圧倒的"にわか"が徹底的に楽しむエンタメ

2023.3.4、その日私は久しぶりの日本武道館に居た。
『東京03 FROLIC A HORIC feat. Creepy Nuts in日本武道館 なんと括っていいか、まだ分からない』を見るために。
絶対になんかスゲェことが起こる、という確信だけを抱いて。

なんとパンチのあるタイトルだろう。
「なんと括っていいかまだ分からない」と言い切る強さ。
今思えば最初から括る気なんて、作り手の誰にもなかったのだ。

圧倒的"にわか"

私は今回の"作り手"に対して、圧倒的に"にわか"である。
東京03…WOWOWで放送される単独公演を見るか、テレビで見かけるだけ。面白いおじさんは好き。
Creepy Nuts…ヒット曲は聞いたことがある、WOWOWでライブの映像を見た。友人がファンなのでなんとなくの情報が入ってくる。
オークラ（構成作家）…東京03とかバナナマンとかの強力な裏方なのは知ってるけど、意識してネタを見てはいない。
ほらね、にわかで茶の間なのよ。

だけど、エンターテインメントに対する嗅覚だけは、絶対的に自信がある（※自分自身に対して。他の人は知らん。）

そんな私が、久しぶりに打ちのめされて徹底的に楽しんだ空間だった。
4日に現地で見られればいいよね、なんて甘かった。
問答無用で5日は配信でリアルタイムに追いかけた。

全てのジャンルを抱きしめて

実際にどういった内容だったかは、公式レポを読んでもらった方がいいだろう。
今だったらアーカイブが3月26日まで買えるので、いっそ見た方が早いかも知れん。

今現在の、というかここ7〜8年の私は主に”演劇”界隈に生息している。大小様々な劇場を渡り歩く。会話劇もシットコムもミュージカルも即興劇も古典もノンバーバルもイマーシブも見ている。
だから、演劇の文脈を含んだ「コント」と呼ばれる作品も好きだ。

一方で10年以上前の私の主戦場は"バンド"界隈だった。時代も相まってヴィジュアル系と括られるバンドを軸に音楽ライブを渡り歩いた。日本武道館に１年で4〜5回足を運んでた年もある。
バンドも弾き語りもストリートライブも、全部ライブだ。
ロックもパンクもJ-POPも、ムード歌謡も、オーケストラも、全部音楽だ。
だから、「Rap/Hip-Hop」にも触れてきた。
自分も僅かながら楽器を演奏していたから、Big Bandも好きだ。

いろいろなステージ（見せ物）の「演出」の仕方を見るのも、紐解くのも好きだ。
センターステージをどう使うのか、明かりは、SEは、VTRはどう使うのか。
どこに何が仕込んであるのか。
それを一つひとつ見ていくのが楽しい。

高校生の頃の夜更かしのお供が「ラジオ」になるのは、どの世代もある一定数の人間が通ってくる道なのだろうか。ご多分に漏れず、毎晩ラジアンリミテッドを聞いて育った。
今、ラジオを聞ける機器は持っていないが、ここ1年くらいradikoを介してラジオを聞くことも増えた。これは大いに友人達の影響だが。

そして、物語が好きだ。
小説や戯曲や脚本に限らず、「物語」性のあるものが好きだ。
特に点と点が繋がっていく過程が好きだ。

全部、私の好きな要素であり、あの時あの場所に集まっていたものだった。
あの空間を端から端まで抱きしめて味わった。
それに勝るエンターテインメントがあるだろうか。

通奏低音として鳴る「大人」

事前のインタビューで、東京03飯塚さんと脚本・演出のオークラさんが、
「武道館の規模でやるテーマじゃない。草月ホールくらいのキャパで気持ちいいテーマのはず」というような話をしていた。

それが「大人になること」だったように思うし、それを楽しんで欲しいとか、一緒に嘆こうとか、もう投げ出していいよとか、いろんな煽り方をしていた。

登場人物が、いろんなタイプの「大人」のスタイルを見せてくれて、足掻き方を見せてくれて、かっこ悪い人生を見せつけて、代弁してくれた。

その姿が、自分に刺さって。刺さって。
だってこの先ずっと「大人」だから。
物凄く努力したら芸能人や宇宙飛行士や総理大臣になれる可能性はゼロじゃない。
でも、どんなに逆立ちをしたって、子供にはなれない。

「大人」でいることを、受け止めて生きていくしかないじゃん！
という盛大な開き直りと、
開き直ったから少しは楽しめるという事実と、
「大人」だって夢見ていいじゃん！
が、あの空間にあった。

てんこ盛りのエンターテインメントをお腹いっぱいに平らげて、
圧倒的に"にわか"の私は、
徹底的に2日間、合計7時間の作品を楽しみ切った。

2023年のエンターテインメント

は、大変だなぁ！
3月頭にして、伝説的なモンスターコンテンツが実在したんだから。
しかも「なんと括っていいかまだ分からない」の文字通り、どのジャンルとも決めきれないから全てのジャンルで比較対象に挙げられちゃうんだもの。

私の中でも2023年No.1エンターテインメントの座は
『東京03 FROLIC A HORIC feat. Creepy Nuts in日本武道館 なんと括っていいか、まだ分からない』
が譲らない気がしている。
それぞれのジャンルのNo.1は出てくるけどね。