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エデン条約編2章の感想~ハナコのささやかで苛烈な復讐~【ブルーアーカイブ】

だいぶ遅ればせながら、ブルーアーカイブのメインストーリー「エデン条約編」の2章を見終わったので、気になった部分に関する感想とかを雑書きしていきたい次第。


以下、エデン条約編本編の内容を踏まえたネタバレ全開の感想になるので、未見の方はくれぐれもご注意ください。


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※ネタバレ防止のため、シスターマリーのお姿を置いておきます。美しい


ちなみに1章~2章の全体を通しての感想としては、ヒフミちゃんのこの台詞に集約されていると思います。色んな意味で。

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ヒフミちゃんはかわいいなあ。コハルちゃんはえっちだなあ。


なのでここで書く感想は多分に自分の主観が混じった細かい点に関する言及だったりします。以下、本文に入ります。


1:ハナコのささやかな悪戯

見どころ満載のストーリーでシナリオ終盤はいろいろ展開が詰め込まれてたわけだが、特に先生諸氏に一番インパクトを与えたのはこの場面ではなかろうか。

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この影響でTwitterからピクシブまでネタ画像が作られたり
(下記の方に限らずいろいろありますw)

ピクシブ大百科には変な記事が作られたりしてるわけですがw

もともとヒフミを偏愛(誤字ではない)していたナギサにとって「想定される最悪のケース」が現実のものとなったかのように虚言を放ったハナコ。

しかしここで着目したいのは、その直後のナギサの反応である。

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ハナコの言葉を真に受けたかのように驚愕するナギサの姿が描かれている。自分が疑いを向けていた「裏切り者」の言葉であるにもかかわらずだ。

この時ナギサの目の前にいるのはアズサとハナコ。正義実現委員会の人質扱いなコハル・もともと信頼されていたはずのヒフミと異なり、最初からスパイの疑惑が強く補習授業部に入れられた2人だ。
そんな2人がナギサの想像通りに「黒幕のスパイ」として「誰も場所を知らないはずのセーフハウス」に現れたという状況。
ナギサ視点からすればこの2人はどう考えても真っ黒。目に前に立っているのは明確な「エデン条約に対する敵対者」なのだ。

普通に考えれば敵対者のスパイが任務中に自分から黒幕の情報をターゲットに明かすとは思えないし、語ったとしても安易に信用できるはずがない。スパイだもの。

※実際「本当の黒幕」だったミカは、自分が絶対に勝てる状態を作り出した上で、自分から姿を表し真相を語っている。そしてターゲットであるナギサはその場にはいない。

そもそも補修授業部以前のヒフミはこの2人と全く接点がない。冷静に考えれば「自分を惑わし、混乱させるための騙り」なのは明らかだ。だが目の前のスパイが語った「本当の黒幕」の情報をナギサは否定することもなくまっとうに受け取ってしまった。

それは他でもないナギサ自身がヒフミのことを「裏切り者ではないか」と疑っており、その疑念をハナコの虚言が証明した形になったからだろう。

言うなればここにこそナギサの猜疑心の本質が見える。「人の心の中など証明できない、信じることなどできない」と語っていた彼女だったが、その実「自分の見解と合致した、辻褄だけは合っている虚言」を疑おうとはしなかったのだ。なんとも皮肉な話である。
これは本当の裏切り者がミカであるとナギサが最後まで見抜けなかったことにもつながっている。実際ミカはナギサの猜疑心を巧みに誘導し、意図的にアズサを「疑う余地のある裏切り者」として捏造していたのだから。

2:エデン条約という名のリヴァイアサン

逆に言うと「エデン条約の締結」という一大プロジェクトは、彼女をそこまで疑心暗鬼に追い詰めてしまうものだった、とも見ることができる。

そもそも「エデン条約を締結する意義は何なのか」についてだが、これは2章前半で美食研究会がやらかした水族館襲撃事件の顛末を見ると納得がいく。

このとき美食研究会を拘束すべく現場で事態を収拾したのは正義実現委員会(トリニティ)だが、建前上はシャーレ(連邦生徒会)の指揮を受けた補習授業部(トリニティ)が対応している。
更にゲヘナ側も身柄の引き渡しは救急医学部(ゲヘナ)が受け持ったが、これは「自分たちが出張ると無用なトラブルを生む」と風紀委員会(ゲヘナ)が考慮した結果である。
ハスミもヒナも、このイザコザが両校の全面抗争に発展しないよういろいろ気を使った結果、複数の組織が共同で事態の対応に当たらざるを得なかった。

エデン条約が締結されれば、この手のイザコザが発生した場合の対応はETO(エデン条約機構)に一任される。この方が合理的なのは間違いあるまい。正義実現委員会も風紀委員会も、ETOの承認さえあれば自分たちだけで事態の対処に赴けるのだ。

しかしながら現状のトリニティでエデン条約を積極的に推進しているのは実質ナギサ一人という状況で、同じティーパーティーのミカも反対の立場だ。

※一方のゲヘナ側の事情だが、こちらはヒナの言葉を借りればかなり単純である。もともと学内のトラブルシューティングで日々多忙を極めていた風紀委員会からすれば、その一部をETOが肩代わりしてくれる事に異論はない。風紀委員会と確執のある万魔殿としても、ETOが設立されれば風紀委員会の影響力を合法的に抑えられる。

そんなエデン条約はもともと連邦生徒会の手で構想されたものだが、ブルーアーカイブ冒頭の連邦生徒会長失踪により宙に浮いてしまっていた。つまりそもそもが学校単体ではなく、上位組織である連邦生徒会の仲介による制定を前提としていたプロジェクトなのだ。

そんな巨大プロジェクトをなんとか一学園の生徒会の権限で推し進めたきたわけなのだから、ここに至るナギサの苦労は推して知るべしである。

ましてナギサはティーパーティの構成員ではあるが本来はホストではなかった。現在その立場にあるはずのセイアが不在になったため代行していることがエデン条約編1章3話で語られている。

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本来のホストであるセイアに何が起こったのかは終盤で語られた通りである。つまりナギサはこの時点で「エデン条約の阻止を企む者が、ホストを代行している自分を狙ってくる」ことが想像できていたはず。

つまり彼女は、自分が倒れたら今度こそエデン条約が破綻するという状況下で、常に闇討ちを警戒しながら、セイアが倒れてからの1年近く活動を続けていたわけだ。そりゃ疑心暗鬼にもなるか。

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劇中でミカはこう語っていたが、ひとり猜疑心で自縄自縛となっている彼女が、トリニティ内部より遥かに複雑な権力構造になるだろうETOをコントロールするなど、土台無理な話だったのではないか。

ヒナの言う通り、エデン条約はおよそ人一人の手で制御できるような代物ではない。怪物は制御できないからこそ怪物(リヴァイアサン)なのだ。

※逆に言うとこの「制御できない」という点にもミカの暗躍の動機が見え隠れしている。
ETOが組織されてもティーパーティ自体がなくなるわけではないが、条約調印によりETOの一員となるティーパーティで決定権を有するのは、現在ホストであるナギサだ。
結果としてミカはティーパーティに所属していながら、ETOを制御する何らの権限も持ち得ないことになる。
心底ゲヘナを嫌悪している彼女からすれば、目の前に万魔殿や風紀委員がいながら手を出せないETOは生殺し以外の何物でもない。

3:本当に信じられなかったものは何か

さて、そんな手に余る巨大プロジェクトを担い続けたナギサは疑心暗鬼に囚われた挙げ句、冒頭に挙げたようにハナコの言葉を鵜呑みにしてしまった。

それでも、最近のトレンドになぞらえて言えば(遊郭編が楽しみ)
「言うはずがないでしょうそんなことを、私のヒフミさんが!!」
とでもナギサが言い返してくれればハナコも多少安堵したかもしれない。

そう、スパイ云々を抜きにしても、阿慈谷ヒフミという少女の人となりを理解していれば、こんなことを言うはずがないのだ。

しかし猜疑心に囚われていたナギサは、ハナコよりずっと長い間ヒフミを見てきたにもかかわらず、ハナコの放った言葉を真に受けたかのように驚愕してしまい、その後アズサの手で意識を手放すことになる。

※ちなみにハナコは「誤解はすぐ解ける」と話したが、今回のエピソードのエピローグで補習授業部は第3次追試験を受験しており、ナギサはエデン条約の調印に赴いている。ナギサとヒフミが直接顔を合わせる機会は描かれておらず、この2人の誤解は未だに解けていない可能性がある。

この虚言に関する誤解が解けたときは一連の事件の顛末もナギサの知るところとなっているはずだが、その時にこそハナコの「ささやかな復讐」が本当の意味でナギサを蝕み始める。

ナギサは自分が疑っていた全てが潔白であったという結末と同時に「ヒフミが言うはずのない言葉」にまんまと騙された事実を目の当たりにする。
先にも述べたが、これはナギサがヒフミ本人を信じることより、辻褄だけは合っている自分の見解を優先したことに起因している。

ハナコの言葉の絶妙なところは「私は裏切者だ」ではなく「これまでの関係は偽りだ」と言ったことにある。

※皮肉なことに彼女との関係が本当に偽りだったミカという実例が同時に存在しており、ナギサはこれを最後まで見抜くことができなかった。これでは彼女の猜疑心は余計に強まると考えるべきだろう。

この言葉に踊らされたナギサは今後ヒフミと関わる中で、ヒフミの自分に対する言動に悉く疑いを抱き続けることになる。

なにしろ大義のためと称してヒフミを退学寸前まで追い込み、不和のきっかけを作ったのは他ならぬ自分自身だ。相手に負い目のある人間は、当人以上にそのことを過大に考えてしまいがちだ。とはいえヒフミはナギサからの謝罪があれば彼女を許してくれそうなものだが……

「普通ならそこまでされた相手を簡単に許すはずがない」
「ハナコもヒフミも潔白だった。だとすればあの言葉は「裏切り者の宣言」ではなく「自分を許さないという怒りの宣告」ではないのか」

猜疑心はどこまでも人を縛り続ける。都合よく辻褄が合っていれば、ヒフミは表面上取り繕っているだけで、実は自分を許してなどいないように見えてくる。しかしどれだけ疑わしかろうと、ナギサはもう成績不振を口実にティーパーティの権限でヒフミを縛ることも遠ざけることも出来ない。ナギサ自身が課したデタラメな合格ラインの追試験を、ヒフミは文句のつけようのない成績で合格してしまったのだから。

追試を合格したヒフミは誰もが認めるまっとうなトリニティの生徒である。なのにナギサだけが彼女を信じることができない。

前述したエデン条約制定における労苦や、ミカに踊らされ続けていた事実を踏まえれば、ヒフミは今回の一件でナギサを必要以上に責めることはしないだろう。ヒフミをよく知る先生諸氏なら誰しも理解できるはず。しかしナギサはそれを信じることができず、あるはずもないヒフミの怒りにおびえ続けることになる。

これからナギサは彼女一人だけで、ヒフミとの「お友達ごっこ」を続けなければならなくなったのだ。

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猜疑心に囚われ大好きな人に嫌疑を向けた報いは「嫌疑が晴れたのに彼女との間柄だけは、元に戻らない」という最悪の形で彼女に跳ね返ってきたのである。

もっとも、ナギサがヒフミのことを信じさえすれば、今まで通りの関係はすぐに取り戻せるのだ。しかしナギサが猜疑心に囚われ続ける限り、それは決して叶わないのである。


……というわけでつらつらとエデン条約編でも一番インパクトのあったシーンに関する感想やら考察やら駄文やらを書き連ねてみました。

これ以外にもミカちゃんの本心とか、アリウスに関することとか、いろいろ考えてみたいことはありますが、とりあえずはこのへんで。

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