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モトヤフ有馬さんインタビュー 後編

前編はこちらです。

事務局:その後、ご自分で起業されることになりますが、そのきっかけはどのようなものでしたか?

有馬さん:父親が事業をしていたこともあり、もともと、「いつかは起業、独立したい」という気持ちを持っていました。ヤフー退社後、様々なご縁もあり、インターネット業界の成長と人材不足のギャップを埋めるために人材系ビジネスの会社を起業しました。
社名の「アイ・アム」は、まさに「自分自身が主体」というメッセージを込めたネーミングでした。実際の名刺では「アイ・アム」のあとにブランクがあります。自分の意思を尊重する仕事選び。リクルートの文化でもある「お前はどうしたいんだ」という意味も込めています。私は誰なんだということを改めて問うネーミングです。

事務局:こうして起業され経営者となられた有馬さんがグーグルに入社され、お仕事をされることになったきっかけを教えて下さい。

有馬さん:先方から誘いがあったことが直接のきっかけですが、とはいえ、自分の会社を経営していたし、インターネット業界のビジネスそのものから少し離れていたこともあり躊躇していたのも事実です。しかし熱心に説得される中で、もともと自身のキャリアの中で、ずっと興味を持ち続けていたIT企業の最先端企業であるグーグルへの興味が高まりました。世の中もグーグルは次に何をやってくれるんだろう、と想像できない未来にワクワクしました。

尊敬しかつお世話になっていた中山隼雄さんが、起業したアイ・アムの経営を引き継いでくださるなど後押ししていただいたこともあり、グーグルへの入社を決めました。グーグルに在籍していたのは2010年から2014年です。ニケッシュ・アローラが当時の上司でとても忙しい時期でした。

グーグルにとって、日本が初めての海外拠点でしたし、日本オフィスは独立性が強かったのですが、ニケッシュの頃からワールドワイドのグーグルの中での日本という位置付けが鮮明になり、また特に営業強化がメインになった時期でもありました。自分も日本のステータスを上げるために3年間で売り上げ倍増の目標を立てて実現しました。

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(出典:MarkeZine、撮影:慎 芝賢)

そうした日本法人がよりまとまりができたきっかけは3.11東日本大震災でした。日本オフィスのグーグル社員は一丸となって、自分たちができることを模索して自律的に動いたのです。こうした貢献も評価されてFounders awardで表彰されたこともありました。

グーグルの新しい行動規範が2015年に「Do the Right Thing」として公開されましたが、儲けるためにはエグい手段を使わず、正しいことをやり続けようというのが企業文化であり、日本法人はある意味で3.11を契機としてその精神を貫いたともいえます。(書籍「Googleの72時間 東日本大震災と情報、インターネット」 林信行・山路達也著:角川書店刊)
そしてリクルートの「お前は何をやりたいの」とグーグルの「我々に今できることは何か」というメッセージが、共通するメッセージであることもそのとき痛感しました。

事務局:現在のお仕事について教えてください。

有馬さん:楽天グループ株式会社の副社長執行役員、CRO (Chief Revenue Officer)、アド&マーケティングカンパニー・プレジデントとして、また、楽天と電通のジョイントベンチャーである「楽天データマーケティング株式会社」の代表取締役を兼務し、楽天の広告事業の拡大に責任を持っています。

楽天の三木谷氏とは、彼が楽天を立ち上げた時から長く親交が続いていて、同時に自分も楽天の持つ膨大なデータに可能性を感じていたところ、三木谷氏から声がかかったのがきっかけでした。

ヤフー時代、グーグル時代はともに、楽天が最大級の広告クライアントでした。ECサイトも広告で収益を上げられる時代が到来し、楽天も広告事業を強化するということで声がかかり、2017年、楽天の副社長、そして電通とのジョイントベンチャーの楽天データマーケティング株式会社 代表取締役を務めることになりました。電通とはヤフー時代もグーグル時代も長い付き合いがあり、愛着もあったので奇遇だとも思います。

これまでネット広告に関わっている中で、課題と思っていた広告のビジネス(売上)への貢献の可視化、そしてネット広告の持つ様々な問題への対応もふくめ、新しいネット広告のビジネスモデルが創れるのではと考えチャレンジすることにしました。そういう意味では、ずっとネット広告の発展に興味があるということですね。

楽天では、膨大でクオリティの高い多様なデータとAI技術を駆使しながら、ポストCookie時代の新しい広告のビジネスモデルへの挑戦を続けている、といったところでしょうか。
言い換えると「楽天の持つ一億人の会員組織、インベントリー、そして膨大なデータを活用して楽天の広告を大きく成長させる。同時に日本のデジタル広告業界の発展に貢献する」ということでしょうか。

事務局:楽天でのネクストキャリアを選んだ決め手は何ですか。

有馬さん:三木谷氏との親交、楽天の持てる膨大なデータとインベントリー、そこに、自分が埋めることが出来る「ギャップ」が存在し、新しいチャレンジが出来ること。その挑戦が自分にとって 価値があり、面白いと思えたからですね。

新しい広告のビジネスモデルへのチャレンジ。それを仲間と一緒に創り上げていく、そしてそれが、お客様にも広告の未来にも意味あるものになっていく。「未来を創る」ということかと思います。ヤフーではバナー広告を極め、グーグルでは検索と連動した広告展開、そして楽天では楽天市場を活用した購買直結の広告さらには電通と共にメーカーとタッグを組んだ新しい広告展開という3つの広告展開を経験してきたと考えています。

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(出典:MarkeZine、撮影:慎 芝賢)

事務局:今、特に力を入れていることは何ですか?

有馬さん:人材育成ですね。会社内だけに留まらず、次の時代を担う方々へのサポートは意識しています。そして楽天は楽天市場・球団・証券・銀行・カードといった楽天エコシステムを実現しており、事業の発展を通じて世の中を変えようとする三木谷氏を支えていこうと思っています。自分は仕事としては広告で専門性を活かせていると思いますが、彼がイノベートしようとしている部分に貢献できているとすると、そのことがとても嬉しいと感じています。

事務局:尊敬している方を教えて下さい。

有馬さん:中山隼雄さん、江副さん、孫さん、Eric Schmidt(元Google CEO)、そして三木谷さんです。その中でも三木谷さんをみていると、世の中を変えるのはこういう人なんだろうな、と。リスクをとる。既存権益との摩擦は恐れない。そういう人じゃないと日本は変わらないんだろうなと思います。

事務局:ライフワークは何でしょうか?

有馬さん:広告はもとより自分のライフワークでやりがいのある分野です。「IT革命」「DX」の推進に貢献し、特にデジタル広告の進化には力を尽くしたいと思っています。また同時に、グーグルで大いに刺激を受けたD&I(Diversity, Equity and Inclusion)活動に力を注ぎたいと思います。

事務局:これからチャレンジしたいことは何でしょうか?

有馬さん:日本を変える意思と情熱のある楽天の事業の成功に貢献したい。D&I(Diversity & Inclusion)の領域ではMushing Upの活動に参画していますが、ここから企業経営者に理解を広げていきたいと考えています。

事務局:イマヤフ・モトヤフ・読者のみなさまに伝えたいメッセージをお願いします。

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有馬さん:

イマヤフ(現ヤフー社員)の皆様へ

ヤフー・グーグル・楽天は、ある意味競合関係とも言えますが、同時に今や日本のニュー・エスタブリッシュメントになりつつあるIT企業の筆頭でもあるわけで、日本を変えられるDXの主役企業として、「イノベーティブ」だけど「安心、安全」なサービスを提供し、人々がよりハッピーになれるデジタル化社会の実現を目指して、ともに貢献しましょう!

モトヤフ(ヤフー卒業生)の皆様へ

Yahoo!はともかく日本の世の中にデジタル化の便利さを提供し続けてきたと思います。そして創業以来、サービスの品質に徹底的にこだわってきたのもご存知の通り。多くの方が引き続きデジタル化を推進するお仕事に就いておられると思いますので、Yahooが大切にしてきた精神をベースに、便利で高品質なサービスの開発、普及に共に努力しましょう!


読者の皆様へ

コロナで加速しているデジタル化は、人々に大いなる利便を提供する一方で、個人情報保護や差別や誹謗中傷、デジタルデバイドなどの大きな問題をはらんでいます。しかし、歴史的には、世界は例えば産業革命が生み出した課題を解決してきたし、現在の課題も人類の英知が解決していくと信じています。実際、業界ではこれら問題の解決に早くから積極的に取り組んでおり、デジタル化は世の中を良くするものだと信じていただき、今後の進化に期待いただきたいと思います。

事務局:ありがとうございました!

有馬さんの著書『ギャップはチャンスだ』(2014年12月 出版:日経BP)『転職メソッド』(2006年5月 出版:しののめ出版)にも今回語りきれなかったエピソードが書かれていますので、是非お読みいただければ幸いです。

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