医療現場におけるセクシャルハラスメント セクハラと組織的セクハラの分かれ道は?
皆様のご施設では、これまでにセクハラの通報があったことはあるだろうか?「不快かどうか」は個人の判断によることも多く、様々な人が集まる組織において、セクハラの通報を受けその都度対応を行うのは健全な運営ができているともいえる。逆にこれまでに一度も通報がないというのは、言いづらい雰囲気や隠ぺい等も考えられ、組織的ハラスメントに繋がっている恐れもある。今回は、医療現場におけるセクハラや、セクハラと組織的ハラスメントの分かれ道について考えてみたい。
職場におけるセクハラの定義は、「職場における性的な言動に対する他の労働者の対応等により、当該労働者の労働条件に関して不利益を与えること」である。不快かどうかの判断基準については、一般的には意に反する身体的接触によって強い精神的苦痛を被る場合や、本人が不快であると明確に意思表示を示しているにも関わらず、その性的言動が繰り返される場合等がセクハラの状況と判断できる。
医療現場においては、日常的に医療行為を行う中で、仕事中はどうしても性的な言動に鈍感になっている傾向がある。例えば、医療行為のためとはいえ、処置の際に衣服を脱ぐこともあるし、リハビリの手技等の指導の際には、実際に身体に触れて指導をすることもあると耳にする。そのため、仕事に関係のない部分での性的な言動についても、認識が甘くなっている可能性がある。
ご周知の通り、最近ではメディアでも組織的なハラスメントが取り上げられ、組織が存続できなくなる事態も起きている。
多くの人がハラスメントについては理解をしているはずだが、組織に常態的に存在している言動はどうしてもその形のままで残りやすい。それが日常のコミュニケーションであり、そのコミュニケーションを体現している人は以前から組織に在籍している職責上位や職歴の長い人だからである。
しかし放置してしまうと、働くスタッフの意欲低下や最悪の場合離職に繋がる可能性があるため、注意が必要だ。スタッフの定着率が悪くなると、採用にコストや時間を割く必要が出てくるだろうし、スタッフのモチベーション低下による患者満足度の低下にも繋がりかねない。
髪型や服装について言及する時等は、日頃のコミュニケーションや信頼関係によっては該当しない場合もあるセクハラ。良好な関係性を築けている場合は該当しなくても、嫌いな上司に言われた場合は「意に反した」と解釈され、セクハラと認識されるリスクもある。このセクハラグレーゾーンの対処法は、 ①それぞれの価値観の違いを認識すること、②指導や指示は、 「目的」を可能な限り伝えること、③職場内の共通認識や事例をもつことだ。例えば、以前本紙でも紹介したアンガーマネジメントの「べき」のワークを定期的に組織全体で行う事で、組織内でのすり合わせを行う事にも繋がるだろう。
初期の「ささいな」通報があった時に、どの様に動くかが組織の未来に繋がる重要なポイントである。見て見ぬふりは隠ぺいしたと捉えられ、組織的な問題に発展しかねない。
まずは相談にきた人が加害者にどうしてほしいのか、自分に何をしてほしいのか等の意向を確認することである。良かれと思って勝手に行動を起こすのではなく、相手の意思を最大限に尊重するということを忘れてはならない。要望があった場合はできるだけ「早く」協力をすること、相手が了承しない限り相談を受けた内容を口外しないこと、そして相談できる窓口を組織の中に設置しておくことも重要だ。弊社では、ハラスメントに関する院内セミナー等も開催している。お気軽にお問合せいただければ幸いだ。
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