台湾のコロナ対策に新しい考え方の芽吹きを感じたので備忘録に・・・③

2月21日付け日経新聞朝刊の7面にある「民主主義を鍛える『分散化』」というタイトルについて、紹介していきたいと思います。囲み内容は、記事の抜粋です。

今回の台湾のコロナウイルス対応を主導した、オードリー・タンさんの記事です。

台湾で今、推し進められているのは「参加型民主主義」というものだそうです。分散化技術を用いたオープンソース・オンライン・プラットフォームに台湾市民の約半数がデジタル統治に参加して、自分の意見を述べているそうです。

一例を挙げると、こんな事例があります。

米ウーバーが運営するサービスの台湾参入を認めるべきだが、従来のタクシー料金より安くしてはならない。(これによって労働法改正議論に役立てられています)

この決定は、台湾市民1000万人の、あらゆる立場、あらゆる場所、あらゆる職業、あらゆる思想、老若男女問わず、幅広い意見を極論も含めて、全ての答えを集約したうえで、(どんな判定理論なのかまではわかりませんが)最適だと考えられる結論を導き出しています。

おそらく、この議論では、ウーバーは参入したらタクシー運転手破産する、タクシー料金より安いとタクシー会社つぶれる、といった意見もめちゃくちゃ多かっただろうと思います。その逆の意見や全く違った角度の視点からの意見も、1000万人もいればいっぱい出てくるでしょう。

それらを総合したら・・・ウーバーの参入は認めたほうが台湾が活性化するけど、タクシーより安くしないバランスなら全体が上手くいくよねたぶん・・・というのが、全員の意見をまとめたら導き出された結論だった、ということだろうと思います。

この1000万人の「集合知」は、4つの条件である「多様性」「独立性」「分散性」「集約性」が揃うと、どんな天才が導き出す答えよりも精度が高い、最適な答えになる、というのが明らかになっています。

おそらく、地球の大自然の営みを支える自律バランスに近い仕組みなのだと考えられます。これによって、さまざまな場面での最適、最善の答えが生まれ、そのことで最もいい状態が生み出されます。

・・・ということは、この仕組みこそが、さまざまな問いに対するベストの答えに近づきやすいのだと言えます。

より良い社会にするために、最高のやり方というのはこういうものなのだ、というモデルケースになるのではないでしょうか?

現在、約1000万人の市民がこのプラットフォーム上で活動している。法案の策定に参加するだけでなく、政治家の発言内容が事実かどうかもチェックしている。台湾当局は、当局機関の管轄分野で誤った主張がネットやソーシャルメディアに投稿された場合は、各機関に2時間以内に反論するよう求めている。

上記は、情報の信頼性と透明性を確保して、正直かつ正しい情報がみんなに行きわたることをとても重要視した仕組みの記事の抜粋を紹介しています。

なぜ「正直かつ正しい」情報なのか・・・

「集合知」では、参加者全員が「その時点の正しい情報」をもとに判断して答えを出すので、「情報そのものが誤っている」と、最適な答えがゆがめられてしまうからです。

台湾では透明性を非常に重視している。唐氏(オードリー・タン氏)は記者会見の内容を必ず数日以内にネットに公開する。こうしたことは、台湾の統治体制への信頼を築くために大いに役立つと思われる。

・・・透明性と信頼。やはり、オードリー・タンさんはじめ、台湾政府の「群衆の智慧」への深い理解が伺われますね。

分散化技術は、アナログ時代には解決が不可能であったであろう、大規模かつ複雑な問題に対する一般市民の意見を整理できるという側面がある。
極論の増幅により政治の二極化が一層進んだことだ。極論がはびこるのは利用者がつられやすく、(いつもクリックする内容を分析されて)最もクリックしやすい内容をどんどん送り付けるターゲット広告というビジネスモデルがあるためだ。その結果、我々は自らが見たいと思う情報が増え、より殻に閉じこもるようになった。(自分の思い込みを増幅させる認知バイアスが働き、違う意見を批判したり排除しやすくなるということですね)
政治の両極に位置する人々の多くが気にかけている課題は、教育、医療、年金とどれも共通しているものばかりだ。この分断を埋めるには、システムそのものへの信頼を築きなおす必要がある。

・・・この3つのポイントを整理すると、

例えば、年金問題で、「高齢者の年金額の確保」と人口減、収入減による現役世代の支え手の年金支払いの重圧という、矛盾する問題で、高齢者と現役世代が「わしは年金増やしてもらわんと苦しいねん」「ぼくらこんな高い年金保険料大変ですわ」と真逆の主張を言い合う、というのが両極に位置する人々であり、分断です。

この両極端な主張ばかりを目にすると、対立しか頭に浮かばなくなりますね。自己主張こそが自分の保身につながってしまうので・・・(自分の片方に偏った思い込みが増幅されて、反対意見を批判することにつながります)

・・・こういった、いろんな国で起こっている「分断」と「対立」を、分散化技術は、大規模かつ複雑な問題に対する一般市民の意見を整理できることを通じて・・・

最適な答えを導き出すことが可能になります。

・・・

最後に。

台湾で行われている民主主義とは、これほどまでにレベルが高く、現実的な解決策へと導く方法なのです。

実はこれは、「ブロックチェーン」と「仮想通貨」を開発している方たちにとっての思想でもあり、今最先端の考え方です。

ティール組織のような分散型組織もこういった考え方がベースです。

・・・情報隠しの政治、ブラック体質の企業組織など、自分たちの都合や論理で成り立つ現代社会がすでに、時代遅れになりつつあることを、これらの記事は浮き彫りにしてくれていると思います。

こういったことを踏まえて、ニュースや記事などを目にすると、また違った捉え方や考え方ができるのでは・・・と思います。

そして、それを認識することこそが今一番大事なのだろうと思います。

この内容を踏まえて、日本で起きている現実を見てみると、どんな景色が見えますか・・・?(苦笑)



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