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モトヤフ山名さんインタビュー

今回のモトヤフインタビュー第22回は、ヤフーでビジネスサービス本部長等を歴任後、GMOコマース(株)を立ち上げられ、現在も同社の代表取締役としてご活躍の山名正人さんにインタビューをさせていただきました。

-ご出身はどちらでしょうか。

和歌山県出身で、大学入学時に東京に出てきました。

-最初にキャリアをスタートされたのは?

新卒のときは、経済の中心は銀行だと考えて、1994年に住友銀行に入行しました。

-銀行ではどのようなことを?

最初の4年間は支店勤務で、法人融資等の営業を主にやりました。1998年に本店の法人EC業務部に異動となり、店頭対応が主流だった振込や決済のネット化を促進するような仕事に従事しました。

-当時はネットバンキングはほとんどなかったのでしょうか?

そうですね。たくさんの振込を行うお客様用には、専用の振込用紙があり、それを記入いただく感じで、本当に業務量が多い所だけ専用の端末があるというような形で、紙が中心という時代でした。決済のネット化のさきがけの時代でした。

-その後、ヤフーに移られた。

ヤフーに入社したのは2000年です。漠然とですが、ネットの広がりは銀行に限らず社会を変えるかもと思い、まだ長いビジネスマン人生において、伸び行く業界で自分の力を試してみたくなり、業界トップだったヤフーの面接を受けました。入社の最終面接時、井上さんが「ヤフーも大きな会社から転職希望者が来るようになったかぁ、ちょっとは立派になったなー」と、話されてたことを覚えています。

-2000年というと、ヤフーとしても創成期でしょうか?

社員番号は221番でした。辞めた方もいらしたので、全社で200人位の規模でした。当時は表参道にオフィスがあり、採用が毎月数十人規模で、1年たったら従業員が倍というようなスピードで会社が伸びていた時期です。

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(ヤフー時代のゴルフコンペ集合写真)


-ヤフーではどのようなお仕事を?

入社当時は、広告営業でした。 当時は直販チームと代理店営業チームが、しのぎを削っている時期で、私は直販チームの配属でした。

-当時、広告売上の営業成績が1位であったと伺いましたが。

入社して数か月経過後から1年以上ずっと1位でした。当時営業は総勢50~60名はいたと思うのですが。

-銀行という異分野にいらしたのに、1位を取れた秘訣は?

打率よりも安打数だと考え、1社でも多く提案することにこだわりました。
また、人と違う営業先を探したということと、社内営業も積極的にしたことだと思います。当時のヤフーの営業部門は広告代理店出身の方が多かったです。私は、銀行出身であったこともあり、ネット金融を回ったりしました。また、ネット広告を出さざるを得ない会社があるのではないかと考えて、そういった先を回ったりしました。

-「ネット広告を出さざるを得ない会社」とは?

ネット専業の会社やECビジネスを立ち上げたばかりの会社など。当時のヤフーの媒体力は強力でしたから、そういう会社はヤフーに広告を出さざるをえないというような状況でした。その情報を誰よりもいち早く入手して、そこを回ったりしました。

-1位を取れた秘訣の「社内営業」とは?

宮坂さんを始めとした、Yahoo!ニュースとか、Yahoo!天気とか、各サービスの責任者の所には、コンテンツ提供元等から広告等の相談が入ることがよくあり、そういう社内の話が何かないかということで、聞いて回っていました。毎日1時間くらいは、社内で何か話がないか聞いていたと思います。

-とても充実していらした?

とにかく楽しかったです。

-素敵です!

ヤフーもネット業界もどんどん大きくなっていく中、沢山の新しい人と出会い、こんなに楽しくてお給料がもらえるなんてあるんだなぁ、と思うぐらい刺激的で中味の濃い時期でした。ほぼ毎日終電帰宅で週末も出社という状態でしたが、社会人経験の中で最高に充実した時間だったと思います。

-その次は?

その後は、広告だけに頼らない収益も作っていこうとなり、社長室に「ビジネス開発チーム」というチームができ、そのチームリーダーとなりました。

-どのようなことを?

ネット金融がいっぱい出てきたタイミングでしたので、ヤフーを使って何かをしたいという先と提携したり、その他にも色々な所と組んだり。10人くらいのチームで、色々な提携話をやらせていただきました。

-何か心に残っている当時のエピソードはありますか?

ヤフオクの課金開始時にネット銀行と組んでキャンペーンを行ったことです。当時、なりすまし等の犯罪が増えてきたので、対策として顧客の本人確認をすることとなり、サービスを有料化することになったのですが、有料化発表時は、顧客からあまり評判がよくありませんでした。

そこで、ネット銀行と提携し、ネット銀行に新規に口座を開設し、本人確認口座に指定した方については、ヤフオクに本人確認費用を払わなくてよいというキャンペーンを私自身が考え、ネット銀行等と自ら交渉もし、これを実現しました。

-うまくいったのでしょうか?

キャンペーン開始時に、ジャパンネット銀行(現在のPayPay銀行)の方と口座開設の進捗をリアルタイムで見ていたのですが、1時間ごとに何千もの口座申し込みが入り、とても興奮しました。ジャパンネット銀行やイーバンク銀行(現在の楽天銀行)の口座が数万だったものが、このタイミングで数十万レベルの口座が出来る結果につながりました。

-素晴らしいですね。

既にネット銀行は複数行スタートしていたものの、ユーザーの具体的な利用シーンが少なく、広がりが限定的でしたが、そこにヤフオクを絡めたことで、ネット銀行の口座数が一気に増えただけでなく、その後のユーザー同士での送金のやり取りにも使われたので、ある意味で日本にネットバンキングを根付かせたのはヤフオクではないかと思っています。

ユーザー、銀行、ヤフー、全てが嚙み合った中で、全ての当事者にとって良い結果をもたらせたという意味で、私自身の社会人生活の中でもとても大きな成功体験でした。

-他にもエピソードがありますか?

井上さんは、ヤフーの広告は固定料金でしか提供しないということに拘られていたのですが、私自身は成果が見えるということがネット広告の強みであり、使い方次第では有意義で、ビジネスとしても伸びしろがあると考えていたので、あの手この手で説得を続け、結果としてモビット(現在のSMBCモビット)と年間で数億円の成果型広告を実施しました。ヤフー最初のアフィリエイト的な広告だったと思います。

また、当時はヤフーの情報提供先だったネットラストと一緒に、ヤフオク内での個人間売買に初めてカード決済を導入しました。スキームとしては決済する個人の間にヤフーが入り立替をしているのですが、ユーザーから見ると、個人間の支払いにカードが使えるという便利なものでした。オークションは現金支払いが主流だったので、カード払いしたいユーザーのニーズを取込み、決済利用料のみでなくヤフオクの流通額増大にも寄与したと思います。

-逆に、反省点などはありましたか?

大手とのアライアンスなどで成果は出せましたが、振り返ってみれば、新しいものを理解する力が自分には不足しており、当時米国で流行り始めたサービスが議論に上がると「日本人は日記を人に見せないだろう」とか「個人が上げたビデオは誰も見ない」とか「ソーシャルサービスはネットオタクが小さなコミュニティでやるもの」とか、センスのない意見を繰り返してしまった記憶もあります。今から思うと、反省点も多々あります。

-私もおしとやかなはずの日本人がここまでfacebookでプライベートをさらけ出すとは当時、思っていませんでした(笑)。
その次は何を?

その後、ショッピングとオークションのストア営業の部長を経て、ビジネスサービス本部長になりました。法人からの広告以外の分野のビジネス全般を見る役割でした。

ヤフー時代の後半は、一貫してビジネスサービスやSMBの営業全体をみさせていただきました。会社として地方拠点を増やそうということになり、エリア統括本部長も兼任し、大阪と名古屋の強化と札幌と高崎と福岡に支社を新たに出すことも行いました。

-2012年にヤフーを辞められて。

井上さん体制から宮坂さん体制に代わる際に、ビジネスサービス営業の責任者を外れることになり、社長付きで次の辞令を待つ状況になったのですが、その間に何となく"ヤフーでの仕事は自分なりにやり切った"と感じ始めて転職を決意しました。その際、何がやりたかいかを自身に問いただしたときに「会社経営をしてみたい」と考えました。

しかし、作ってみたいサービスがあったわけでも、元来サービス作りのセンスを持ち合わせていた訳でもなかったので、既存の会社での社長職を探し、上場企業を含めていくつかお話をいただきました。

そんな時、GMOインターネットの熊谷代表や西山副社長に「うちのグループに来て会社をイチから作れば」とおっしゃっていただく機会があり、「現存する会社でなくイチから始める方がより面白いかも」と考え、GMOインターネットグループに入らせていただくことを決意しました。

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(ヤフー退職時の送別会記念写真)

-現在のお仕事は具体的にどんな内容でしょうか?

GMOコマースの社長になって10年目に入っています。

主に実店舗向けにデジタルマーケティングを行う会社で、今は約2万店舗以上のお客様を有し、社員数も約200人となっています。特にLINE公式アカウントは日本で一番の顧客保有で、先日もLINEアワードで表彰いただきました。ヤフーともいろいろな部署でお付き合いがあり、今も大変お世話になっています。

とはいえ、社長と言いつつも営業責任者的な感覚は抜けきらず、毎日数字をどう伸ばすかを考えて、現場にも細かな部分まで入り込んでいて、面倒な上司をしています(笑)。

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-GMOコマースでのビジネス立上げに際してどのようなことを考えていらっしゃったのでしょうか。例えば、多店舗管理ツールのリリース時など。

ユーザー(お客様)の目線に立って、「何で困っているのか」と考え、課題解決に一番いいと思うサービスをいくつか探してきて、複数社のサービスを組み合わせたりして、その一番いい利用の仕方を見つけて、それをお客様に提案していくという所は意識していました。

ヤフーなどのような良いサービスを作る会社が色々とあって、そういうサービスを提供する側がどういう所で困るのかという勘所を抑えられていたというのも大きかったと思います。

色々なサービスを集めてきて、クロスでかけあわせたり、一元管理を可能にしたりして、素晴らしいサービスを提供する会社と、お客様の間をつながせていただく。また、どのお客様も、ブルーカラー的な面倒な仕事についてのニーズがある所、そういう面倒な仕事を嫌がらずに積極的に引き受けるということを心掛けました。業務負担が重いと敬遠する会社もあるかもしれませんが、逆張りの精神です。

-なるほど。

お客様と、優良なサービス提供者との間をつなぐデジタル・プラットフォーマーのような役割を通じて、世の中の役に立とうという発想で、ヤフーでの経験があったからこそ出て来た考え方なのかもしれません。

自分で「こういうサービスを作りたい」という所から考えるのではなく、何と何をくっつけたらお客様が喜ぶのか、というような所から考えている分、会社運営としてうまくいっている部分があるのかもしれません。一番良いサービスへのゲートウェイでよいと思っています。

-現在の仕事の面白いところや素晴らしいところを教えて下さい。

最終判断が自分で行えるというのは、責任も感じますが、やり甲斐ではあります。

前職以前は、普通に利益を出すならさほど難しくないと思っていたのですが、いざ自分で経営をやってみるとそんなに甘いものではなく、三井住友銀行やヤフーの会社やサービスの強さを改めて痛感しています。

会社運営自体も、社員の満足度を上げることは簡単に出来ると思っていたのですが、収益を出しつつ、将来の投資も行い、1人1人モチベーションの違うパートナー(※)などの満足をしっかり上げつつ、成長していくということの難しさを日々感じています。難しいから楽しいんだと言い聞かせ、日々手作りで会社運営を頑張っています。

※ (事務局注) GMOインターネットグループでは、同僚のこともパートナーと呼んでいるそうです。

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(GMOコマースの自席の様子)

-パートナーなどの関係者の満足をあげるということですが、代表者と、社員の想いを一つにするのも、難しい面が色々とあるように思いますが、いかがでしょうか。

私は、「〇〇のサービスをやりたい」などという、そういうこだわりはあまりなくて、お客様・取引先・社員パートナーなど、みんなが幸せになるために何ができるかと考えて行動しています。誰かに迷惑をかけると会社として大きくならないと考えており、こだわりがない分、色々と冷静に判断できている部分があるのではないかと思っています。

-ご家族以外で尊敬している方がおられたら教えて下さい。

社会人経験を通じて出会った人では2人います。

1人目は井上さんです。 理解が早いこと、決断が速いこと、指示がシンプルでわかりやすいこと、とにかく本当の意味での頭がいいというのはこういうことを指すのだと痛感しました。ユーザーの満足なくして成功しないという事や、ビジネスは感覚でなく数字でとらえることが重要という事も学びました。今も私の仕事に生かされているものが多いです。

2人目は、今のGMOインターネットグループの熊谷代表です。 組織を動かすリーダーとしての力は圧倒的で、組織運営としての軸やルールは作りながら、個人個人でも活躍できる、唯一無二の組織の仕組みを確立されています。決めたことを実行する迫力、一方で周囲へのきめ細かな気配りも超人的で、人として全てがカッコよく、直接お会いした人は全員魅力に翻弄されると思います。

お二人はタイプは違いますが、日本のネットビジネスを作った稀代の経営者で、私自身ネット業界に入り23年になりますが、前半は井上さんと後半は熊谷代表と毎週直接お会いし仕事ができているというのは、どんなスクールで学ぶより価値が高い日々を過ごせていると言えますし、自分の尊敬できる人がトップにいる企業でずっと働けているのはとても幸せです。

-ヤフーで学んだことはどんなことでしたか?

ビジネスにおいて継続的に成功していくには、利用者・広告主・コンテンツパートナー・セールスパートナー・社内の各部署など、関わるすべての方にバランスよくメリットがあることが重要だと学びました。そうしないと、長続きはしないし、大きくはならないと理解しました。

 また、成長し続ける大きなフィールドで仕事をさせてもらったので、森と枝葉の両方をしっかり見る、常に逆算思考で考える、ということも身に付いたと思います。 管理職としては、井上さんや喜多埜さんや宮坂さんとご一緒させてもらい、わかりやすく話す、即断即決する、失敗は素直に反省する、などが大切な要素だということを学びました。

-辞めたから分かるヤフーの良さというものはありますか?

良いサービスを作るという軸がしっかりあり、それによってみんなの方向性がまとまっていることです。軸にブレがないので、物事をシンプルに考えたり、意見が言いやすかったり、議論がしやすかったりする、とても良い社風です。 また、日本のネット業界において黎明期から現在もずっと中心的な存在として大きな影響を与え続けているので、そういう恵まれた環境で働けているということが言えると思います。

-ご趣味は何ですか?

ぼーっとすることです(笑)。
昨年50歳を超え、さすがにそれでは寂しいので、最近は「趣味 大人 男性」などと検索し、候補をいろいろ書き出してはみるのですが、今のところ具体的に何も残っていません。 ゴルフは時々やっているのですが、あまりにも上手にならずに逆にストレスなところあり、趣味と言うには違和感がありますので、もうちょっと頑張ります。

しいて言うなら「買物」かもしれません。悩みがあるときは、ネットショッピングなどで買物をして、ストレスを発散させています。

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(GMOコマースの社内BBQの様子)

-コロナで変わったことはありますか?

仕事とプライベート共に、本当に必要なものとそうでないものが整理できたように思います。

仕事では、実店舗のお客様が多数なので、コロナ禍で具体的にお役に立ちきれていないものは解約となりましたし、商品設計が緩いものは売れなくなりました。ですからサービスを見直す機会になりました。

プライベートにおいては、惰性で行っていたことを取捨選択する良い機会になった気がします。

-これからチャレンジしたいことは何ですか?

あまりないんです。
チャレンジではないですが、今までは「早期リタイヤしたいな」と思っていたのですが、最近は逆に「長く働ければいいな」と考えるようになりました。

リタイヤすると接する人が限られ、より寂しい毎日になりそうな気がするので、今はプレッシャー低めの中で長く仕事をしていたいと思っています。健康や会社運営や家庭環境など全てが良い方向につながっていないと簡単ではないかと思うので、今はそれを目指しています。

-イマヤフに伝えたいメッセージをお願いします。

ヤフーは多様性を認めてくれる素晴らしい会社だと思います。今もこれからもネットサービスの中心を担われているので、やり甲斐を持って益々業界を牽引してください。私の会社でも、今もよくお仕事をご一緒させていただいているので、何か相談したときはモトヤフということで、優しく接していただけると有難いです。

-モトヤフに伝えたいメッセージをお願いします。

このインタビューが、ビジネスとビジネス外の、何かに繋がるきっかけになると嬉しいです。 実店舗向けにデジタルマーケティングを支援する会社をやっていますので、何かあればご連絡ください。会社概要については、こちらのページをご覧ください。
また、中途採用も強化中なので、お知り合いでも結構なので、どなたかいらっしゃれば気軽にご質問ください。採用ページはこちらです。
それと私のFacebookは、こちらです。

-最後に、読者に伝えたいメッセージをお願いします。

ビジネス連携や転職の検討など、何かあればお気軽にご連絡ください。 宜しくお願い致します!

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(社内のフットサルクラブ活動風景)

-本日は、貴重な話を伺わせていただき、ありがとうございました。

インタビュアー:川村英樹、中崎 隆、齋藤 直

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