特定小型原付の保安基準からミラーが外れたことについて、立ち乗りタイプの電動キックボードユーザーが思うこと

特定小型原付クラスの保安基準の中でそれまで(原付クラス)では必要だったミラーが不要となりました。これに関して思うことや実際に立ち乗りタイプの電動キックボードに乗っててミラーに関しておもうことをまとめてみます。

先に結論から書いてしまえば、あったほうが便利なのは言うまでもないけれど、実際に走行中ミラーを使うケースはほとんどないし、特にシェアリングサービスを想定すればデメリットの方が多いんじゃないかな?とおもいます。
※特定小型原付はフル電動自転車などさまざまな車両タイプがありますが、あくまで立ち乗りタイプの電動キックボードに限った話として進めます。

そもそも走行中にミラーは見ない?

走行中の後方確認は基本、目視です。一瞬振り返って後方の状況を確認します。『ミラーがちゃんと使用できる』ような状況でも、進路変更等を開始するときは目視で確認します。①後方を振り返って確認するのはそれほど走行が不安定にならないですし、ミラーで後方を確認しようと下を向くほうが不安定になります。また②ミラーが小さく後方全てを一度に確認することは難しいですし、③ミラーが走行中にずれる問題が、それにあわせて体勢を調整するほうが不安定になります。じゃあしっかりと後方を確認できるミラーをつけないといけないんじゃないかと言う話になりそうですが、④ハンドルから長く飛び出た大きいミラーをつけるのは危ないとおもいます。また、⑤ミラーの為にハンドル位置を高くするのは本末転倒で、より前方に回転しながら転倒するリスクが増えてしまいます。

順番に少々突っ込んで書いていきます。

①後方確認時の安定性は悪くない、むしろミラー確認のほうが安定性に心配が

 小径タイヤのイメージから走行時の安定性が心配される立ち乗りタイプの電動キックボードですが、イメージ先行で色々言われるより安定性はあります。不安定さが問題になるのはタイヤが段差等に衝突して前方に回転しながら転倒する例にみられるように、主に「前後方向」への不安定さです。ブレーキだったり坂道で止まれない事故もあるようですが、基本的に「前後方向」の不安定性によるもので、横方向は、例えばいきなりぶつかられたらどうしようもないですが、基本的に他の乗り物と比較して不安定さは感じません。むしろ一本橋などバランスを取りながらゆっくりと走行する性能は自転車などと比較しても優秀ではないでしょうか。
 むしろミラーを確認する方が不安定さを感じるのです。立ち乗りタイプの電動キックボードではハンドル部分にミラーが取り付けてあるケースが多いですが、ミラーを確認するためには下を向かないといけません。何気ない顔を下に向けるという動作ですが、これが結構怖く、不安定さを感じます。成人男性の頭部は6キロ前後らしいです。けっこう重いですよね。これだけのものを下に向けるように動かすには首だけを動かすわけにはいかず、腰を引くなど姿勢も変えないといけないわけです。むしろ体勢を変化させないように首だけを動かそうとすると無理して変な力が電動キックボードにかかるので、余計に不安定になります。
さらに人間の視界は横方向に広く、180度くらいは見えると言われています。目が横に並んでついていますからね。ですが上下方向はそれほど広くありません。下を向いている間って前方の視界が完全にカットされてしまう怖さもあります。
 一方後方確認で首をひねって動かす分には、それほど体勢か崩れる事にはなりません。そもそも前後に足を開いて乗っているので腰なども連動させて回転させれば簡単に横を向くことができます。下を向くと前後方向のバランスが崩れやすいですが振り返る動作は身体をひねることで前後方向のバランスはそれほど崩れることはありません。
また横を向いたり後方確認しようとする間も、人間の視界は横に広いので前方の視界が完全に消える時間はそう長くありません。見てないけれど見えている状態ですね。この違いは大きく下を向いているときと比べて安心感が大きく違います。
ミラーを見ようとすることがそもそも怖いので直接目視することになります。

②ミラーが小さい

 電動キックボードのミラーは十分な大きさのものがついていない車種が販売されていたと問題になったこともありました。現在は多くの車種が原付の保安基準をクリアして販売されていますが、それでも直径10センチのミラーは小さく、先ほど説明した下を向く行為と合わせると十分に後方を確認できるとは言いにくいです。一方振り返って後方を確認することはそれほど不安定にならないですし、一度で状況全体を把握することができます。こうした理由でもわざわざミラーを見ようという判断にはなりません。さらに問題は続きます・・・

③ミラーがズレる問題

 実際に電動キックボードを所有して乗っている方に賛同いただけるのではないのかと思うのが、このミラーがズレる問題。小径タイヤからなのか、電動キックボードは振動が多く、特に買ったばかりだとネジ類も緩みやすいです。ミラーもこの問題があり、振動でだんだんとズレてしまいます。しっかりミラー固定すればいいだけかというと、そうでもないです。自転車やバイクはサドルがフレームに固定されて動かないですが、立ち乗りの電動キックボードは体重移動によって前後の安定性をとる乗り物です。同じ位置にミラーがあっても、アクセルのかけ具合、走行スピードによって体のポジションが微妙にちがっています。ミラーが同じところにあってもそれを見ようと体勢を動かさないといけないです。この辺は①でも説明した通り下を向くと不安定になるということですね。
 もう一つ、シェアリングサービスの車両の問題があります。シェアリングサービスの車両は不特定多数が利用するので、ユーザーの身長が大きく異なります。ミラーを完全に固定されると高身長の人と低身長の人では後方の見え方が違う問題もでてきますよね。調整できるようにしても、走行中にずれたり、メンテナンスが十分にされていないとユルユルになってもはやミラーが機能しなくなるということも容易に想像できます。

④ハンドルからミラーが飛び出すと危ない?

 電動キックボードのミラーも色々なカタチがあると思いますが、多く見られるのはハンドル部に直接ついているタイプと、ステム部分(ハンドル中央付近)から触覚のようにニョキっと生えているタイプ。
これまでに書いたようにハンドル部に付属するタイプのミラーは見にくいです。それならもっと見やすい位置にミラーを持ってくるようにと長い支柱をつかってミラーを生やすのはどうか。基本的に安全のためにミラーをつける方向で考えたいのですが、心配なのが転倒時のリスクです。
 特に電動キックボードが普及前なのと、やはり乗り方が難しい側面は免れきれない事実で、数が増えれば当然のように自損事故が増えます。そんな中で飛び出したミラーが割れたりして被害が拡大するようなケースが増えるのではないかという心配があります。
 また、シェアリングサービスの車両はガラスではない割れないような素材のミラーをつけているようですが、メンテナンス時ミラー関係の不具合はどれくらいあるのかも聞いてみたいものです。
(LUUPにも乗ったことありますがミラーは使った記憶があまりないです)

⑤ハンドル位置を高くすると前方回転転倒の危険性が

 最後は乗車姿勢とも関係がありますが、ミラーを見やすいようにハンドルの位置を高くするのは縦回転に転倒しやすくなって本末転倒になる問題があります。ハンドルの位置を高くするとそれだけブレーキ時に前方にかかる力が増える、テコの原理で縦回転するモーメントが増えることになるので、転倒リスクが高まります。なので基本的にハンドルは腰より少し高いくらいの位置にある方が良いと思いますが、これだとやはりミラーは見にくいですよね。

まとめと思うこと

色々思うことがあったのでかなり長くなりましたがミラーに関して書いてみました。
個人的なスタンスとしては、「あったほうがいいに決まってるけれど実際にミラーを見るほうが不安定だし目視の方が確実だよね」「ミラーが保安基準から外れたことに関して、まぁ要らなくていいよね。普通の自転車にもついてないし」くらいのスタンスです。ミラーが必要だと思う人を否定はしませんが、ミラーの義務化がなくなったことには、まぁ要らないよなぁとの感想です。

あくまで個人の感想ですが、実際にミラーを使うシーンは間違いなく停車中、信号待ちしてる時とかなので、無理に義務化するのも違うかなと。

ただしあくまで「立ち乗りのキックボード」タイプに限った話で、特定小型原付という枠組みの中でミラーがすっかり不要になることに関してはもう少し慎重になってもいいのかなとは思います。自転車型やサドル付き型などでミラーの義務化が必要なら立ち乗りタイプでもつけるべきとは思います。

走り書きになりましたがひとまずこの辺で。。。



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