後悔

夕暮れ時のことです。一羽のメスのコマツグミが梢の上で涙を流し、悲嘆にくれておりました。

彼女は今日、大切に育てていたヒナ鳥を亡くしたばかりでした。

「あぁ、なんて私は不幸なんだろう。大事な子供たちを残らず失ってしまうなんて…」

恐ろしい猛禽類の鋭い爪が、くちばしが、無情にもヒナたちを根こそぎ奪い去っていく悪夢のような出来事を思い出し、彼女は恐ろしさと悲しみとに打ち震えました。

そして子供たちを守れなかった自分を責めながら、またこうも思うのでした。

「私はあの子たちを産むべきではなかった。この世に生まれたばかりに、あの子たちはあのような悲劇に見舞われたのだから。生まれさえしなければ…」

と、その時、どこからか優しげな声がやってきました。

「わが子よ、そんなに悲しむんじゃない。お前が嘆くのももっともだ。だがその悲嘆も後悔も、私のものに比べればものの数ではないぞ。」

コマツグミは頭をもたげ、声の主を探してあたりを見回しましたが誰一人そこにはいません。

ただ雲間から一筋の光がふりそそぎ、梢を照らしています。

「どなたです? あなたは今の私より不幸だとでもおっしゃるのですか?」 コマツグミは空に向かってそう問いかけました。

またどこからともなく声がやってきました。

「そうだ。私は日々をお前の数千倍、いや数万倍の悲しみと後悔の中で過ごしている。なにしろ残酷で悲しみに満ちたこの世界を創ったのは、他でもない私だからだ。」


誰かの深いため息のように、重く冷たい夜風が梢を揺らしました。

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