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モトヤフ篠崎泰弘さんインタビュー

モトヤフインタビューシリーズ第29回です。本日はYahoo!ゲームで「ドラゴンクエスト・モンスターパレード」(スクウェア・エニックス社)などのゲームの担当をされ、現在は株式会社インコネの代表取締役をされている篠崎さんにお話を伺います。
インタビュアーは中崎 隆(モトヤフ事務局、弁護士)が担当

※以下太字がインタビュアーとなります。

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-篠崎さん、Yahoo!ゲームでは、大変にお世話になりました。会社を経営していると伺って、モトヤフで応援したいなと思い、インタビューをさせていただければと思いました。

ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

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-篠崎さんは、大学を卒業して、新卒で、イントラネットシステムという会社に入られたということですが。

システムエンジニアとして入社しました。ただ、4か月だけです。3か月目の終わりに「会社つぶれそうなんで、とりあえず、自宅待機してください」と言われ、その次の連絡が「会社つぶれました。」と(苦笑)。

-え???

最後の月は給料もでませんでした。

-困りますよね?

「そろそろやばいな」という話は同期ともしていましたが、まさか、4か月でつぶれるとは。

-それで、どうなさったんですか?

会社の取引先が、「新卒はなるべき引き受けたい、希望者は面接する」といわれて、わらにもすがる想いで受けて。ありがたかったです。

-それで、どちらに転職されたんですか?

2社目は、「伊藤忠テクノサイエンス株式会社」[現伊藤忠テクノソリューションズ株式会社]という会社でした。そこで、法人営業をさせていただきました。

-具体的にどのような営業をされていたんですか?

-システム営業です。例えば、Sun Microsystems社のUnixサーバとか、Cisco社のネットワーク機器等をセットで提供したりしていました。

-どういう所が買うんですか?

新しいシステムを導入する企業ですね。例えば、オープン系の営業管理のシステム、コールセンターのシステム等を導入する企業などです。

-そこで学んだことはありますか?

お客様のヒアリングをして、ニーズや課題を聞いて、解決のための提案をする。そのヒアリング力であったり、提案力であったり。

-何年いらしたのでしょうか。

7年半ですね。

-その次に、サイバーステップ社に移られてのですね。どんな会社ですか?

ゲーム開発会社です。

-そこでの篠崎さんのお仕事は?

海外営業です。自社で作ったゲームを、海外(韓国・タイ・インドネシア・中国・台湾)の企業に、ライセンスしていたのですが、そのライセンス先を見つけたり、ライセンス先と調整したり。

-調整と申しますと?

ライセンス先からニーズや課題を聞いて、自社の開発チームにそれを伝えて、調整する。また、ライセンス先に、「ゲームをこうアップデートをしたから、御社側で、こういうようなイベントをやったらどうか」と提案したり。イベントを実施するか、しないかはライセンス先の自由。

-海外と日本で違う所は、どういう所なのでしょうか。どういった点に注意なさっていたのでしょうか。

韓国は、ガチャが駄目。基本、日本以外はガチャが駄目。特に韓国や中国はガチャが賭博の扱い。他の国もガチャが推奨されていません。日本は、普通のガチャは、色々なゲームでありますよね。

-確かに。

その国のカルチャライズがあり、ユーザーのニーズ、ユーザーが欲しいアイテムなどが違うので、そこのニーズにあわせて、ゲームを作って、イベントをやります。

-イベントというと、ゲーム内のイベントを想像しますが、リアルのイベントも?

当時、うちのGet Amped(ゲットアンプド)という対戦・格闘ゲームが、韓国で一番売れていたのですが、世界大会を韓国でやりました。色々な国の人が集まって、調整が大変でした。

-大変といいますと?

どういう試合の条件にするか、どのアイテムを使えるようにするのかとか。盛り上げることを考えつつ、どういう風に公平性を保つのかとか。あとは、対戦や日程調整にも気を使いました。政治的な事情にも配慮し、中国チームと台湾チームは、トーナメントの別の山に配置して、決勝まではあたらないように工夫したり。

-盛り上がったんですか?

6万人集まって。

-すごい。東京ドームの収容人数(5.5万人)をも越えていますね。

本当に嬉しかったです。

-ゲームの決済との関係で大変だったことはありますか?

韓国は、プリカ決済が多かったですね。クレカはあまりなく。

-匿名が好きなんですかね。チャージバックなどには特に注意が必要そうですね。

はい。

-その次は、どちらに移られたのでしょうか。

NHNに移り、ハンゲームのサービスに従事しました。パソコン向けのオンラインゲームのサイト。

-ハンゲームのゲームでは、私も、「ブラウザ三国志」にはまりました。最終日の終了時間30分前に、自分達が属していた同盟の盟主が攻め落とされ、属国になるという悲哀を味わって。次のクールは、何くそと。

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あれ、もともとは、ゲーム運営会社[AQインタラクティブ(現マーベラス社)]が、ハンゲームに、ブラウザ三国志を売り込みに来て。

-で、すぐに導入を決めたと?

いや、違うんです。当時、ハンゲームでは、月に2本くらいしか新作を入れられていなくて、ブラウザ三国志は、後回しになっていたんです。

-え?

それで、「何で入れてくれないんだ」と、先方の部長の石井武さんと椎葉 忠志さんがいらして。石井さんは、今は、オルトプラス社の社長、椎葉さんは、エイミング社の社長ですね。

-そこで、どうされたのですか。

まず、試しに自分でやったら、面白くてね。で、早速社内で通そうしたんだけど、苦労して。

-どういったところで苦労したのでしょうか。

グラフィックスが、当時は、しょぼかった。

-確かに。それに、遠くの相手を攻めようとすると、10時間とか平気でかかるし。

一回やったくらいでは良さがわからなくて、何週間もやらないとなかなか良さがわからないんですよね。

-そうですね。

ブラウザ三国志では、1クールが当時3か月で、3か月経つと、新たなゲームが始まって、そこで全員初期状態にリセットされるのがよかったのかな。このクールは負けたけれど、次のクールは頑張ろうみたいに気持ちをリフレッシュできる。

-それで社内を説得なさって。

4か月待ちのやつを翌月くらいにいれることに成功しました。

-入れてめちゃくちゃ売れたのではないですか?

めちゃくちゃ売れました(笑)。

-ハンゲームで売れたのは、一番先だったからなんですか?

いや、違います。Vectorさん、Mixiさんが確か先で、3番目だったと思います。

-では、「ブラウザ三国志」が、当時、ハンゲームで一番売れたのは理由があるんですか?

プラットフォームの人数でしょうね。

-ご自身の企画力のお陰とか言わなくていいんですか?(笑)

はい。

-謙虚ですね。

-その後、ヤフーに移られて。

最初は、Yahoo!ゲームのアライアンス担当でした。スクウェア・エニックス社、バンダイナムコ社、コナミ社、カプコン社、コーエーテクモゲームズ社などのゲーム開発会社に、Yahoo!ゲームにゲームを提供していただき、一般の方がYahoo!のサービス上でそれらのゲームをプレイできるようになっているのですが(https://games.yahoo.co.jp/)、ゲーム会社とのつなぎの役をやっていました。

-「ドラゴンクエスト・モンスター・パレード」(略称「モンパレ」)がYahoo!ゲームで提供されると篠崎さんから聞いた時は、びっくりしましたよ。さすが篠崎さんと。2013年ですか。

ドラゴンクエストのブラウザゲームは、ヤフーが初めてで。

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-篠崎さんの力でぐいっと引き寄せて。

いや、前任者もいて。みんなで協力して。

-またまた、謙虚でいらっしゃる。苦労なさったのは?

イベント面では、スクウェア・エニックス社の堀井雄二氏の監修を通すのが大変でした。

-ゲームを愛する者にとっては神的な存在の堀井雄二さん。こだわりもすごいんでしょうね。

そうなんですよ。

-モンパレでは、ガチャゲームにはしたくないというような所がありませんでした?

ええ。

-お金で「がちゃ」を回すというのがなくて、お金で買えるのは、ゲーム内アイテムの「にく」だけで。「にく」を使うと長くプレーできたり、スカウト率があがったりはありましたが、キャラや装備品が強くなるということはなくて。他のゲームとは少し違いましたよね。

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ですね。ガチャがないというのも、海外を意識していたんですかね。

-モンパレについてここはすごいなというのはありました?

プロデューサーの力なのか、イベントとかやると数字がはねあがったりしていましたね。

-企画面以外で、大変だった点は?

有名タイトルを取り扱うという部分では、期待も大きく大変でした。スクウェア・エニックス様としては、ヤフーの集客力に期待なさってヤフーを選んで下さっていましたので、Yahoo!の自社稿枠を確保したりして、露出をあげて集客するために、精一杯努力しました。

-かなり売上も伸びて。

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スクエニさんのゲーム開発力と、ヤフーの集客力がうまくかけあわさったと思います。

-他にも、色々とやられましたよね。自分は、「SDガンダムオペレーションズ」とか、契約を担当したゲームはかなりやりましたね。

「SDガンダムオペレーションズ」も売れて。

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-今もゲームが続いているようで、長く愛されていますね。今、調べたら、自分はレベル63ですね(笑)。

他にも「戦国IXA」とかもやりましたね。特に、スマホ版がヒットして。

-「戦国IXA」も、契約を担当しました。かなりやりこみました。いいゲームで。私は、「鬼武者」(PCブラウザ版)が、作りこまれていて、特に好きで。

鬼武者は、ゲームはよくできていたのに、思ったより売上が伸び悩んで。PCからスマホへのシフトがかなり進んで。PCでの集客力に限界を感じ始めた時期でした。

-そんな時にどんな感じであがくのでしょうか?

こちらとしては、集客面で、自社稿枠とかを頑張って取って、やることはやってという感じです。

-他にも色々なタイトルに関与なさっていましたよね。

「ネッチ」とか、「英雄伝説」とかもやらせていただきました。ゲーム提供会社の方々には大変お世話になりました。

-アライアンス担当の次は?

その後は、ヤフーで、オリジナルのゲームをやろうという話になって。

-ヤフーで、ゲームを作ろうという話は、どなたが中心だったんですか。須藤さん?立花さん?

須藤さんです。3本のゲームを作るという話があって、「編隊少女-フォーメーションガールズ-」というゲームは3年続いて、そこそこ売れて、「スケ雀刑事」という麻雀ゲームは、売れずにすぐにサービス終了となり、もう一本は発売に至らず、お蔵入りとなりました。

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-篠崎さんの役割は?

企画書を作ったり、プロモーションの計画を作って、実行したりしていました。

-やってみられて、どうでしたか?

オリジナルゲームで当てるのは結構きついなと。「編隊少女」の発売が2016年でしたが、ブラウザゲーム(PCゲーム)がスマホゲームにかなり押されるようになっていて。

-2012年の宮坂さんの社長就任から、会社としても、「スマホファースト」を掲げてPCからスマホに重点を移行していましたしね。

その後は、「Yahoo!ゲーム ゲームプラス」というプラットフォームの仕事をやって。

-私も、「Yahoo!ゲーム ゲームプラス」の規約を作りましたね。盛大な発表会もなさって。

2017年に恵比寿のガーデンプレイスで発表会をやって。でも、A社からストップがかかり。

-スマホアプリについて自社を通じた決済しか認めないやり方に対しては、海外でも訴訟が起きていますね。

ただ、グループとしての取引関係もあるので、こちら側としては従うしかなかった。プロモーションを何もできず、低空飛行の後に、2020年に終了となり。もちろん、タイトルが十分に揃っていたのかとか、そういう所もあるとは思いますが。

-それで、どうされたのですか?

ゲームサービスに戻って下さいと言われたのですが、閉塞感を感じていたので、ヤフーの外にでようかなと思いました。

-2020年に独立なさって。

現在株式会社インコネという会社の代表をやっており、ゲーム業界に関する、(i)コンサル、(ii)ビジネスマッチング、(iii)人材紹介等の事業を行っています。長年ゲームに携わってきましたので、ゲーム業界のためにお役に立てる部分があるかと思い。

-サイバーステップ、NHN、ヤフーとずっとゲーム関係の仕事をやっていらして、コンサル、ビジネスマッチングというのは、よくイメージできるのですが、人材紹介というのは?

ゲーム業界の人材紹介ですね。未経験でもゲーム業界に入ってもらうためのスクール運営などもやっています。

-人材紹介というと、リクルート社みたいに、きちんとシステムを作って、マッチングして、と、新規参入が大変そうなイメージがありますが、何が差別化要素なのでしょうか。

未経験の人を教育して、ゲーム業界に流すという所が、当社の差別化要素です。

-ゲーム会社側としては、業界経験者の方を好むということもあると思うのですが?

今は経験者が全然出てこなくて、色々なゲーム会社が常時募集をかけているような状況です。新たな人材をゲーム業界に入れていかないといけないという需要はあると思っています。

-ゲーム会社に採用されるためにどういう所が大事なのですか?

プログラマーは、自分でゲームを作ったことがあるか、何件携わったかが大事なように思います。プランナーは、企画力、色々なアイデアであるとか、自らのゲーム制作の経験であるとか、Unityもさわれますよとか、そういう所が大事なように思います。
デザイナーは、3Dのデザインをどれだけ作ったことがあって、どれくらいのクオリティを出せるかですとか。

-御社のコンサルやビジネスマッチングのサービスは、どのような報酬体系でやっていらっしゃるんですか?

コンサルは、ひとプロジェクトでいくらとか。ビジネスマッチングは、成約したら、成約の〇%とか。

-ゲーム愛いっぱいの篠崎さんですが、篠崎さんから見て、日本のゲーム業界の課題は?

人を十分に育てていないと思います。Directorや、Project Manager(プロジェクト・マネージャー)が足りていないという印象です。業務委託の形などで、外部から即戦力を調達して、内部で育てることができていない会社さんが少なくないように思っています。

-なるほど。

それから、外の世界の空気が入っていないように思います。業界が閉鎖的で、ゲーム経験者ばかりを採用していますが、ゲーム業界が嫌でやめていく方もいるのに他の業界から人材を取ってこないと、業界全体としては、縮小するだけなのではないかという印象も受けます。メタバースとか、そういうのもでて、エンジニアが足りておらず、いろいろな会社が、ずっと採用をしています。もう中途採用はあきらめて、新卒ばかり採用して育てるという方針の会社もあるようです。

-日本のゲームの開発力については、どのように見ていらっしゃいますでしょうか。

日本の会社のゲーム開発力は高いと思っていますが、全世界で売れるゲームを作れているかというと、そこができているゲームタイトルは多くありません。そのせいもあってか、ゲーム制作に従事する方々に対して十分な報酬を払えていないように思います。昔は、中国にゲーム開発を発注していましたが、今は、中国から日本に発注が来るような状況です。

-海外でも売れるゲームと、日本でしか売れないゲーム、何が違うのでしょうか。

絵柄、ストーリーなど色々ですね。日本のユーザーの好みと、各国のユーザーの好みは違います。例えば、海外では、対戦型のFPSもよく売れていますが(※)、日本では、あまり売れていません。

※ FPS(First-person shooter)とは、一般に、銃器を使ったシューティングゲームのうち、(引いた視点などではなく、)主人公の目の視点でプレイするものを指します。

-スプラトゥーンは、FPSに入るか微妙なんですかね?銃で殺しあうゲームより、自分は好きですが。ところで、海外も含めて、グローバルに売っていく際に注意すべき点は何だと思いますか?

海外をも意識したチーム作り・カルチャライズと、後は、プラットフォーマーの規約等に違反するとゲーム提供自体ができない場合がありますので、その辺りは、特に注意が必要ではないかと思います。そういう意味では、PCゲームは、自由度が比較的高いのかもしれません。

なるほど。PCゲーム再びですか。

Steamは、PC向けのプラットフォームですが、Steamに人が集まっているように感じており、インディー・ゲーム(※)とかそういうのが来るのではないかと思って期待しています。

※ インディペンデント・ゲーム(independent game, 独立系ゲーム)の略称で、少人数・低予算で開発されたゲームソフトを主に指します。

-Steamは、Steam Deckという家庭用の携帯型ゲーム機も出していますね。Steamが来つつあるんですか、ほう。

-ずっと取り組んでいて、これからも力を入れていきたいことはありますか?

ゲーム業界に多少なりとも貢献できたらいなと。

-現在は、沖縄県うるま市にお住まいで。

昨年の3月に沖縄本島にきて、1年半くらいですね。

-沖縄を選ばれたきっかけは?

「ノリ?」みたいな(笑)。コロナで仕事がリモートでできるようになり、東京都以外でも仕事ができるかもしれないという話をしたら、妻が、東京以外にいくのに「ノリノリ」になり、「暖かい所がいい」と言われ、沖縄に。

-尊敬する方は?

坂本龍馬さんです。日本が海外に開いていなかったときに、外の世界を知るために、外に出て。自分が信じる所に従って、とにかく行動し、まわりに流されない所は尊敬しています。

-ご自身に影響は?

自分もそうありたいなと思いながら、反省しかありません(苦笑)。

-読者の方にメッセージがあれば。

ゲーム関係で頑張っています。お気軽にお声かけいただければ、嬉しいです。

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-本日は、長い時間、インタビューにご協力いただき、ありがとうございました!

(インタビュアー:中崎 隆

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