「#台風でも出社させた企業」を冷静に読み解いた?お話
のハッシュタグの投稿数が、ツイッターで8万件以上も出ていますね。
去年、大阪に台風21号が上陸したときに、私もお店に出勤していて、車がひっくり返ったり、看板が吹っ飛ばされる瞬間を目にして、「ああ、台風の認識は昔のままじゃ危険だ・・・」という怖さを実感しました。
私自身も、おそらくみなさんと同じく、「事前にわかっている脅威だから自分の身の安全第一で備えておくべき」という考えです。
いっぽうで、ハッシュタグのように、「#台風だけど出社させた企業」は少なからずあるようですね・・・。
「なんで出社させるねん、おかしいやん」という声が本当に多いのですが、じゃあなぜ「経営者」はそういう判断になるのか・・・
感情的な意見が本当に目立ちます(それには賛同します)が、批判だけに囚われることが果たしていいのだろうか?・・・との思いから、
巷にあふれる「批判の声」とは別の角度から、自己流で批評を交えずに書き綴ってみようと思います。
読むとおそらく、「経営者と労働者」の目線や認識のあまりの違いにビックリされるかと思います。(笑)
「正義」を語ることが空虚に思うと同時に、会社組織に対しての自らの交渉力を高めて、自分の身は自分で守る意識の重要さを改めて感じます。
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去年の台風21号の時に多かった声が、「台風やのに出前させてケガしたら救急隊員の方に迷惑かかる」・・・的な、危険な状況なのに営業を強行した経営者の判断は、災害対応の危険業務に従事する方の負担になるというものです。
私も本当にその通りだと思うのですが、じゃあなぜ経営者はそんな非常識な判断になってしまうのか??
そんな問いの答えを出すために、整理してみたいと思います。
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まずは、経営者側の認識の面です。
過去の台風と、ここ2年で4回上陸した巨大台風とは、別物の厄災をもたらすものだという認識をされている方が多いと思います。
いまのところ、巨大台風による通勤途上や業務中による大事故などがまだ表面化していないので、
根拠のない「大丈夫ちゃうか」的な認識の経営者が多いことも、「台風でも出社させる」理由の一つかな~?と思います。
この「別物の厄災」をもたらす台風が今後、「台風でも出社した人」に大きな打撃を与える可能性を想像する、想像力の欠如が経営者にあるのではないか・・・?とも思ったりします。
私がこれまで聞いた話で印象深いのが・・・
ある飲食店で、まわりの全ての飲食店が閉店もしくは早じまいする中、たった1店舗、巨大台風の襲来の中、営業していたことを美談として話された、ある経営者の方のお話でした。
表を出歩くことすら危険な状況の中、ノーゲストの店内にふらっと常連の男性客の方がご来店になりました。
台風が去るまでの約2時間の間、店長とお客様の2人きりの貸し切りだったそうです。笑
お客様は、「食べにくるわしもわしやけど、おたくもよおこんな中で営業してはりますな~」と。
経営者の方は、「たった一人のお客様のためでも、約束した営業時間は守る信念がめちゃくちゃ大事なんや・・・」とおっしゃっていました。
ものすごく大事な何かを教えられたと同時に、ものすごく大事な何かが欠落している・・・
そんなことを感じるお話でした。
この経営者の方にとっては、「台風で出社するのは当たり前」ですね。
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立場の強さからくる「いじめ」と同じ構図
ツイッターによくあるのが、「台風危なかったら有給とって休めばいい」的な発言です。
まったくもってこの通りだな~と思うと同時に、やっぱり上から出勤指示出たら、逆らうのは難しいよな・・・と。
合理的に考えると、「台風危なかったら有給取って休む」と、身の危険の心配(会社にとっては通勤災害などのリスク)の回避につながります。
わずかな収益と身の危険、リスクリターンで考えると非合理この上ない・・
「仕事がデキる人」は、本当に有給取るでしょう。遅れた仕事なんかすぐ取り返すし、自分が疎まれたら転職するだけやし・・・
それでも「台風でも出社」に従うのは、「生活の安定」を人質に取られ、生殺与奪の権を会社に握られた人たちにとっての合理的な判断なのでしょう。
一度の反乱で、生涯疎まれるならガマンしたほうが得・・・
こんな労働者心理が読めている経営者が本気で足元を見て、従業員に「経営者への忠誠心」を示す「踏み絵」として「台風でも出社」を指示するなら、
「台風でも出社させる」のは、経営者にとっては当たり前の判断になります。
そもそも「いじめ」なので、合理的とか論理的なものは通じません。
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次に、お金の面から見た経営判断についてです。
世の中の職業(事業)には、5つのタイプがあると思います。①②③④は、今回のような自宅待機や避難が必要になるほどの台風の中、勤務に従事することが求められます。問題は⑤の営業判断ですね。(のちほど私が知る限りの考えられる理由を書きます)
①安全第一➡鉄道、飛行機などの運輸事業
これらは、厳格な安全管理基準に従って運用され、従業員もその基準に沿って厳格な行動を起こします。
あらゆる角度や経験から起こりうる危険に対してのノウハウがあります。おかげで、乗客の安全は守られています。
台風の影響と乗客の安全のリスク強度を図りながら、危険が迫ると早い段階で「運行停止」の措置を取ります。
従業員には宿直室が存在し、万一の災害時にも仮生活が送れるようになっています。
企業や従業員の判断基準は「安全」です。
②災害や生命への対応➡自衛隊や警察、消防、救急、病院、介護施設など
健康な日常生活を送っている時には意識することのない存在なのですが、私たちの身の危険や衰えが見えたときに、本当に支えてくれる、感謝すべき存在です。
過酷な現場の中、昨今叫ばれている人手不足の問題で、本当に大変な思いをされています。
従事される方たちの「思い」や「志」が、台風の危険な状況下でも私たちを助けてくれる行動を支えてくれています。
宿直室は存在しますが、慢性的な人手不足による従事される方たちへの過度な負担や、民間経営の場合、所定外給与や休日取得の面などで問題になったりする面もあります。
企業や従業員の判断基準は「生命を守る」「助ける」です。
③インフラ対応➡電力、ガス、水道、通信など
日常、スイッチを入れると電気がつく・・・みたいに、当たり前のように享受している私たちの生活を支えてくれるインフラは、日常の保守点検あってこその当たり前です。
これも日常無意識ですが、感謝しないとですね・・。
今回のような大規模な災害があると、被害の規模がどこまで大きくなるかわかりません。限られた人数の中、どれだけ被害が大きくなってその分仕事が増えようとも、早期復旧のために即対応、不眠不休の努力が現場で従事される方に求められます。
企業や従業員の判断基準は「24時間いつでも、安全に」です。
④災害対応➡自治体職員や公共施設の職員、政治家など
特に大規模な災害や、災害の予想が立つ場合に、情報を収集して適切な誘導や物資の支援などの判断や行動を起こしてくれる、なくてはならない存在です。(最近の政治家の動きには疑問?)
日頃、公務員の生産性は・・・みたいなことが言われることも多いですが、肝心な時には自分の生活そっちのけで住民対応に追われる存在でもあります。
判断基準は「適切な判断」です。
⑤民間企業➡その他「営利」を目的とする活動を行う企業や経営者
企業理念として、お客様や働く人の幸せを追求しながら、自らの会社も成長していく。
そんな理念を掲げる会社が多いです。
このこと自体の方向性としては決して間違っているとは思わないのですが・・・
経営者も人間。実は、経営者自身のプライドや自尊心や欲望、経営状態、目指す方向の本音、その他さまざまな要素から・・・
この企業理念の一部があまりにも強調されすぎてしまうことが珍しくありません。
台風時に営業の判断をするのは、一言で言うと「目先の利益の最大化」を目指すということです。だからムチャを押し通すのです。働く人を傷つけながら・・・これが「利益を強調しすぎる」ということです。
判断基準は経営者によってさまざまですが、根っこにあるのは「会社の存続」という判断基準です。要は「生き残り」ですね。
では、⑤の民間経営における、台風時の経営判断の理由について考えていきたいと思います。企業経営者の論理として「お金」について語ってみます。
・・・
まずは「目先の利益の最大化」についてです。
この判断基準に憑りつかれた経営者は、日常の経営でどんな判断をしているのか・・・
1円でも儲けることが「正しい」ということになる結果、
「コストカット」「過重労働」生き残るための「価格破壊」など、とにかく自分の会社が1円でも多く儲けるためになんでも手を染めていきます。
具体的には・・・(サービス業や工場の例を挙げます)
コストカット・・・「産地偽装」「取引相手への値引き強要」「冷暖房非設置のような必要な設備投資をしない」など、相手の都合を無視した自分の都合のゴリ押し
過重労働・・・サービス業の現状では、最低賃金が(例えば)1000円に上がると、生産性を逆算して、人件費1000円なら5000円分の売り上げの仕事をしてもらわないと困る・・・と、現場の負担量ではなく、数字ありきの仕事を求めてきます。(結果、ひとつひとつの仕事の意味を大切にする余裕がなく、だいたいやっつけ仕事になって現場は荒れる)
価格破壊・・・まわりのお客様も全部うちのものに!そしてうちは生き残る・・・!と、値段を下げると、まわりも負けじと同じことを・・・。(合成の誤謬)結果、値段下がったツケは、コストカットと過重労働に!!!
うわべの経営理念は美しくても、本音は目先の利益なんです・・・
台風でも出勤しなさい。・・・は、企業活動が休むことで失われる利益も、営業すればたとえ少額でも、会社にお金が入るではないか・・・!!!
こう解釈すると、経営者にとっては「台風で出社させる」ことは、当たり前の判断なのではないでしょうか?
「実は経営状態がよろしくない」ケースについてです。
サラ金でお金を借りている人が、生活費を給料で賄えないために毎月3万円返済して新たに5万円借りる・・・
俗にいう「自転車操業」というものです。
企業でも「キャッシュフローが回らない」という、入ってきた売上をそのまま支払いに充ててしまう、さらに借金をしてしまう・・・という、「自転車操業」の場合があります。
こんな経営の場合、例えば飲食店だと、「今日の売り上げ」として入ってくるお金はめちゃくちゃ貴重です。
支払い日が迫る中、この入ってきたお金のおかげで、支払いができるからです。支払いができたら、また1ヶ月商売を継続できます。
会社に余裕のお金がない場合、台風だからといって「はい休みましょう」とはならないかもですね・・・
お金が足りなくなったら「倒産」ですから・・・。
「本音は株主様のために」会社が存在するケースについてです。
一般のサラリーマンの方は、日頃会社で働く中で、自分が仕事を通じて得られた利益がどう流れていくのか?を意識することがないと思います。
だいたい、予算や達成目標があり、そこに向かって頑張って結果を出すところで完結しているはずです?(私も長い間そうでした)
たくさんの方が血と汗を流して勝ち取った「利益」をどう分配するかを決める権利は実は「経営陣」が握っています。
ここで、2つのケースを見ていきましょう。
「創業オーナー」の場合(社長)
多い時には総発行株数の「過半数」、そうでなくても少なからぬ比率の株式を握っています。
投資を知らない方には「??」の内容だと思います。
実は、たくさんの利益を出す会社は、株を持っている人(株主様)に「配当」を出します。
みんなの給料をギリギリまで抑え、コストカットも必死でがんばり、血と汗で得た尊い最終利益は・・・
「配当性向30%」などという形で、株主様に分配されていきます。最終利益のうち、3割は差し上げます・・・と。
多いところでは「100%」などというふざけたところまで・・・
ちなみに、創業オーナーが過半数の株を持っていると、「配当性向30%」だと、そのうち半分を創業オーナーが持っていきます。
会社の最終利益がもし10億円あった場合、配当性向30%で3億円差し上げるうち、1億5000万円は創業オーナーが持っていきます。
よく「業績不振の責任を取って社長の報酬50%減らします」的な発表もありますが、
配当性向を減らしていなかったら、社長は報酬減らしても配当で生きていけるので、大して痛くありません笑
「責任を取って」のところだけに意識を奪われるのは良くないですね笑
社長が欲にかられた場合、1円でも多く自分の手元に入るように、「台風でも出社させる」のは、当たり前の判断なのではないでしょうか?
システムの上に「経営陣」が存在する場合
俗にいう「サラリーマン社長」をはじめとする、出世したサラリーマン経営者ですね。
これまで創りあげられてきた会社のシステムを引き継ぐ形になるので、創業オーナーほど思い切った自分の考えで会社を運営することは難しいでしょう。
「株主様」の圧力や、会社組織の維持への対応力が求められたり、これまでの業績と同等の業績の確保の維持などの面や、
定められた任期を無事務めあげる面などが求められると・・・保守的な方向に向かいますね。
最終利益を残すためにいちばん簡単な方法は何か?・・・たぶんリストラなんです。
だとすると、「台風でも出社させる」のは、1円でも多く利益を改善させるためには当たり前の判断なのではないでしょうか?
・・・
このほかにも、さまざまなケースや、複合的な要因で「台風でも出社させる」パターンはあると思います。
ただ経営者の意識を批判するだけでなく、経営者側の視点や意識の分析を自分なりに考えてみることは、自分の行動を変えていくうえで必要なことの一つに思えます。
思いついたまま書き綴ってみましたが、やはり台風は関東方面を直撃しそうなので・・・
災害がひどくならないことを願いつつ、無事通過することを願って・・・
東京に住む友人たちも、無事でありますように。
関東在住の皆さんも、本当に気をつけてください。
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