コミュニケーションで構築する医療機関の事業継続計画
去った8月、沖縄地方を暴風域に巻き込み甚大な被害をもたらした台風6号(カーヌン) 。影響の長期化で、県内の物流が停滞するなど経済活動に支障が生じた。8月2日の接近による停電で一部製造業の生産が止まるなど供給遅れも発生した。貨物輸送会社は7月30日から船舶の入港が停止し、東京や大阪・博多などを結ぶ12便がいずれも欠航。積み荷は食品類が主で、満載にした状況で県外の港で待機している状況が続いた。(8月4日琉球新報より)
こういった状況の中、医薬品や医療機器の物流も大きな打撃を受けた。沖縄県からも医療施設へ適切な医療材料確保のお願いや、医療機器販売業協会へ業者間の融通や柔軟な医薬品の供給のお願い、輸送団体へは医薬品、医療機器の優先的な輸送の協力願いなど関係各所へ要請が出された。
長引く停電により通常診療が行えない状況の中、医療施設でも施設内で水漏れが発生し、一部パソコンが使用不能になってしまった、といったご相談も多く寄せられた。今回の台風の様な非常時にシステム機器が停止した場合、どのような対応をすべきか、不安を抱く方も多い。
有事に備えてモノ・システムに対する対策への意識が高まる中、
今一度、組織内における意識統一の重要性について考えておきたい。
厚労省でも医療における事業継続計画(BCP)を推進している。事業継続計画とは、災害によって損なわれる病院機能を実行可能な事前準備と災害後のタイムラインに乗せた行動計画の遂行により維持・回復するとともに、災害によって生じた新たな医療ニーズに対応するための計画である。その要素として①方針を決める、②チェック項目を活用した計画を立てる、③計画が実行できるように教育・訓練を行う、④実災害へBCPの適応、⑤結果を検証・分析、⑥計画自体の改善としている。従来の災害マニュアルを検証・分析し、改善までを行う計画のマネージメントを含むものとして広くとらえる必要がある。
日々多忙を極めている業務の中で想定外の有事に対し、組織内の意識統一でいかに柔軟に対応できるかが重要となる。
想定通りに発生しないから災害となってしまうわけだが、それでも日頃から「想定・対策」のワークをしておく事が重要だ。災害時に何が起きて、何に困るのかを想像力を最大限に発揮しながら意見を出していく。そこで出た事項を「患者様に関すること」、「院内スタッフに関すること」等に分けて、優先順位をつけていく。この作業を通し、これまで個の頭の中だけでイメージしていたものが共有されていくのだ。繰り返すが、想定通りの災害は発生しない。ただ、想定外の有事でも、ワークを通して共有した行動を起こす上での価値観や優先順位、空気感までもが意識統一の骨組みとなる。これこそがスタッフの自信を持った行動と安心感にも繋がっていくのだ。
院内の患者様に対しどのように対応するのか。医療機器の安全確認はどこに連絡するのか。完全に予想し難い有事の際に、柔軟かつ機動的な行動をするための指標を作ることはもちろん、災害に関わらず、自分たちが働く現場をスタッフ皆で俯瞰できるいい機会にもなる。こうしたワークを定期的に行うことで、計画の検証・分析・改善に繋がり自然と事業継続の取り組みへと繋がっていく。ご興味がある方はぜひ弊社コンサルティング事業部までご連絡頂きたい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?