【長編小説】アイドル山田優斗の闘い|13)第12章 地方選最後の戦い

優斗の事務所の電話がなった。例によって党の幹事長神田本人からの電話だった。

 統一地方選の前半戦が終わったその後は党は彼に休みを与えてくれると彼は思っていたが現実はそうではなかった。

「山田先生、石川県での働きには、党を代表して感謝申し上げます。とにかく不敗神話は継続していますからな。大きくプラスに影響していますからな。前にも言ったと思いますが、選挙の応援本当に素晴らしい活躍をいただいて、世論調査の政党支持率にも、B内閣の支持率も大きく上昇しています。これもひとえに山田先生のおかげです。もともとの人気とこの実績で選挙への協力の要請は引きを切らない状態です。要請はすべて私のところに来るので、もう大変で、協力要請の交通整理に四苦八苦しています。。前回もご協力いただいてお疲れだとはわかっているのですが、その辺の状況をご理解いただけますか?今回の統一地方選の後半戦もぜひご協力いただきたいのです。」

言葉の上では依頼というかお願いの形をとっているが、実際は指令、命令であり、実質上優斗の気持ちは関係なかった。答えはYES以外ないからだった。今様に言えばパワハラ的発言である。優斗は答えた。

「はい、わかりました。今度はどちらですか?」

神田が答えていった。

「東京都議会の区議会選挙にご協力いただきたい。」

前回、都の議会与党に疑惑が多数発生し、都政改革を訴えて浸透を作ったL氏の新党の大旋風が起こり、与党国民共和党は第二党に落ち込んだ。党派性は薄いと言われる東京都の各区議会でもその波を大きく被ってしまい、与党国民共和党はその議席数を大幅に減らした。前回の選挙で老齢の議員の多くが引退、議員の新陳代謝が図られた選挙戦となった。その点を踏まえ神田幹事長は言った。

「兎に角前回の大敗を受けて多くの新人議員が立候補しています。その候補者の中からできるだけ多くの当選者を出したいと思っています。是非、山田先生のお力をお貸しいただいてそれを実現したいと思います。今回は新しく都幹事長になった柳葉幹事長からの直接のご指名なのです。」

 前回の都議会選で、選挙の責任者都議会の幹事長、都議会のドンといわれた男は、当然その責任を取って議員辞職をし、都議会を去った。現在の都の国民共和党幹事長は優斗も名前も聞いたこともないような男だった。神田はいった。

「国会議員の先生に区議会レベルの選挙にご協力いただくのは申し訳ないことと思ってはいるのですが、なにせ幹事長の柳葉という男の立っての希望なのです。彼のところに行って今後の活動を相談してもらえますか?よろしくお願いします。」

と言って電話は一方的に切られた。最初の時からするとその対応がだんだんぞんざいになっているのは、彼だけの感想ではないだろう。
  数時間後、秘書の白井は神田から紹介があった都幹事長の柳葉に電話していた。

「お世話になっております、衆議院議員山田優斗の秘書をしております。白井と申します。党本部の神田幹事長からご連絡いただきまして、柳葉さんのところにご連絡するように伺ったものですから。」

「ありがとうございます。この度はこちらの要望を快諾いただけまして誠にありがとうございます。申し遅れました、柳葉の秘書をしています長江です。神田幹事長からもご連絡いただいております。恐縮ではございますが、こちらの事務所にお越しいただいてもよろしいでしょうか?」

「わかりました、これから山田と伺わせていただきます。」

 約束の時間に合わせて優斗と白井は二人で事務所を出た。移動の途中、優斗が白井に質問した。

「柳葉さんという方はどういう方ですか?正直私は幹事長から名前を伺ってもどんな方か全くわからなかったです。」

「私も正直あまりどのような方か詳しくは存じ上げないですが、敢えて言えば、古参の方ですが、特定の派閥に属さない無派閥だと聞いています。前の都議会のドンと言われた方がいろいろな経緯があり、おやめになった後、各派が牽制し合い、その中で柳葉先生にまとまったと聞いていますが...」

「有体に言えば、印象が薄いというか、存在感が...、ということですか?」

「都庁職員から議員になった方だそうです。いわゆる党人タイプの方ではないようです。」

 10分後、優斗と白井は柳葉の事務所が入っているビルの前に立っていた。白井が言った。

「飯島さんから念押しされましたが、ここで決定するようなことは言わないでください。特に今回の相手の柳葉さんはどんな相手か全くわからないですから。」

「わかっています。白井さんも気になったことがあったら、私の言葉を遮っても忠告してください。」

「わかりました。」

柳葉の事務所を訪れると、秘書の長江が出迎えていた。柳葉は73分けにきれいに分けた髪型に金縁の眼鏡をかけた、地方自治体の役職者かベテラン学校教諭、校長や教頭を思わせるような風貌だった。

「お忙しいところありがとうございます。よくおいでいただきました。どうぞこちらへお入りください。」

2人はそう言って応接室のような部屋に通された。ほどなくして、長江を伴って柳葉が現れた。

「初めまして、山田先生。今回はご足労いただきまして申し訳ありませんでした。今回の地方選の前半戦では都議会の方は前々回並みには回復することができましたので、この勢いに乗って国会議員の先生の地元の実働部隊と言える区議会議員も同様、前回以上の結果を是非残したいと考えております。毎回同じですが我々国民共和党は絶対に勝たなければいけません。我々幹部でいろいろ話し合った結果、今飛ぶ鳥を落とす勢いの山田先生のお力をお借りすることが、勝利への近道だという結論になり、神田幹事長にも無理を言っても願いをいたしました。本当は都議選で力をお借りしたいと考えておりましたが、先約があったようでかないませんでした。そんな経緯もあったので今回山田先生がご快諾をいただけて、本当に我々は胸を撫でおろしております。本当にどれだけ感謝の言葉をお伝えしても足りないくらいです。」

「いいえ、柳葉さんそのようにおっっしゃっていただかなくても大丈夫です。私のような経験の浅いものは、自分のできることを協力させていただくのが当たり前ですから」

この外見と腰の低い物腰からすると本当に調整型のタイプなのかと優斗は思った。

「先生もお忙しいと思いますので、恐縮ですが早速本題に入らせていただきたいと思います。今回はなるべく多くの候補者に応援をいただければと考えておりまして、1名半日程度で4名の候補者の応援をお願いしたいと考えております。神田幹事長からご案内があった内容とは異なるかとは思いますが、この内容でお願いしたいと思います。」

「わかりました、その程度であれば問題ないです。具体的には候補者の方の街頭演説の前に応援演説を行えばいいのでしょうか?」

「はい、それで充分です。応援いただく演説は選挙戦の後半にお願いすることになるので来週の後半に3日応援いただくことになるかと思います。当然実績のない候補を応援いただくことになると思うので、新人の候補が多くなると思います。現時点でお願いしたい日程と候補は後程白井様にお送りいたします。内容を見ていただいて不都合なことがありましたらすぐにご連絡ください。」

詳細は後程ということになり会合はほどなく解散になった。
事務所に帰ったのち、白井宛に届いたスケジュールと候補者の名簿を見ながら飯島は言った。

「全く聞いたこともない人達しかいないね。私も念のため調べてみるが、白井にも確認させるので、わかったら資料を渡すので確認をしてほしい。それと、演説の原稿は元案は私が作るので、確認してもらって手を加えてほしい。それでいいかね?」

「はい、問題ないです。それよりも僕が気になっているのは、国会議員もこんなに地方選に応援するのは普通のことなんですか?」

飯島が答えた。

「いいや、きわめて珍しいと思うよ。とは言っても君の年齢で初当選で国会議員としてこれだけの一般の方の支持をもらっている議員が異例といえば異例なので従来の常識が通用するはわからないがね。とにかく今までにはないことだと思うよ。あったとしても、優斗君が次回の選挙で世話になる地元の候補は陰に日向にいろいろな形でみんな応援しているとは思うが、今回のように何の関わりもないところの選挙区を応援するというのは異例だと思う。」

「何か別の意図があるということですか?」

「君が飛び込んだ業界はそんなに純朴な人間は生きていけない世界だからね。多分何らかの裏の意図があって当然だろうね。」

「それはどんな意図ですか?」

「今の時点でそれはわからない。だが、なるべく早く突き止めるよ。どちらにしても優斗君にとってあまりいいものでなことは確かだと思うよ。」

優斗は答えて言った。

「まあそうでしょうね、わかりましたそのつもりでいます。」

 優斗がその依頼で応援演説を行ったのは、その翌週の水曜日だった。演説を行うJR中央線の駅周辺には、国会議員「山田優斗来る」という看板が取り付けられ、演説が行われる日付と時間が記載してあった。

 候補者の新井とは指定された時間の30分前に彼の事務所を訪れて雑談風に時間まで話した。新井は思ったより若く職業を当てろと言われたら議員とは誰も答えないような男だった。いわゆる若手ベンチャー経営者を絵にかいたような男だった。政治家になり日本を変えるのが夢だと言った。経営者としてはやり残したことはないのかと聞いた際は、もうビジネス界のことは十分わかったので、本来の希望である議員に転身すべく、都の区議会議員の公募に応募して立候補したとのことだった。優斗は彼と話していて、言葉が軽いなと第一に感じた。第一印象だけではあるが、有権者というのは時に残酷なほど第一印象で決めてしまうことがあることに優斗は危惧を覚えた。加えて彼の政策方針というか政見を聞くにしたがってその危惧がさらに強まった。新人議員が公約とするにはあまりに大きなテーマを短期間で達成すると言っていた。優斗は彼の言葉にダメ出しを行う立場ではないが、前途多難だなと頭を抱えてしまった。

 2人が駅の演説会場に移動したとき、駅はそれなりに多くの人が集まっていた。だが、大半は優斗目当てというのははた目にも分かった。

「国民共和党の山田優斗でございます。本日今回の区議会選挙に立候補された新井博文候補の応援演説で伺いました。新井博文候補は...」

優斗は飯島の原稿にほとんど手を加えずに演説を行った。
優斗が思った通り、本人の新井が演説が始めた時から周りの聴衆に熱気はどんどん低くなっていった。彼が演説を終わった際は、周りからまばらな拍手が起きた程度だった。

 演説が終了した後の移動中の車の中で優斗は候補者の新井と話した。基本、快活な男だったので会話自体は盛り上がった感じであったが、しかし話している中の優斗の印象は「この男はだめだな」というものだった。一応優斗と会話しているようには見えるが、本来的に優斗が何を考え、新井に何を言おうとしているかということにはまったく関心がなく、自分の言いたい内容を優斗に押し付けようとしているのが明確だった。どんなにいい考えを持っていてもそれを伝える技術はなければ政治家として大成するのはむつかしい、政治家ではなくブレーンの方が向いているのではないかと思った。でも敢えてそのことを彼には言わなかった。

「選挙戦ももう少しですから、最後の一頑張りで乗り切ってください。」

激励の言葉を送ったが正直、むつかしいのでないかと優斗は思った。

 その日の午後は、もう一人の候補五味川浩二の応援を行った。五味川は午前中の新井とは全く正反対の印象の男だった。初めて会った際の握手から彼の誠実さが伝わってきた。じっと優斗の目を見ながら、温かい手で優斗の手を包んできた。だが打ち合わせで彼と話してその印象が一変した。彼が議員になってやりたいことを聞いてもさっぱり彼の意図が分からなかった。いったい何を彼がしたいのか?多くの政治家は国、地方自治体の別はあれど多くは何らかの問題意識があって、それがしたいから政治家になったという人間がほとんどだろう。しかしこの五味川という人間からその意図が全く分からなかった。優斗は彼にそのようなものがないと言っているのではない。あるかもしれないのだが全く伝わってくることが無かった。思いがあってもそれを伝える能力がないというのは、別の意味でもっと深刻だと優斗は思った。例えて言うならプロ野球を目指している選手がキャッチボールが上手でない、というような状態に思えた。バッター専門、走者専門という選手も可能性は0%ではないが現実問題としてむつかしいという印象だった。2人への応援演説を終えて白井と一緒に事務所に戻る車の中で、優斗は深く嘆息した。新人だとしてももっと可能性のあるような候補者はたくさんいるだろうに、なんで自分はこのような候補者ばかりの応援をさせられるのか優斗は何か意図があるのではと考え込んでしまった。優斗は正直に白井に聞いてみた。

「白井さん、今日の2名はどう思われました。新人とはいえ私には有望な方とは思えなかったですが、どうですか?」

「私も先生と同じような印象です。正直むつかしいのではないかと思います。」

「こんな人ばかりの応援を頼まれるというのは、あの柳葉さんという人に何か意図があるのでしょうか?」

「正直私にも現在はわかりませんが、怪しい部分は多い気がします。だいたいあの柳葉という男私自身得体が知れない印象です。今回の応援候補のリストも最後の候補以外直前に差し替えがあり、正直どんな候補者なのかもほとんどわからない状態です。現在グレーな状態ですが、もっともよくても真っ白ということないと私は思います。」

「わかりました、私も注意しますが、彼の意図が何なのか白井さんも注意していただけるようお願いします。」

「わかりました、先生」

「よろしくお願いします。」

 三人目の候補者は、白川という小規模の店舗の経営者の男だった。前の2人からしたらやはり世間ずれした印象ではあったが、酒やけかゴルフやけかわからないが、不自然なほど顔が真っ黒な男だった。自分が地元の商店街の代表であり、その利益を代弁するという趣旨は簡単で明瞭だった。その意味で好感は持てたが、如何せん商店街のおやじ臭が強すぎて、議員というよりは商店街の人間という印象しか与えない男だった。

 そして、彼と話していくと商店街振興以外のことにはまったく興味がない、知識も関心がないのが明らかだった。彼の関心と異なる分野の話になると、彼は

「それは私の担当分野ではないので」

という言葉以外何も言わなかった。

実際に彼が議員になって、彼の関心のない分野の採決の投票を求められたら、彼はどうやって投票を決めるのだろうとすごく気になったが、優斗が彼に直接そのことを確認することはなかった。

 そして、第三日の午前に応援演説を行うのは、元東京都の某区役所の部長を経験して、退職し区議会議員に立候補した、山田三郎だった。これまでの3人に比べれば最も有力であり、当選が当然と考えられるような候補だった。山田三郎も経歴と風貌が全く異なる男だった。およそ役人らしからぬ風貌で超短髪というか、スポーツ刈りに近いような髪型を7:3に分けたような、70年代、80年代に一世を風靡したクールカットでアイビーファッションに身を包んでいた。

「山田先生、お忙しいところ応援ありがとうございます。」

山田三郎はこの後、自分の演説の要旨とポイントと彼が優斗に演説を希望するポイントを直接伝えてきた。候補者本人かスタッフかは別としてこの内容を伝えてきたのが彼が初めてだったというのがかえって新鮮だった。4人とも新人とはいえ、誰もそのくらいのことを行わないのが不思議だった。牧歌的というか何というか、当然ながら国会議員との様々な差を実感せざるを得なかった。

「わかりました」

優斗は答えた。候補者と参謀とどちらなのか見分けがつかないような、山田三郎の参謀が声をかけてきた。

「では、もうすぐ出発ですので、山田先生、ご準備よろしくお願いします。」

移動の車の中で山田三郎は国会と国会議員の生活をいろいろ聞いてきた。まだ地方議員にもなっていない男が国会のことをしきりに知りたがっていた。どうして新人とはいえ、現在の状況と自分が行うべきことのピントのずれた人ばかりなのか、優斗も疑問を超えてあきれてしまった。

演説会場で優斗は打ち合わせの通り、彼らの問題意識に合うような演説を行った。当然、盛り上げというか扇動というかそのようなテンションで演説を行った。最近はベテランの舞台芸人のように、どのポイントでどのようにテンションを上げれば盛り上げることができるか、聴衆の反応を見て若干テンションを変える術を体得していた。

  演説が終わり、候補者たちとは別れた。移動の車の中で窓から外を眺めてぼんやり考えていた。今回の応援演説を通じて優斗は感じた。応援という立場で演説台に立っていたせいもあったと思うが、演説はその回その回目の前にいる聴衆との真剣勝負と思うが、やはり、相対しているのがどのような人達かによって、話すテンションはもちろん、内容も当然話す相手に合わせて変えることが求められるのは当然なのだと。そのような環境で今回の応援演説の聴衆の印象を優斗なりに表現するなら、大ヒットしたアニメ映画の「千と千尋の神隠し」に登場する、「顔ナシ」の集団という印象である。若い人もいたり、老人がいたり、男性がいたり、女性がいたり、ざっくりとした印象でその集団をひとくくりにできない印象だった。

 顔のない大勢の人たち、その人たちに優斗は演説を行っていた。正直手応えよりも徒労感が大きかった。そこからはやはり、中央と地方選挙という差はあったが、その感覚からしても当選は難しいのではないかというのが正直な感想だった。そのことを白井に振ってみたが、「それは人により、ケースバイケースです」と何の役にも立たない返事を返してきた。

「白井さんそれでは不合格です。何も言っていないのと同じですよ。」優斗は返した。

「先生もだんだん辛らつになってきましたね。」

少しおいて白井は言った。

「当然だめだと思いますよ。それくらいの見る目はあると思いますよ。」

「多分そうでしょうね。」優斗も軽く返しただけだった。

 翌日は投票日だった。優斗は特別に予定は入っていなかったので、結果をチェックしようと考えていたが、飯島も白井も朝からあわただしく動き回っている様子で、優斗はずっと家にいたが、何度も白井から電話がかかってきた。

「先生、個別に情報を取っているのですが、やはり4人の中で一番可能性がある山田三郎の情報を優先にとっていますが、現在のところ五分五分の状況です。もし彼がダメであれば、間違いなく全滅だと思います。」

「わかりました。白井さん、多分このまま推移していきそうですね。」

 可能性があるなら現場でその場に居合わせようと優斗も考えていたが、家で出かける準備をしている間にまた白井から電話がかかってきた。

「先生、山田候補以下4名全て落選確定したそうです。開票後に都連の幹事長からも連絡が入ると思いますが、よろしくお願いします。」

「わかりました。私の力不足を詫びておきます。」

 優斗は、着替えをしていた手を止めて、椅子に座って、おいてあったペットボトルのお茶を飲んだ。優斗は改めていろいろなことを考えざるを得なかった。

「いったいこの一週間は何だったんだ」と。政治もいろいろなレベルがあり、当然国政と地方のレベルではいろいろな違いがあり、それぞれ役割分担は当然異なっていても、政治を生業とする同業者であるはずなのに、今回の候補四人に触れるにつれ、同じことを職業として、人の生活の向上を目指す目的の人たちなのか正直わからなくなってしまった。優斗は白井に電話した。

「白井さん、今回の結果の件はやはり間違いありませんか?」

「はい、間違いないです。」

「そうですか、今回の件は結果がうまく行かなかった。ということもありますが、自分自身いろいろ考えることがあって、少し飯島さんとお話したいなと思っているので、飯島さんに伝えていただけますか?」

 その後連絡して、飯島とは優斗の予定もあり、3日後に事務所で会うことになっていたが、投票日の翌日にとんでもないニュースが飛び込んできた。

「東京都の区議会選挙で国民共和党の候補5名が逮捕された。」というのである。加えて何とそのうちの4名が、全て優斗が応援演説を行った4名だというのである。

そんな情報をチェックしていたところ、白井から電話かかってきた。

「先生、もうお耳に入っていると思いますが、その件で事務所の方に来ていただけますか?」

「わかりました。すぐ向かいます。」

  ** D Side 5 ***************
巨体の男は、笑っていた。

「やっと、爆弾が破裂したことに敵も気づいてようだな。今回のことで最初に柳葉に連絡したとき、やつは断りやがった。噂の通りあいつは堅物だ。しかし、いろいろなところから圧をかけてやった結果、やっとあいつも自分の立場を理解したようだ。最低限の仕事はしてくれた。今回は火のないところの油ではないからな。警察も動くだろう。週刊誌もBの社長経由で話しがついているから、大きく取り上げるだろう。さあ、奴らがどれだけ慌てふためくかが楽しみだ。」

「わっはっは~~」

言葉を切った後、巨体の男がトンデモない音量で笑い声をあげた。
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