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米国技術移転機関の給与を調査・分析

はじめに

 今回は、2017 AUTM Salary Survey(Link : AUTM Salary Survey)を参照しつつ、技術移転担当者の給与について考えてみる。技術移転担当者には自身のキャリア形成のため、技術移転機関の経営者にとっては人事設計の参考になれば幸いである。


ダイレクタークラスと現場クラスの平均給与を見てみると…?

 まずはシンプルに、2017 AUTM Lisencing Surveyから技術移転機関のダイレクター(TTO Director)とライセンスアソシエイト(TTO Licensing Associate)の平均給与額と、それを日本円に換算した金額を見てみよう。
 残念ながら国内の技術移転機関については情報がないので感覚論ではあるが、この時点では国内の技術移転機関よりも遥かに高そうである。


ビッグマック指数で日本水準に標準化してみると…?

 とはいえ、米国基準の給与をそのまま単純に解釈する訳にはいかない。そこで、ビッグマック指数を用いて日本水準に標準化してみると、次のようになる。この金額であると、国内の技術移転機関の現状にぐっと近づいたように思われるが、それでもまだやはり差がありそうである(求人等で公開されている国内大学の産学連携担当者の給与基準は600~750万円程度と見かけることが多い(著者感覚))。


他の職種と比較してみると…?

 最後に、その他の職種との平均給与の比較を行ってみた。なお、引用したNational Occupational Employment and Wage Estimatesでは職種がかなり細分されているため、直観的にイメージしやすい職種のみ恣意的に抽出している。このため、下表は絶対的な順位把握には適さないことを注釈しておく。

 このようにして比較してみると、36. TTO Licensing Associateについては、おおよよ34. Engineer、38. Fashion Designerや41. Farmersといったあたりと同水準となっており、例えば7. Lawyer、13. Marketing Managerといった専門職には水をあけられている。ちなみに、Lessons from the 2022 AUTM Salary Survey, AUTM on the Air(https://youtu.be/NciHEtZUt3w?si=0xmdQyxC6hRrZtnh)でも、「給与を求めるならこの業界ではない」との話が合った。向こうでもそういう認識なのだろうか?
 片や、11. TTO Directorを見てみると、他業界でいうDirectorであろう24. Top Executivesの平均よりも2割ほど高水準になっている。
 つまり、技術移転機関の給与水準は、現場レベルは他業種と比して一般的な水準にとどまり、Directorになると他業種よりも高くなるということか。


所感

 今回はここまで雑感を述べずにデータを示すシンプルな記事にしてみた。
 最後に少しだけ所感を述べさせて頂くと、一つ目に、国内でもこうした給与情報をしっかりと集めて情報開示が行われるとよいなと思う。小さな業界であるため、業界自ら能動的に開示に動かない限りは厳しいだろう。一方で、生の声であるOpen Works等の口コミサイトに情報が出回ってくると、外部からの人材獲得にもプラスになるかもしれない(マイナスにもなるかな?)
 二つ目に、やはり私自身は(贔屓目だけども)、最先端の技術を武器にビジネスを作り出していくというこの職種は、他の専門職に負けず劣らす高給な仕事であってしかるべきと思っている。こうすれば、そういった外部のハイキャリ業界からの人材流入も増え、さらに業界として活性化すると思われる。もちろん、これは鶏卵的な問題でもあり、それだけ高給人材を雇用出来るくらいに技術移転機関、担当者(=私)自身がもっと利益を出さないといけないなと思い知るところだし、業界全体としてもっとハードワーキングな空気感を醸成する必要があると思っている。

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