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【第6回 聞いとKEY! / 渡邉健太編】藍っていいよねー

徳島の本音を伝えるプロジェクト、Radio Journey Tokushima 『聞いとKEY!』第6回目のゲストは「Watanabe's」の藍師・染師の渡邉健太さん。上板町に工房を構え、畑で藍の栽培から染めまで一貫して行っている。

藍染は、まず「藍師さん」が染料で使う「蒅(すくも)」を作り、「染師さん」が、藍師さんから染料を買って染色する分業制が一般的だ。

しかし、「Watanabe's」では、農家として藍の栽培から、収穫・乾燥・発酵から染色液づくり、染色、そして製品化や販売まで全て自分たちで行っている。原料から自分たちで作り、すべての工程を把握し、最後まで届ける姿勢は、「責任のあるものづくりを」という渡邊さんの言葉に説得力を持たせている。

日本の伝統技法である ’’天然灰汁発酵建て’’を守りながら、藍を「暮らしに寄り添う色」と捉え、生活に馴染んでいくものづくりに取り組む「Watanabe's」。彼らの生み出すプロダクトや、発信する言葉からは、藍染をグッと身近に感じることができる。

そんな「Watanabe's」の代表を務める渡邉さんは、山形で生まれ育ち、大学卒業後は東京で物流商社の会社員として働いていた。会社員時代にたまたま訪れた藍染体験で衝撃を受け、「自分は藍染のために生まれてきたのかもしれない」と思うほどの運命的な出会いを果たす。

その後は藍の魅力に魅了され、3日後には会社に辞表を提出。藍に従事するためにはどうしたらいいのか調べる中で、上板町の地域おこし協力隊を見つけ、迷うことなく応募。2012年に1期目の協力隊として徳島を訪れた。

渡邊さんが徳島に拠点を移し10年が経つ。10年間藍染に従事する中で自分を支える根底的な価値観や、長く続けることで見えてきた景色について伺った。また、二児の父でもある渡邊さんに、仕事と家庭との両立なども聞いてみた。

ラジオはこちら↓
【第6回 聞いとKEY! / 渡邉健太編】
藍っていいよねー

〜ハイライト〜

1.「染めた時にね、ハッ!これをするために今世生まれてきたってマジで思ったんですよ。」(0:03:35~)
2.「思ったんですよ、こりゃなくなると。大変すぎて。価格も見合わないし。」(0:09:23)
3.「(藍染は)昔ながらのみたいなイメージはありますけど、やってる僕当人としては結構最先端だなと。」(0:19:16)
4.「そもそもやってる本人なんで、伝統だなんてやってないわけですよ今やってるから。産業としてやってるから。」(00:22:18~)
5.「選択肢は2つ。面白いか、面白くないか。以上、ぐらいですね。」(00:35:50~)
6.「選んだ以上はね、何か面白いことあるはずだと思ってやるから、耐え忍んでる感はないですね、その時は。なんでかな?みたいなだけでやってる。」(00:36:10~)
7. 「自分でぶれないように、口にするようにしてるんです。」(00:37:32~)
8.「技術がちょっとそこで欠けたとしても、イズムがつながればそれを起こす人間が出てくるので。」(00:40:05~)
9. 「結局ね家庭が円満だと仕事はうまく行くんですよ。」(00:47:30~)
10. 「これから面白そうじゃんみたいな、10年、15年と。」(00:53:12~)

今回の旅の記録

10:00 上板にあるWatanabe'sの工房に到着。
藍の独特の香りが漂う工房では、職人さんが朝から染めを行っていた。
工房の外にはヤギの姿が。畑の雑草を食べてくれるんだとか。
工房を出てまず向かったのはビニールハウス。
まだ植えたばかりの藍に水をやる渡邊さん。
この状態から育って、最後の最後に「今年の色」がわかる。
10:30 すぐ近くの藍を育てている畑を見学。
藍の収穫後は、別の農家さんが人参を育てて畑を使っている。
この日は、人参の収穫後。残った葉っぱは肥料にするんだとか。
藍を選別している作業場へ。
収穫した藍は裁断機にかけられ、この天井に打ち付けて落ちた藍に
風を送ることで重さの違いを利用して葉っぱと茎を選別している。
11:15 工房に戻り、藍についてレクチャー。毎日染めて、染色液の状態を把握している。
12:00 その後はみんなで藍染体験!
各自染めたいシャツなどを持参し、渡邉さんの指導のもと染めていった。
襟元を絞ったシャツを染色液につけて、液の中で伸ばして、液を絞る。
その流れを何度か繰り返す。
12:15 体験後は手が真っ青に!
手は1週間ほど、爪は3週間ほど青く、見るたびにこの日を思い出した。
渡邉さんの明るい語り口から、Watanabe'sの現場の風通しの良さが伝わってくる。
ラジオが終わった後は、自分たちが染めたシャツを受け取る。
綺麗な濃い藍色に染まって、一同大満足!
シャツが着られる暖かい季節になれば、大活躍の予感。
取材終了後は、みんなでおやつを食べながら打ち合わせ。

収録を終えて / 渡邉健太さんより

藍っていいよねー

藍に出逢って、多くのことを経験させてもらいました。
また、人との出逢いもたくさんもらっています。

今回も藍のおかげでこのような機会をいただけて感謝です!
皆さんとたくさんお話しして、次に繋がる熱い活力いただけました。

素敵なラジオ!
これからの徳島が楽しみです!


収録を終えて / 参加メンバーより

高橋利明

どうもみなさんこんにちは! いや、こんばんはかもしれない、、、。 そんなことはどっちでもよくて、ご無沙汰しております!! 少し休息をいただいておりました。 復帰後初の収録は、当店「うだつ上がる」でもお世話になっている なべちゃんこと渡邉くんのところへ。 このラジオのいいところは様々な体験ができること、体験後に 本人の口から生の声を頂戴することなんですが、本質はその背景にあって、 肩書きを外したその人自身の足跡にあるのかなぁと思っています。 今回は、自分の手持ちの物を染めてみようということで僕はシャツを持参。 藍染が日常にガンガン使われてこそ良いのであって、アート(観賞するもの)でないと実感する。 汚れたら染めてを繰り返し暮らしの中で循環する。 それは藍染に限らず、手仕事による日用品は修繕を繰り返すことで使い続けられるからこそ、 世代を超えて暮らしに寄り添いながら存在するのだと思う。 なべちゃんと出会い、グッと藍染が身近になったことが僕の暮らしの幅を拡げてくれたことは 間違いない! きっと、多くの人が伝統産業を遠くの存在にしてしまっていると思うのだけど、 このラジオを聞いた誰かが手を藍に染める日が来ると嬉しいなぁ。

神先岳史

取材中、渡邊さんとは少し縁を感じてて、生まれが同い年の同じ月・山形がルーツ・徳島へ来た時期が2012年・奥さんの名前が同じ、とちょっと重なる部分が多く面白いなーと思いながら話を聞いていました。共通の知人も多く、いつか出会うだろうなーと思っていての当日で、そこには神山のミクちゃんもいて、工房ははじめての場所だったけど、スッと入っていけました。 藍染は神山の染昌さんとよくしてるけど、藍についての深い知見や実験的な試みをみせてもらい、そのこだわりの深さにとても刺激を受けました。また、同地域の年代の近い人たちと協力しながらモノづくりをしているもすごい。 共鳴してお互いを高めあう、そんな土壌から生まれる藍がどんな産業になっていくのか、すごくワクワクしました。

髙木晴香

小学生以来に藍染をして、なんだか懐かしい気持ちになった。地元の伝統産業、というなんだか遠い存在だった藍染。「もっと暮らしでガシガシ使ってOK!」な心強い存在だったのだなあ、と見方が変わった。汚れても染め直せばOKなら、なおさら普段使った方がいい。暮らしの知恵が詰まった、合理的な染色方法なんだなあと実感。伝統だから、という理由じゃなくて「可愛い!かっこいい!そして合理的!」という理由で藍染を使えるきっかけができて嬉しい。
また、伝統産業に関わっている本人でありながら、「藍染って面白い!」という純粋なエネルギーが本人を突き動かしている様を垣間見れたのがとても印象的だった。伝統を守るためにやっているというより、本人がただただ楽しんでいるからこそ続いている。そして、その中で生まれる本質的な思考(=思想)が受け継がれて、未来に藍染が繋がれていくのだろう。

岑田安沙美

藍染が徳島の伝統産業ということは知っていたけど、藍の栽培~すくも作り・染色、商品化までのことを初めてきちんと学ぶことができた。徳島の藍染め産業の実態を少し覗くことができたのはとても貴重な経験でした。今回の収録を経て、一番私の中で変化したのは「藍染めは嗜好品ではなく日常使いするもの」という認識。「汚れがついたり、色が落ちてきたらまた染め直して着ればいい」という発想が、ファストファッションを身に纏う私にとっては新しい発見だった。アラサーにもなったことやし、良いものを長く使うために素材や生産について知ろうとすることを始めてみようかなーと思う一日でした。

谷亜央唯

徳島で生まれ育ったのに、藍染を体験したのはこの日が初めて。1週間ほどの青い手(色が落ちてしまって少し寂しい。)に、「藍染したんやな~!」と知っている人からも、知らない人からも沢山声をかけられました。青い手を見て藍染だ!とすぐに結びつくくらい徳島に暮らす人には馴染みのあるものである一方で、日常とは離れていて。なぜか「高級品」や「お土産」というイメージを持ってしまって、勝手に遠ざけてしまっていて。もったいなかったと思いました。藍染は日常使いができるもの。藍染の見方がガラッと変わった一日でした。この日染めた手ぬぐいは本をカバンに入れて持ち運ぶ時に本が傷まないようにブックカバーとして使っています。

direction / 高橋利明

direction / 神先岳史

writing & editing / 髙木晴香

graphic / 岑田安沙美

photo / 谷亜央唯

齋藤 千夏

清水 杏咲





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