『フランチャイズに加盟する前に読もう』2.飲食FC比較サイトについて
『フランチャイズに加盟する前に読もう』シリーズでは今後、飲食関連のFCに加盟を検討されているフランチャイジー(加盟者)にとって有益な情報提供を目指して連載します。
Q.FC本部をどうやって選択しますか?
Google等の検索エンジンで「飲食FC」とキーワード検索してみると、20件表示で最後の17ページ目まで行っても「広告」表示が並ぶ。
こんな後ろのページの広告を見る人がいるのか疑問だが、それほど広告したい企業が多いということだろう。
また次に多いのがFC比較サイトの広告。「飲食FC」というキーワード検索でFC本部の企業広告と飲食FC比較系サイトがその殆どを占めている。
飲食FC本部の現状は日本フランチャイズチェーン協会2023年度調査結果によると、FC本部の企業数は545社、店舗数は51,501店、売上高4,331,497百万円となっている。
たくさんの飲食FC本部が運営するブランドを吟味して正しい選択をするのは並大抵の労力ではない。手っ取り早くFC本部の広告や比較サイトの情報を鵜吞みにして加盟することもあるだろう。
しかし加盟者の失敗は、FC本部にとっては数百、数千ある加盟店のうちの1店舗がなくなるだけのことだが、単店舗経営の加盟者にとっては、全てを失うことになる。
初期投資やランニング費用の損失は加盟者が負担していて、解体等の撤去費用も基本的には加盟者負担になる契約が殆どだ。FC本部はその店を引き取って直営店として立て直して継続することも可能だし、他の加盟店に転売することもできる。
一方、失敗した加盟者は、累積の赤字に加えて途中解約違約金をFC本部から請求され、さらに生活の糧となる店舗を失うことになる。
残った負債を個人で返済することができずに破産したり、FC契約時に保証人になってもらった身内や友人にも弁済を請求され、信頼関係を失ったりたりする事態も想定される。
加盟者にとって、FC本部やブランドを選択するということは、人生の一大事だとういう自覚が求められる。
本部の広告や比較サイトを鵜呑みにしない
リスクを背負って人生の大勝負に出る加盟者が何故、FC本部が自身にとって都合の良いことを説明する広告やどこの息がかかっているのか分からないFC比較サイトの情報を鵜呑みにするのか。
実際の店舗を視察したり、既存店を運営している先輩加盟者の声を確認したりすることすら無く意思決定することが余りにも多すぎる。
重要なのは巷に溢れている情報に左右されるのではなく、自分自身の目でFC本部やブランドの良否を判断できる基準を持つことである。それは画一的な採点基準ではなく、自分に合うものを見出すためのオリジナルな基準である。
FC本部と自身の適性を見極める
FC比較サイトで視野を広げることは必要だろう。しかしそこに記載されている収益モデルや業態分析だけでは測れないものがある。業態力を見極めることだけでなく、自分自身との適性を測ることも重要。
FCビジネスの根源的な価値は相乗効果を発揮すること。店舗運営に必要なブランド力やノウハウをもつFC本部とお金と人材を投入する加盟店がお互いに力を合わせることで生み出される。
顧客満足の追求というひとつの目標を掲げ、共に努力を重ねていくことで、信頼関係が醸成される。それはお客さんの満足度や幸福度の向上に繋がり、ひいては社会の発展に寄与する。
結論から申し上げると、どこかのFC本部なら間違いないといった正解はない。加盟する人の価値観や経済環境、過去の経歴等、そういった複雑な個性ごとに最適なFC本部があるはず。
同じブランドに加盟しても成功する人と失敗する人がいる。50年以上継続しているブランドであっても、その差は歴然としてある。本部の指導力を凌駕する加盟者の個性がそこには存在するからだ。
どんなに優れた本部であっても100%の加盟者を成功に導くことはできない。逆にどんなに優れた加盟者であっても、本部の能力が不足していれば成功できない。なので、自身に合ったブランドを選択することがとても大切になる。
立地産業と言われる飲食業の物件選定
本部に一定の力量があっても、物件選定で致命傷を負うようなミスがあればそれまで。いくら力のある加盟者でも挽回することは容易ではない。それが「飲食業は立地産業」だと言われる所以だ。
また飲食店では、「店長の力量で売上は上下20%の差がでる」と言われる。普通レベルの店長が月に1,000万円売上ていたら、レベルの低い店長だと800万円、レベルの高い店長だと1,200万円になるという経験則がある。
しかし、立地を外してしまえば上下20%どころではない。過去の経験では想定の半分、つまり50%しか売れないといった事態にも遭遇した。立地でミスを犯すと取り返しがつかないのが飲食業た。
正しい情報を元に判断する
みんなはじめは初心者なので、FC本部や業態選び、その後の物件選定については、焦らずじっくり検討するほかない。出来るだけ色んな人に相談したり、ヒアリングしたり、確かな情報に耳を傾けたい。
21年間、飲食FCビジネスの最前線で働き、加盟者と喜びを分かち合ったり、時には厳しく対峙したり、様々な経験を重ねてきた。
経験を通して、FCビジネスには高い相乗効果を発揮する可能性があり、加盟者も本部も真のパートナーシップのもと、それぞれが成長できるものだと確信した。
第一線を退いた今だからこそFC本部の良いところや弱点もそれこそ本音で忖度なく共有することがきる。
.日本のFCビジネスが本部のためだけでなく加盟者にとっても有益な成長の選択肢となるよう、次回以降も発信していきたい。