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人見知りの恥ずかしがり屋が恋する話 #9

※高本彩花目線。




1週間後。

〇〇は目を覚まさないまま。

あれからめぇめはショックで、必要最低限以外は本当に喋れなくなった。

めぇめは病室の隣にある会議室には来てるけど、〇〇に合わせる顔が無いって言って〇〇に会いに行こうとしないから、しばらくお休みをもらった私が〇〇のそばにいるようにした。

でも、奇跡が起こったとしても、もう〇〇は……





高本)なんで、こんな………

〇〇)……ゃ。

高本)え?

〇〇)…ぁゃ。

高本)〇〇!?





私がへたり込みながら名前を呼ぶと、たしかにハッキリと〇〇が私を呼んだ。

でもその声は弱々しくて…………





高本)〇〇………大丈夫?

〇〇)なんとか、ね……
今、事故からどれぐらい経った?

高本)1週間。

〇〇) 1週間…
俺はそんなに寝てたのか。

高本)と、とりあえず先生呼ぶね!?





私は〇〇が目を覚ましたことにビックリして、ナースコールを押し忘れてた。

ナースコールを押すと、先生や看護師さんが大慌てでやってきた。

先生が〇〇に話しかける。

〇〇はゆっくりと、ハッキリとした、でも弱々しい声で返事をする。





先生)自分のお名前は分かりますか?

〇〇)〇〇です。

先生)事故に遭ったことは覚えていますか?

〇〇)はい。

先生)うん、かなりゆっくりですが喋れてますし、意識障害は出てませんね。
でも、しばらくは入院してください。

〇〇)分かりました。
先生、手術ありがとうございます。





目を覚ました〇〇は、色々と検査をするためにどこかに連れて行かれた。

しばらくして戻ってきたけど、今度は私が先生に呼ばれた。





高本)先生、〇〇の容態は………

先生)即死レベルの大怪我から意識を戻すなんて、目を覚まされたのは奇跡です。
本当に稀なケース、まさに奇跡です。

高本)そんなになんですね。
でも……

先生)えぇ…

高本)分かってます。
それでも、もう1回〇〇と喋れるようにしていただいて、本当にありがとうございます。

先生)その後助からないと分かっているなら、せめてその人の大切な人と一緒に過ごせる時間を、少しでも作る。
我々にできるのはそれだけです。
それでは、〇〇さんの様子がおかしいと感じたらナースコールを押して下さい。

今後できるのは対症療法だけですが……

先生にお礼を伝えてから、私は〇〇がいる病室に戻った。

〇〇は私が戻って来るのを待ってたみたい。





〇〇)お、戻ってきた。

高本)あれ、起きてたんだ。

〇〇)意識不明の重体とはいえ、1週間も寝てたらすぐには寝れない笑

高本)そっか笑





〇〇が笑ってくれたことで、私も久々に笑うことができた。

好きだったものを食べても見ても聞いても笑えなかったから、嬉しかった。

そして自然と涙が溢れてきた。





高本)怪我、大丈夫?

〇〇)大丈夫に見えるか?これ笑
それよりも泣くなよ、明るさが一番の取り柄だって、自分で言ってたじゃん。

高本)うん……





〇〇は私にめぇめに対する優しさと同じ優しさで接してくれる。

ツッコミは私にしかしてこないけど。





〇〇)……あや、俺がもう長くないの、先生から聞いてるよな?
高本)それは………

〇〇)俺がショックを受けないようにしてるんでしょ?
自分の身体のことは自分が一番解ってる。

高本)〇〇……

〇〇)目が覚めて、下半身と左腕の感覚が消えてるって分かったとき、これはもう長くないなって感じたよ。
そもそも複数の内臓へのダメージが激しかったみたいだし。
こうして喋ってる間にも時間はどんどんなくなっていくし、なんならこの瞬間に終わるかもしれないぐらいだと。

高本)〇〇は怖くないの?
死んじゃうのが怖くないの?

〇〇)そりゃ怖いに決まってるじゃん。
まだまだやりたいこといっぱいあるもん。
でも、芽依ちゃん“たち”を守れたんならそれでいい。
あのとき俺が気付いてなかったら“全員”トラックにねられてただろうし、突き飛ばさなかったら芽依ちゃん“たち”が俺と同じ目に遭ってた。

高本)………………





〇〇は自分がもう長くないってこと、気付いてたんだ。
しかも、めぇめ“たち”を守れたんならそれでいいって…





高本)めぇめを守れたんならそれでいいって、たしかに〇〇はそうかもしれないけど…
〇〇はめぇめだけじゃなく私にとっても大切な人なんだよ?
そんな簡単に言わないでよ………

〇〇)これでも勇気出していってるよ。
何を言っても、やっぱり死ぬのは怖い。

高本)…………

〇〇)あや、最後にいくつかお願いを聞いてくれない?

高本)お願い?

〇〇)うん。
まず1つ目、今後俺の前で泣いたり悲しい顔するの禁止、笑顔でいること。
2つ目、唯一感覚が残ってる右手を握ってほしい。

高本)…分かった。





〇〇にお願いされた私は、唯一無事だった右手を握る。





〇〇)やっぱあやの手はいいな。
元気がもらえる。

高本)めぇめに言ったら怒られるよ笑

〇〇)かもな笑
でもやっと笑ってくれた。
やっぱりあやは笑ってる顔がよく似合う。

高本)あ……

〇〇)………3つ目、これはあやにしか頼めないお願いなんだけど。

高本)なに?





〇〇は私にしかできないお願いがあると言った。

一体何なんだろう?





〇〇)……………頼める?

高本)分かった。
〇〇の、最後のお願い、だから……

〇〇)だから泣くなって笑
それじゃ、頼んだよ。

高本)うん………











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