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令和6年度診療報酬・介護報酬同時改定② 押さえたい賃上げ改定と、賃上げ税制の活用

 先月号では脂質異常症、高血圧症、糖尿病管理に関する評価の見直し・生活習慣病管理料の概要について論じてきた。今回は、ベースアップ評価料について深堀し、労務や財務の観点から考える。

 今回大きな論点の一つになっている職員の賃上げについて、診療報酬本体の改定率はプラス0.88%で、その内看護職員、病院薬剤師その他医療関係職種の処遇改善に係る改定率は0.66%と大部分を占める。さらに賃上げに向けた評価「外来・在宅ベースアップ評価料」が新設された。
 「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」は全ての医療機関において一律に算定可能であり、初診時に6点、再診時に2点算定できる。40歳未満の医師を除く主として医療に従事する職員が対象となり、無床診療所で1.2%、病院や有床診療所で2.3%の賃金の改善を目指す。評価料(Ⅰ)では足りない場合に限り、無床診療所では外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)を、病院や有床診療所の場合は入院ベースアップ評価料を追加で算定可能となる。なお、役員報酬は含まないので注意が必要だ。これらの算定を受けるには、地方厚生局へ職員の賃金改善計画書や実績報告が必要となる。厚労省の評価料計算支援ツールにて簡単に賃上げ実施額が試算可能である。賃上げに関する施設基準となるので、経営側で実施する必要がある。

 2024年以降、賃上げの診療報酬項目は、賃上げ促進税制の対象となる給与支給額に含める事が可能だ。また令和6年4月1日より賃上げ促進税制が強化された。今回の改正において中小企業の全雇用者の給与等支給額が前年度比1.5%以上増加した場合の税額控除率は15%、同2.5%以上増加した場合には同30%となる。また今回の改正では「上乗せ要件」として、教育訓練費が一定割合以上増加した場合、又は「くるみん」や「えるぼし」といった子育てとの両立・女性活躍支援に向けた取り組みを行った場合にそれぞれ控除率が最大45%の税額控除の適用を受けることができる。

 教育訓練費とは、職務に必要な技術又は知識を習得・向上させるために支出する費用と位置付けられているが、①法人が教育訓練等を自ら行う場合②他の者に委託して教育訓練を行う場合③他の者が行う教育訓練等に参加させる場合も含まれる。その場合、実施時期及び実施期間、受講者や係った費用の明細書を作成し保存する必要がある。

 今回の診療報酬改定で初診料の引き上げやベースアップ評価料の新設など賃上げに関する大幅な変更があった。しかし日本の消費者物価指数は2.5であり診療報酬改定の増加分で賄えていないのが現状である。さらに医療DXや医師の働き方改革に伴うタスクシフト・シェア等様々な事が求められている。
 前述のとおり賃上げ促進税制等を活用しながら国の政策誘導を正しく理解し、うまく舵取りを行うことが重要である。厚労省のシミュレーションツール等を使い、賃上げ後の収支バランスを把握し、現状と比較することは、健全な施設経営を進める上で欠かせない。
 日々難易度が上がる採用環境、これらの制度改定、決して簡単な判断ではないが、ご施設の未来を描く上で重要な局面であると思われる。

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