2007横浜の世界SF大会日記 5

2007年9月1日。大会三日目。


昨日ほとんど働いてないので今日は朝から3階ハローワーク(ボランティアスイート)に行ったんですが一瞬遅く、「ちょっと英語」の通訳の仕事はもう先口が決まってました。そのうち声が掛かるかも……とボランティアスイートの奥の方でパンフレット折りの仕事をして待つことに。折りながら他のボランティア三人とおしゃべり。一人はオーストラリアからの留学生で、日本語が達者でした。髪をぎゅっとひとまとめにおデコをだしていて、エルフのコスプレが似合いそうな感じ。
「これ、折ったら何枚ずつまとめるの?」「今までの分、数えてない……」
「いち、に、あとたくさん!」「テリ・ブラチェット!」などと盛り上がりました。

そしてさっそくシール交換。ところが、オーストラリアの彼女はシール台紙を無くしてしまったらしく、必死にカバンを探すも発見出来ず。「ホテルにあると思うんだけど……」と肩を落としていました。せっかく交換したシール、無くなってしまったら悲しいですよね('_;)
台紙見つかったら貼ってね、と裏紙ごと鋏で切って渡しました。彼女からはモノクロのアンモナイト(?)の奇麗なシールを貰いました。

パンフレットを全部折ってしまってもまだ仕事が来なかったので廊下に出てふらふらしていたら、サイン会スタッフチーフのIさんに遭遇。
「そっち人足りてる?」「いや、足りてない!」
現地採用。次に通訳が必要なのは一時からだと言うので、その前に一時間枠の「ロケーション、舞台、設定は作品にどう影響するか?」を見る。作品のロケーションはいかに重要か。作品の世界観に合ったロケーション、読者が望むエキゾチシズムを満足させるロケーションを、といった内容。
パネルのあと、パネリストのリリアン・チェルニカさん(最近、日本を舞台にしたパラノーマル・ロマンスを書かれたという)に日本のティーセット(急須セットのことと思われる)をお土産に買って帰りたいのでどこで売っているかと訊かれ、うう~ん。なにせ私もみなとみらいは初めて。他の人に訊いて明日教える、と約束して別れました。

その後、サイン会の手伝いへ。午後一はマイケル・ウィーランさんとルー・アンダースさん。マイケル・ウィーラン氏は、画集の肖像写真にそっくりでした! キャリアから言ってそんなにお若いはずはないと思うんですが、今も好青年といった感じの爽やかな笑顔。ファンの要求にも気軽に応じてくれました。ああ、画集もってくれば良かったなあ~~と思うけれど、後の祭り。サイン会の直後ウィーラン氏がメガネを忘れて行ったということに気付き、Iさんが全速力で追いかけるも捕まえられず。あ~あ……

次の海外ゲストのサイン会は15時から、ナオミ・ノヴィクさんとデリア・シャーマンさん。でも海外からのファンがほとんどなので通訳の出番はあまりなし。
というわけで、デリアさんとまたお喋り。
デリアさんの最新作"Chengeling"は児童書で、世界中の移民とともにニューヨークにやってきた世界中の妖怪たちの話(!)だそうです。主人公は妖精に取り換えられた女の子(上の表紙イラストの右側の緑の服の子)。世界各国の妖怪がニューヨークを舞台に大暴れするという。
昨日も話していてそう思ったんですが、趣味が似てる! と思いました。日本とニューヨークで同じようなことを考えていた人がいた、という不思議な感動。それを伝えたいけれど、私の英語力ではとても細かいことは伝えられない。もどかしいままサイン会の時間は終わり。

そのあと4時からは待ちかねた萩尾望都先生の《バルバラ異界とポーの一族のはざま》。10分前くらいに行ったけれど、既に長蛇の列。人が多いのが苦手な私はそこでヘタレかけたけれど、ここで引き返したら一生後悔する、と思って並んだら意外なことに後ろの方ですが座れました。なんでも諦めたらダメですね。前の方に翻訳家のKさんがいるのを確認。昨日のホブ先生のパネルと伝統音楽でも顔を合わせていたのでこれで三度め。なんだかよく遇います。

萩尾望都先生のトークは大変な盛況で、やはり立ち見がでました。生でお声が聴けたというだけで満足で、何を話されたのかあまりよく覚えていません。ただ、予想通りの話と、予想を覆す話があったことは覚えています。 
最後の質問コーナーでは手を上げませんでした。「ポーの一族の続きはもう描かれないんですか」と訊いてしまいそうだったので……。
NOと言われたら、夢はおしまいですから。

パネルのあとKさんに挨拶して別れ、ヒューゴー賞授賞式を見に行くことにしました。アメリカの二人のアテンドをしている知人が授賞式は観に行くと行っていたので行けば会えるのではないかと思って。2階に降りたところでまたしてもKさんと遭遇。一緒にエスカレーターを降りたんですが、そこで足止めされてしまいました。どうやら先の方で詰まっている。満員です、ここまでです、もう入れません、と言っている模様。え~どうするの? と思ったら5階の映写室で中継します、このまま引き返して五階へ移動して下さいとのこと。この人数で五階まで登ると考えただけでくらくら。

「あの……上まで観に行かれます……?」とKさんに恐る恐る訊いてみる。「……ちょっともう限界……」ということで、二人ですごすご。さっき諦めたらダメだと思ったばかりなのにこの体たらくです。まあ、無理しないのも人生。なりゆきで、そのまま夕食をご一緒することに。Kさんは凛とした細身の美人で……そして外見を裏切るディープなオタク話であられました。それに趣味が合う。趣味が合う人とこんなにたくさん出会うとは、SF大会恐るべし。魔法がかかっているとしか思えません。

みなとにらい駅ナカのイタメシ屋であんな話とかこんな話とか驚くべき話とかで盛り上がり。ヒキコモリ人生の5年分くらい喋ったと思います。

大会三日目はこんな風に終わりました。
宿に帰ってインターネットで検索したら、唯一翻訳されたデリアさんの短編が載っているSFマガジンがまだあるかも知れないとわかり、ハヤカワオンラインに注文。在庫確認は週明けになりそうです。

(続く)