東京
東京は冷たい街だとおもっていた。山口一郎が病んでたし
でも全然そんなことはなくって、東京は大変おもしろくて明るい街だった。東京で知り合った方々はみんなおもしろくてやさしかった
東京にはなんでもあった。ずっと指をくわえてスマートフォンの画面で見ていたひとたちはすぐそこにいるし、いつでも会えるようになった。SNSでバズってる店は電車に乗って10分で行けるようになった
神保町の駅のホームでサカナクションをきいて泣いてしまったのは、高校生だったわたしがあまりにも感傷的すぎたからだとおもう。東京は悪くない
てっきり東京に住むようになったら、毎晩19時に「東京は夜の7時」をきいて泣くんだとおもっていたけど、そんな暇はなかった。し、それよりもたのしいことがもっとたくさんあった
東京は牛乳が高い。野菜と肉の値段はそこまで変わらないらしい。結局スーパーによって値段は異なるから、東京は、とひとくくりにするべきではないのかもしれない。とりあえず、資力のない学生にとって西友は本当にありがたい
東京は星が見えない。でも、夜はずっと何かしらお店の明かりや車のテールランプが光っていて、キラキラしている。寒い日に目をうっすらと開けてみると、視界がぼやけて光がまるく何個も重なって見える。いろんな色と大きさがあっておもしろくてきれいだとおもう
東京で生活するひとたちはなぜか生き急いでいて大変そうだ、と勝手におもっていたけど、東京という場所がそうさせているのではないと東京で生活をして気づいた。生き急いでいるひとたちは生き急がなければならない理由があって、誰かに生き急がされているだけだった。わたしはなにも考えていないし、遅すぎると言われそうなくらいずっとのんびり歩いているし、特に心が窮屈に感じることはあんまりない。高校生のころの方が、毎日やらなければならないタスクが明確で、それをこなすことに夢中で必死で余裕がなかった。かくいう今タスクがない暇な人生なのかといわれればそんなことは決してなくって、やらなければいけないことなんて周りに溢れているけど、見て見ぬふりをして、ご飯を食べてのんきに昼寝をしている。周りにいろんなものがあるからこそ、見て見ぬふりができるんだともおもう
東京にさみしさやつめたさを求めようとするひとは、きっと故意にそうしているだけなんだろうと勝手に感じている。なにもない田舎の一本道を夜歩く方がよっぽどさみしいしつめたいとおもえてならないのはわたしがまだ何もしらないせいなのか?ごちゃごちゃしたゴミ袋みたいな空間が、おもしろいと感じるのが若さによる無知からなんだとしたら、若いままでいたい一生老いたくない。この空気に絶望するときと死ぬときは、多分いっしょなんだとおもう。
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