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変化し続ける組織と指標 ~「社会変化」と「組織理解度・事業成熟度」から院内指標を考える~

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 厚生労働省の調査によると、昨年4月から今年2月までの国民医療費は2019年度の同期間から約4%の減少となり、入院外診療に限ると5%近い落ち込み幅となっている。
 帝国データバンクが保有する企業データベースを基に全国のクリニックにおける経営状況を調査したところ、売上高が前年度からマイナスとなったクリニックは全体の8割超を占め、減収幅も平均で2割に上る。増収となったクリニックも1割を占めたものの、多くのクリニックで減収を余儀なくされた。各クリニックの診療科目別にみると、耳鼻咽喉科での減収割合が88%と最も高く、次いで小児科や整形外科、内科の順となった。(2021年月7月8日 産経新聞より)

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 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、診療報酬の変化、コロナ関連商材の購入、収入の増減や初診再診の患者比率など医療施設を取り巻く制度や環境は大きく変化した。
 これらの変化を受け、改めて院内の収支バランスを見直したご施設もあれば、オンライン診療や発熱外来、ワクチン接種に舵を切り、新たな収益軸を確立したご施設もある。多くのご施設で試行錯誤しながら、新型コロナウイルス感染拡大前とは異なる指標を設定し、取り組んでいる。

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 社会変化に合わせて指標を変化させるのは当然のことながら、忘れてはいけないのが、組織の理解度や成熟度に合わせた指標を設定するという視点である。 
 経営者のみならず、組織全体が自院の指標を理解し、それに向けて自分自身がどのような行動をするべきかを把握しているか否かは大きい。経営層と職員の指標にあえてギャップを作り、引き上げていくことも効果がある。
 弊社がコンサルティングを実施しているご施設では、職員全員との事前ヒアリングを通して、ご本人の納得感や理解度に応じた「手の届く少し難しい範囲」に指標を設定している。たとえ指標のレベル感が未熟なものであったとしても、それ自体はさほど問題ではなく、そのレベルが年々上がっていくということの方が重要だ。
 更に、新たに始める事業と10年目の事業では当然掲げる指標が変わるように、事業毎のレベルに合わせて変化をさせる必要がある。その時の組織の成熟度に合わせて随時指標を見直し、設定していくことも大切だ。

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 組織内で指標を設定する際、細分化した目標を基に職員に自分の行動指標を考えてもらうのも一つの方法である。職員自ら設定をすることにより、達成意欲が湧くと同時に、職員と経営者の部分最適・全体最適の視点を生かした指標を設定することにも繋がるだろう。
 新型コロナウイルスの感染拡大はもちろん、度重なる診療報酬改定や医療業界の変化を受け、医療経営を取り巻く環境は一段と厳しくなる。
 特に今回のような大きな社会変化があると、ついそこにばかり目が向いてしまうかもしれないが、社会変化と組織理解度・事業成熟度のバランスを今一度意識し、院内改善に向けた一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。

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