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不登校と共に〜学校に行かないという選択。

クラスに一人、圧倒的なマイノリティ

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クラスにひとつ、ぽつんと空いた机。


中学2年の3学期。
そろそろ進路についても考えないといけない。
部活もあるし、友達との付き合いもある。
今日は塾もあるし、宿題たくさんある。



中学生って、やることがいっぱいだ。
教室にある空っぽの机を気にする余裕はきっとない。時々後ろの人が、配布されたプリントをその子の机の中にしまう。それだけの机。


そこが、うちの子の席だ。



少しずつ失っていく何かに気づけない

中学生の娘。

最初は、体調が悪いだけだった。

頭がフラフラして起き上がれない。気持ち悪い。お腹が痛い。微熱もあったりする。だけど午後になると全く症状がなくなる。


毎日、遅刻して登校する日々が続いた。

どちらかというと、よく喋って友達もたくさんいる子だった。1年の時はクラスのみんなが友達といっていた。勉強は普通。部活は運動部で、練習も大会も一生懸命だった。


いつからだろう。
少しずつ、何かがずれていった。

高校受験に向けた日々の授業。
毎日たくさん出される宿題。
毎日遅くまで練習する部活。

学校から帰ったら、ご飯を食べて倒れるように寝る。塾がある日は、部活の後に夕ご飯を食べてからいく。

日々のことをこなすのに精一杯だったんだろう。次第に何を聞いても返事をすることがなくなった

家では絶えずスマホでSNSをしていた。
友達とのスマホでのやりとりも、欠かすことができない。家でも気持ちが休まらなかったかもしれない。

何か声をかけても、スマホから目を離さずに、

「うるさい」
「知らない」

これが反抗期か、と思った。


学校というプログラムの中のバグ

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彼女のバグは、学校や私たちがサポートしようとするほど悪化した。

学校に行くことは当たり前。

そう思う学校や親は、必死でバグを直そうとする。

学校は、行かなくちゃいけないところ。
勉強は、しなくちゃいけない。
なぜなら、法律で決まっているから。
皆と同じように生活しなければ、大人になれないから。


でも、彼女のバグは違う。
デバッグしてもとの仕様に戻すことはできなかった。

本人もなんとか学校に行こうと頑張ってきたが全く良くならず、病院で起立性調整障害だと診断された。薬を処方され、学校の先生に相談して遅刻で登校してもいいようにしてもらった。



病院からはゆっくり休むよう言われる。
しかし学校からは、

「そういう生徒は毎年いる。病名をもらってくるが昔はそんな病気はなかった。一種の怠け病だ」

と言われた。
先生にそういわれると、なんだかそんな気もしてしまう。そうなると娘をいたわるよりも、どこか責める気持ちが勝ってしまう。


朝は具合悪くても、午後には元気。

やっぱり休みたいだけなのかな。
怠けてるのかな…


食事を変え、生活を変えた。娘の自律神経をなんとか朝起きれるように整えること。学校に行けるようにすること。これが私の毎日の全てになった。


けれど、起き上がれない。


頑張れば頑張るほど、
起き上がれる時間が遅くなっていく。

食事を変えても変わらない。
血圧の薬を飲んでも、朝日を浴びても起き上がれない。
「すみません、今日も起き上がれないんです…」
毎日の学校への電話も負担になってくる。私は娘を叱ってしまう。

「今日もだめなの?」
「こんなにやってるのに、どうして起きてくれないの!?」

私は娘の部屋で、大きな声を上げて泣き崩れた。


学校、行かなくちゃいけないのに。
なんで、行けないの。
なんで、普通じゃないの。

この時、私も限界だった。
朝何度も大声で起こして、目覚ましをかけて、マッサージをして血の巡りをよくする。今日もだめか。また今日も。昼も、午後も。今日は行けない、とまた学校に電話。他に何も手が付かなかった。


ついには、リストカットの跡が腕に見つかった。
「何してるの⁉︎」
悲しくて、悔しくて。
本人はもっと悲しくて寂しかっただろう。
しかし、私は自分も娘も追い詰めていた。理解してあげられなかった。

喧嘩ばかりの日々。
激しく怒りすぎて、ついには家出をしてしまうこともあった。友達の家だったので一晩泊めてもらって迎えに行った。


そしてとうとう、娘はもう夜になっても起き上がれなくなってしまった


微熱が上がったり下がったりを繰り返す。
食事もどんどん少なくなっていく。
朝から晩までベッドで寝たきりの娘。
ほとんど話もしない。

もう一体どうしたらいいんだろう...


学校の先生は悪い人ではないけど、とにかく学校に来させることが大事。頼れない。旦那は先生と同じ考えなので、ちっともわかってくれようとしない。「精神科とか、そういうの理解できない」とまでいわれた。何度「学校にいけ!」と怒鳴られたことか。

近くに旦那の実家がある。話せば、無理でも連れて行け、というかもしれない。学校で何があったの?ご飯ちゃんと食べさせてるの?上の世代から言わせれば、学校は絶対。つまりはすべて母親の責任、尋問されるだろう。

一体どうすればいいのか…

頼れるような友はいなかった。
藁にもすがる思いでネットで検索した。
いろんな体験談を読んだ。
そして、整体院を探した。


整体で自律神経を正すことができるケースがあるらしい。普通の整体院では事情を説明しにくいので、女性専用で一人ずつゆっくり時間を取ってくれる整体院を見つけた。


学校外の人に相談すると見えてくる

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学校にはスクールカウンセラーがいた。

いい先生だったけど、やっぱり学校にいるからには学校復帰の方針になる。それに起立性調整障害についてはあまり詳しくない。精神科に行くにはちょっと抵抗があった。


起立性調整障害も治療するとあったその整体院の先生は女性で、ハキハキと意見をいう話しやすい先生だった。娘の状態をカウンセリングして最初の頃に言われたのは、

「学校に行くのをやめてみたらどうですか?」


「ちょっと勝手な意見かもしれませんが」と前置きを置くと、

「学校に行くことが重荷になって体が動かない。授業も嫌だし先生も嫌。学校の門を潜りたくもない。ここまで辛いのに行かせるのは酷ですよ」


この時の娘の体は、もう歩いてるのがやっと。1日ほとんど起き上がれず、外を歩くこともつらい。食も細くて体力もなくなっていった。

ここまで追い込んだのは、本人の気質もあるけど、私と学校だ…


整体院の先生の言葉は、まさに眼から鱗。

学校に行かせるという選択肢しか頭になかった私。「どうしたら行けるか」、ではないんだ。学校、行かなくてもいいんだ。

「学校に行かない」という選択肢をもらった瞬間だった。



学校に行かないという選択

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一進一退しながら、ほんの少しずつ体調も回復した。

だけど、

「学校に行かない」

その一言が学校の先生にいえない。

立場的にも納得してくれるわけがない。
皆学校に行くのが常識だ。
怖い…。

親も、先生も、テレビも、本も、友達も。
誰一人教えてくれなかった。
誰も気づかなかったのかもしれない。
学校に自分の意思で、行かない、という選択。



「体調が整うまでしばらく休養」

というスタンスから始めることにした。

徐々に、「体調が良くなったら、放課後でも学校に行く」というスタンスに変わった。電話も欠席の電話ではなく、行ける時に連絡するようになった。

本人が「行きたい!」と言わない限り無理に行かせるつもりはない。もちろん行きたいはずはないので、私の中では「学校はもう行かない」と決めていた


高校行く出席日数が足りないので通信高に変更。先生も家に来てもらって、やっと起き上がれないことが伝わるようになった。



家庭に居場所を作る

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家では、怒ることをぱったりとやめた。
何より、家庭の中に居場所を作ることに気をつけた。


会話もなるべく学校のことは避けた。
いろんな体験談を参考にして、例えば、

勉強しないでテストの点が悪くて困るのは→
本人→だから怒らない。
お風呂に入らないで片付けできなくて困るのは→
私→だから入るように何度も言う(娘が自分で片付けできるときは別)

というように、誰が困るかを重点にして、本人が困ることは怒らないというスタンスを取るようにした。(参考にさせて頂いたブログはこちら↓)



不登校と共に〜学校に行かないという選択のまとめ

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不登校の子には、それぞれの理由がある。

学校に行きたくないから学校には行かなくていい、と一概にいうつもりはない。

娘は起立性機能障害が悪化してしまったが、中には遅刻しながら通ってる子もTwitterでたくさん見かけた。具体的にどうしていいかわからない時にもとても参考になる。



でも、誰もなかなか教えてはくれない。
学校に行かないという選択肢があることを。


学校には子供を通わせる義務、親が子供を学校に通わせる義務は法律にある。

でも、子供が毎日通う義務はない。
あるのは、学校に通う権利。
義務教育なので中学卒業は可能だ。
そして、

卒業式の日だけはなんとか朝から登校し、きちんと卒業することができた



すると驚いたことに、次の日には普通に友達と遊びに出かけていった。

そして春休みになったら、なんと普通に起き上がれるようになった

今までのはなんだったのか、と笑ってしまう。

とりあえず、生きていてくれていればそれでいい。



不登校の日々は終わった。
ホッと肩の荷も降りる。

まだ完治はしていない。
元気な時もあれば、横になってる日もある。

高校卒業の証をもらうために入った通信高。この3年の間に何でもいいから、自分らしく生きる道を見つけてくれればと思う。


メッセージ

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もし不登校に悩んでいる親御さんがいらっしゃったら、「学校に行かない」と自分の意思として決める選択もあるということを知って欲しいと思います。

学校に行けなくて苦しかったら、逃げるという選択肢もアリです。


【9/27追記】

みこちゃんの記事にもあるように、

不登校というと、「ああ、学校行きたくない子のことだよね」一瞬で頭の中で結びつけてしまう。私もそうだった。不登校するのは学校に行きたくないからだと。逃げている、と。一般論で片付ける。みんなイヤでも頑張って通ってるのに、なぜ頑張らない?と。

実際逃げているし、学校には行きたくないのだろう。だけど、物事はそう簡単に、既存の型には当てはまらない。人それぞれの型がある。受け入れろ、とは言わない。だけど知っておいてほしい。こういう子もいるんだということを。


今は逃げる選択だとしても、
それが心を守り、命を守ることになるのなら。

いつか心も体も元気になった時に、新たな選択を取ればいいんだ。君の笑顔を守るために、その背中を応援していくよ。


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