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人見知りの恥ずかしがり屋が恋する話 #8



病院にて。





高本)ハア、ハア、ハア、ハア…
………めぇめ!!!

東村)あやぁ………





あの後、芽依と〇〇は同じ病院に、別々の救急車で運ばれた。

救急車の中であやに連絡したんやけど、仕事があるはずやのにあやは大急ぎで来てくれた。





東村)仕事は……?

高本)頭下げて抜けてきた!!
ってそんなことはどうでもいいよ!!!
〇〇は!!?
東村)それが……
うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

高本)めぇめ…





芽依はショックで泣いてしまって喋れへんくなったから、あやにはお医者さんが説明してくれた。













※高本彩花目線




めぇめは泣き崩れてそれどころじゃなかったから、私は警察の人と病院の先生から事故のことを聞いた。

居眠り運転のトラックが、アクセルを踏みながら交差点に進入。

トラックの挙動がおかしいことに気付いた〇〇は、めぇめを突き飛ばした。

それで道路を渡り切る形になっためぇめだけど、〇〇は道路にいたままトラックに衝突されて、その勢いでT字路の交差点の壁とトラックに挟まれる形で激突。

左腕と両足が完全に潰れていて、破裂はしてないけど内臓に大きなダメージが数か所。

全身の骨が折れていて、素人が見ても分かってしまうほど即死レベルの大怪我だったけど、辛うじて息があって、今は手術中………








※東村芽依目線






高本)そんな………

東村)あやぁ……

高本)大丈夫、〇〇なら、〇〇なら絶対に…





なんでこうなったんやろう。

就職して自分のことだけでも大変なはずやのに、家事とか色々してくれて、甘えん坊の芽依の相手もしてくれて、それでいて職場の人からも頼られたり…

こんなにも優しくて頼りになる人が、なんでこんなことにならなあかんの?

「〇〇が守ってくれるから」って言って周りを見ずにはしゃいで〜んかったら、事故には遭わへんかったんや。

事故は…………芽依のせいや。

芽依がしっかりしてへんかったから……





高本)そんなことないよ。

東村)え?

高本)〇〇はめぇめがはしゃいでたから事故に遭ったなんて、思ってない。
「芽依を守れたんならそれでいい」って思ってるはず。

東村)でも…

高本)めぇめが自分のせいにすることは、多分〇〇は許さないと思う。
だから、自分のせいにしちゃダメ。

東村)あや……





あやは芽依を抱きしめながら、こう言ってくれた。

たしかにその通りかもしれへん。

でも、それでも芽依は……





パッ
ウィーン
東村)あ…

高本)手術、終わったんだ……

東村)先生、〇〇は!!!?





芽依は先生が手術室から出てくるなり、掴みかかる勢いで先生へ問いかけた。





高本)めぇめ、ちょっと落ち着いて!!

東村)落ち着いてなんかいられへん!!

先生)……ご家族の方に連絡は取れますか?





〇〇と芽依が運ばれてきたのが昼過ぎやって、時計を見たらもう夜の9時を過ぎてた。

手術をしてくれた先生に、〇〇の家族を呼んでほしいって言われた。

気が動転してる芽依に変わって、あやが先生に説明してくれた。





高本)〇〇の家族は、既に全員亡くなっているんです…
なので、私とあの子が実質的な家族になります。

先生)………分かりました。
では、アナタたちお二人にご説明させていただきます。





あやはもうこの時点で、今の〇〇がどういう状況かなんとなく分かってたと思う。

けど、芽依は気が動転したままで話を聞ける状態やなかった。





高本)はい、でもこの子はとても話を聞ける状態じゃないので、別室で待機させたいんですけど……

先生)分かりました。
ちょうど下の階の会議室が使えるので、待機室としてもお使いください。

高本)ありがとうございます。
めぇめ、会議室行くよ。













※高本彩花目線




気が動転したままで話を聞ける状態じゃないめぇめを会議室に待たせて、私は1人別室に案内された。

ここも会議室で、家族や本人に手術の説明をする時に使われる部屋みたい。





高本)…先生、〇〇の状態は……

先生)難しい状態でしたが、手術そのものは成功しました。

高本)ありがとう、ございます。
よ、よかった…

先生)ただ………

高本)ただ?

先生)トラックと壁に挟まれて激突した際に完全に左腕と両足が潰されていて、手術前の段階で治療をしても再び歩くとことはできないと、医療関係者じゃない人が見ても分かるほどの状態でした。
また、いくつかの内臓に大きなダメージを受けていて、あくまで私個人の見解ですが、即死じゃなかったのが不思議なほどです。
手術を乗り越えてくれたのは、元々持っていた体力あってこそだと思います。
ただ、ハッキリ言って、意識が戻ったとしてもそう長くは…

高本)そんな………





先生が言ったことは、話を聞く前に分かってた。

家族を呼んでほしいと言われた時点で、もう〇〇は助からないって分かってた。

でも、先生の言うことは解らなかった。

誰に対しても同じように接して、誰からも愛されて頼られて、でも私とめぇめのことは特別だって言ってくれて……

仕事の愚痴を長電話で聞いてくれることもあったし、〇〇とめぇめが付き合い始めてからも2人で出掛けることもあったし、めぇめがそれを許してくれた。

恋愛感情は無いけど、私の心の拠り所だった。

だから、〇〇にこんなことが起こるなんて、信じられなかった。





先生)もしアナタが見るというのであれば、今の〇〇さんと面会することもできます。
ただ、手術後の処置を終えているとはいえ意識はなく、全身ボロボロの状態です。
それでも………面会されますか?





私は〇〇と会うことにした。

もしかしたら、もう〇〇と会うことはないかもしれないから………





高本)〇、〇………
〇〇、〇〇!!!





全身に包帯が巻かれていてその内側を見ることは出来ないけど、それでもどんな事故だったかが分かってしまう状態。

頭と右腕は辛うじて無事だったって聞いてるけど、心電図や呼吸器が取り付けられた〇〇の姿を見ると………





高本)〇〇………





私は膝から崩れ落ちた。











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