


と、こんなものである。
プロイの解説、リデルの殺害以外目立った動きはしていない。
本編の有珠とは思えないほどパッとしない。

しかもプレイした人の多く、おそらく全員が思ったであろうこと。
ある条件に付いて解説漏れが発生しているのである。
しかも少しだけミスった程度ではなくかなり致命的なミス。

シナリオをクリアした人の多くは久遠寺有珠について意識してないor致命的なミスした戦犯と考えていると思われる。

しかしここに久遠寺有珠の可愛さが詰まっているのだ。
ドジっ娘とかそういうのではなく。


プレイした人ならスイーツハーツの特性をすでに知っていると思われる。
それが「片思いを患ってる思春期の女子のみが対象」というものである。

番外編において有珠はこの条件の説明を大いに伝え忘れ、結果最後の推理に苦労した人は多かっただろう。
もしリビングでの説明でこれを伝えていてくれれば、
この時点で解決していたのである。

というもののこの条件の内「思春期の女子」に当てはまるものがあの時点で4人だけなのである。
青子、有珠、リデル、久万梨
この4人のみが対象なのである。

そしてここからさらに絞れる。

まず有珠、リデルは除外される。
この2人に関してはスイーツハーツがどんなものか知っていたので使うことなどしなかっただろう。
こんなめんどくさいものを使うとは思えない。

またリデルは番外編内にて
「最悪。あんなの使うヤツがいるなんて、どんだけ優柔不断なのよ日本人って。」
とスイーツハーツと判明した直後に発言している。

優柔不断について突っ込むだけでなく「最悪」と形容している当たりスイーツハーツについて知っている人物がよっぽど使用するとは思えないだろう。

次に残った知らない組の青子、久万梨だが、まず青子の方から。

青子はプロイというものが危険なものであるという事は重々理解しているはずである。
スイーツハーツの性質に拠るため断定はできないが、食べさせられそうになっても魔力などで判断できる可能性もある。

つまり青子が自らの意思で持ち出す、間違って食べるという事は限りなく起こりにくいと思われる。

もう一つの可能性として青子が性質を知ったうえで食べるという可能性。
つまり「青子に片思いの対象がいて、その相手に一歩踏み込めない青子はスイーツハーツを使う」という場合だが、この線は明らかにないだろう。

プレイした方ならわかるが「青子らしくない」すぎる。
魔法使いになることから逃げなかった青子が片思いから逃げるとは到底思えない。
この線もない。

となると青崎青子は白寄りのグレーと判断できるのである。

最後に残るは久万梨。
これに関しては何も言えない、完全なグレー。

しかしだいたい白が3/4を占めているうえでの1/4は明らかに黒だろう。

つまりスイーツハーツが使われたとわかった時点で久万梨が犯人だと推測できるのだ。
特性さえ明らかであれば。

「やっぱり有珠戦犯じゃん!!」と思った諸兄は反省していただきたい。
ここからが久遠寺有珠の本領発揮なのだから。


先の「スイーツハーツが使われたのなら犯人は久万梨」という結論に到達できるのはあの時点で2人(と1匹)なのである。

それが 有珠とリデル(とコマドリ) である。

ここまで来たら久遠寺有珠の可愛さに気づくか、もしくは疑問符が頭に浮かんでいるのではないだろうか。
「なんでその場でそれを言わなかったのか?」

これで諸兄も気づいたのではないだろうか。
何故言わなかったのか、もしくは、言えなかったのか。

リデル(とコマドリ)は有珠によって口を封じられていたからである。
ではなぜ有珠は口を封じ、自らも口を噤んだのか?

その答えは「久万梨のため」と予測される。

もしあの場で特殊条件である「片思いの思春期の女子が対象」を有珠が説明していたら。
おそらくほかの人物たちも「犯人は久万梨」と気づいただろう。
そしてスイーツハーツは解除される。

そしてそのあとに残るのは「恋心を自らの意思ではなしに明るみにされてしまった女の子」が残るのである。

言わないでいても。
あの時点で犯人がわかってしまっていた人物(と鳥)にはデリカシーというものが無い。
放っておいたら犯人を宣言されてしまう。

そのために殺し、そのために口を噤んだ。

久遠寺有珠はその場の解決より、周りの人達より、自らよりも
久万梨金鹿の恋心を守るために行動していたのである。


ここまで書いておいてなんだがこれらはすべてその場の判断材料から妄想したものに過ぎない。

本当に言い忘れていただけで、リデルを殺したのは趣味で、あの日たまたま調子が優れなかっただけかもしれない。



信じた事はひたすら胸に秘める浪漫主義。
特別なようでいて、そうでもない少女像。



実は作中一冷血な魔女は、特別な血筋の童話使いは
特別でも何でもない女の子だったのかもしれない。

そんな可能性もあると思うのです。

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