AV新法の潰し方

前文

いわゆるAV新法(以下新法)により、AV女優(以下女優)の仕事に支障が生じ始めている。施行直後から仕事をキャンセルされたという話があり、トラブルは時間が経過するごとに増えるだろう。
これは男優側にも言える事であり、人数が多い企画はさらに困難になる事が予想される。外からは見えない強烈な制限が、AV業界を覆っているようだ。

新法は出演者の被害を守るという建前だが、その被害の実態が不明であり、ひと昔前ならいざ知らず、最近の業界は実に健全で、トラブルはほとんど無いと言う事を、ツイッター上で本職の人から聞いた事がある。少なくとも、AV業界では被害というものは極端に少ない事が伺える。

立法過程では被害が被害がと唾を吐く議員はあれど、どの程度の実態があるのかは示されなかった。もし仮に被害がごく少数である場合、業界全体に作用する強烈な制限は比例原則に反するので、違憲となる可能性がある。

このような経緯から、新法を潰す方法はないものはないかと考え、その考察をしていこうと思う

手段

手段は3種類に分けられる。
①法律形骸化
②法律廃止
③法律内容変更

①の形骸化は新法を可能な限り(罰則に触れない範囲で)無視する内容である。しかしこれは業界の望む所ではないので採用が難しいようだ。
性産業自体、立場が弱いものであり、警察等に目を付けられるとすぐ潰される懸念がある。吉原のソープで大量摘発があったのは、格安でサービスが提供され、急拡大したのが原因と言われている。罰則に触れないとはいえ、禁止されている行為を続ければ、お上から目を付けられる不安もあるので、形骸化の選択はしづらいだろう。
②の法律廃止とは法律そのものをなくしてしまう内容である。以前、ツイッターの運動で検察庁法改正案が潰れた前例があるので、可能性としては残されている。また、新法が違憲であると裁判所が判断すれば、これも廃止する手段になり得る。
③の法律内容変更は、新法のうち業界にとって相当な圧力となっている条文を廃止又は緩和する内容である。具体的には熟慮期間の廃止・短縮である。これが緩和されるだけでも業界の負担は相当に軽くなるだろう。法律内容変更は、一度成立した法律を廃止するのに比べ、早く確実なで現実的な手段だと思われる。

①法律形骸化


選択肢にはなりえないがせっかく考えたので形骸化の方法をいくつか提示したいと思う。

熟慮期間無視


新法では熟慮期間は2つあり、①契約から撮影まで1ヵ月の期間を設ける(7条)②撮影終了から公表まで4ヶ月設ける(9条)、と規定されている。

第七条 出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影は、当該出演者が出演契約書等の交付若しくは提供を受けた日又は説明書面等の交付若しくは提供を受けた日のいずれか遅い日から一月を経過した後でなければ、行ってはならない。
第九条 性行為映像制作物の公表は、当該性行為映像制作物に係る全ての撮影が終了した日から四月を経過した後でなければ、行ってはならない。

7条と9条違反の効果は出演者が解除出来る(12条)上に、作品の差止め請求が出来る(15条)というものである(罰則は無し)。

第十二条 次に掲げるときは、出演者は、民法第五百四十一条の催告をすることなく、直ちにその出演者の性行為映像制作物への出演に係る出演契約の解除をすることができる。
 一 第七条第一項又は第三項の規定に違反して、その出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影(同条第四項の規定により出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影とみなされる撮影を含む。)が行われたとき。
 三 第九条の規定に違反して、同条の期間を経過する前に性行為映像制作物の公表が行われたとき。
第十五条 出演者は、出演契約に基づくことなく性行為映像制作物の制作公表が行われたとき又は出演契約の取消し若しくは解除をしたときは、当該性行為映像制作物の制作公表を行い又は行うおそれがある者に対し、当該制作公表の停止又は予防を請求することができる。

つまり出演者が解除をしなければ熟慮期間は無視して良い事になる。なのでメーカーと女優の関係が良好であれば解除する理由はまずないので、熟慮期間は無視しやすいだろう。
もっとも、新人女優が起用されにくいという意味にもなるので、うまい方法とは言い難い。

解除・差止めを無視


実は解除・差止請求を無視しても罰則はない。罰則を定めた20条では差止請求無視について規定はないし、解除について規定はあるものの「不実の告知」と「威迫して困惑させる」が要件である。

第二十条 第十三条第五項又は第六項の規定に違反したときは、その違反行為をした者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第十三条
5 制作公表者及び制作公表従事者は、出演契約の任意解除等を妨げるため、出演者に対し、出演契約の任意解除等に関する事項(第一項から第三項までの規定に関する事項を含む。)その他その出演契約に関する事項であって出演者の判断影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、不実のことを告げる行為をしてはならない
6 制作公表者及び制作公表従事者は、出演契約の任意解除等を妨げるため、出演者を威迫して困惑させてはならない

つまり「出演者を威迫して困惑させる」がなければ、要件を満たさず罰則の対象とならない。もっとも、無視の継続が警察や検察に「威迫」と解釈され、出演者を困惑させた、とされてしまう余地はある。

契約書締結日や撮影日の日付をずらす


契約書の締結日や撮影日の日付を誤魔化す事によって、熟慮期間を無視しよう、とするものであるが、新法はクリア出来ても私文書偽造等には該当してしまうだろう。

出演者を制作者側に入れて契約書を作らない


制作者側にいると同一の立場になり契約関係がなくなり、権利義務関係が不明瞭になるので、当事者間で別のトラブルが生じかねない。また、制作者側にいるという実態がなければ、誤魔化しがあった、真実は契約関係にあった、と解釈され、罰則の対象となりかねないだろう。

保証人を立てる


保証契約は保証人になろうとする人と相手方の間で成立するので、女優不在で出来るものである。なので出演契約とは別個の契約になるので、新法の適用はなく、本来は禁止されている損害賠償の予定や違約金(10条2項・3項)、解除に伴う損害の保証(12条2項)を定めても有効になる。保証人がいればメーカーの立場は不安定にならずに済むので、熟慮期間は無視しやすいし、解除の不安も軽減されるので、新人女優ですらも起用しやすいだろう。

他の出演者から不実の告知・威迫


罰則の要件である不実の告知や威迫(13条5項・6項)は、メーカー側が対象であるので、出演者同士の関係では対象にならない。なので他の出演者から不実の告知や威迫があっても問題はない。が、女優の仕事の機会を増やす効果には至らないので無意味と言える。また、不実の告知や威迫を指揮した者がメーカー側であれば罰則の対象になるうるだろう。

メーカーのアングラ化


Twitterで散見される意見。アングラ化となれば自由度が上がるかもしれないが、AV業界のイメージが悪くなるし、女優が受ける被害も増えかねないし、警察からも警戒されるだろう。

思いつくままに書いてきたが、有効なのは保証人くらいか。しかしメーカー側からすればこれも不安があるらしい。

追記

主従逆契約


AV新法ではメーカーから出演者への「出演契約」を想定しているが、逆に出演者からメーカーへの「撮影販売委託契約」としてしまえば、AV新法の適用を完全に免れるはずである。
女優を制作者側に入れるケースでは対等な関係となり契約が不存在になるから、お互いの立場が不安定になるデメリットがあった。また、契約書がないため、外部に対して証明できるものがなく、例えば警察に対して「契約関係ではない」と言い逃れるのも困難になり、”誤魔化すための仮の立場”と疑われてしまうだろう。
その点、従来の主従関係を逆とした委託契約にすれば、契約書面があるので外部に対して証明しやすく、誤魔化しと疑われる余地はなく、また、女優が積極的に撮影販売を行う内容となるだけなので、従来のAV制作の流れをそのまま踏襲できる上、熟慮期間等の負担も除外する事が出来る。
女性の権利を守る慣習も従来通りに出来るから、適正AVの審査も通りやすいと思われる。この方法はかなり有力ではないだろうか。
女優が主体となって作成したことになるので、著作権は女優が持つ事になるが、著作権をメーカーに販売すれば、そのままギャラが支払われる事になるので、契約関係以外は従来の手続き通りで完結する事が出来るだろう。

一つ難があるとすれば、他の出演者に対しては制作主体となる女優との間で出演契約が発生するので、そこで新法の適用がある事になる。もっとも、出演者全員の共同でメーカーと委託契約としてしまえば、その点も回避できると思われる。
ただ、権利関係が別の形で複雑になるので、これも抵抗がある方法かもしれない。

この方法の良い所は、女優が主体となる契約と評価出来るので、新法で想定している被害の発生が無く、また、新法で想定する被害を受けるおそれのある人は、そもそも自ら撮影をしようとは考えられないので、このような被害や人を最初から除外出来る点にある。

②法律廃止

最高裁に違憲審査を求める

AV新法廃止のルートは2つを想定している。1つは次に書く予定の③法律内容変更に譲り、ここでは裁判所による違憲判決を求める方法に触れてみる。
とはいえ、筆者はそこまで法律を専門とはしていないので、間違いがあったらご容赦を。

法律が憲法に違反していると認定されれば無効に出来る。その審査をするのが法律審である最高裁である(一審、控訴審(二審)は事実認定に係る事実審)。最高裁で審査をしてもらうには最高裁判所の第二審か第一審の判決が必要であり(ここで確定した事実を基に法律判断がされる)、また、法律が憲法違反であると直接的に審査を求める(抽象的違憲審査(具体的事件がない))事は出来ず、具体的事件と切り離さないで審査をしなければならない(付随的違憲審査←具体的事件に付随)。

民事事件と刑事事件のどちらでも最高裁の判断を求める事が出来るので、リスクの低い民事事件から訴訟を提起するのが良いだろうか。刑事事件では罰則に抵触する事件となるので、AV新法では20条の「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」か、21条の「六月以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」とあるように、失敗した負担が大きすぎる事になる。

なので、例えば、AV新法によりメーカーから7月の撮影予定がキャンセルになった事を不服として、女優がメーカーを民事事件で訴え、その過程で上告審で違憲判断を狙う方法が想定される。いわば出来レースであるので事実関係に関するストーリーが作りやすく、最高裁において違憲審査を求めやすくなるだろう(メーカーから女優を訴えてしまうと社会的なイメージが相当悪いのでこの選択肢は無い)。

刑事事件では、メーカーが罰則に抵触する行為をし、刑事訴追されてから、上告審で違憲を訴える事になるが、違憲の訴えが通らなかった場合のリスクが高すぎるので現実的な方法ではないだろう。

さて違憲を訴える法理であるが、比例原則違反が考えられる。
比例原則とは、簡単に言えば「目的に対して過度な規制はするな、規制は必要最小限にしろ」という公権力に対する要請であり、規制が著しく不公平であると無効になるというものである。

新法における規制は多々あるが、多くは慣習に沿ったものであるようだ。大きく違うのは熟慮期間である。新法では①契約締結から1ヵ月は撮影するな(7条)②撮影終了から4ヶ月は公表するな(9条)がある。また、1年以内ならば出演者は任意解除が出来る(13条)もある(以下熟慮期間等)。

新法の目的はAV出演者の被害の防止・予防であり、熟慮期間等は出演者の被害防止・予防に大いに資する内容ではあるが、一方でメーカーの地位を著しく不安定にさせるものであり、撮影スケジュールを調整しても直前で反故にされてはまた女優選びから始めないといけないし、撮影を終わってもすぐ販売が出来ず収益計画が大幅に遅れるし、販売前に解除されれば利益を得られず経費ばかり負担するという相当な損失を被る事になる。そしてその損失は女優に請求出来ない(12条2項)。

メーカーの負担に対する出演者の被害防止に関しては、そもそも出演者の被害の規模と内容が不明瞭であり、議事録や国会答弁を見てもはっきりしない。一部議員はAV業界に聞き取りをして被害を把握したようであるが、AV業界に広く聞き取りをしたわけではなく、ごく一部の団体にだけ実施したようである。

被害の実態もいつの時点のものか不明瞭であり、ひと昔前はAVに係る女優の被害があったものの、AV人権倫理機構が発足してからは業界内で自浄作用が強く働き、今日では業界内での出演者の被害はほとんど無いようである。


ここまで「AV業界」とは適正AVを制作する界隈を前提に書いてきたが、同人AV(個人や同人サークルが作成)や素人AVというものもあり、被害の実態はむしろこのような非適正AVに多いと思われる。内容も過激なものばかりで、先日は個人撮影から殺人に至る事件もあった。映像の作成者も特定し難く逃げ得を許している現状である。被害の度合いとして非適正AVの方が深刻なのは考えずとも分かることだ。

また、元々は未成年者取消権が民法改正でなくなることから、20歳未満のAV出演が問題視されていたのだから、必要最小限の規制を貫くなら20歳未満の出演者に対して熟慮期間等を認めれば足りる話である。

このように、想定する出演被害(20歳未満)や加害の対象(主に非適正AV)が限定的であるにも関わらず、業界全体に過度な制限を課す新法は、比例原則に合致しないのは明白であり、新法に対するメーカーやAV女優のツイートを見ても、受忍限度を大きく超えている事が伺えるので、違憲として無効になる可能性は大いにあると言えるだろう。

また、熟慮期間等は私人間の契約内容に関し、国家が不当に介入をし、本来は自由に出来た契約が、大幅に制限されているのだから、私的自治の原則に反するものであり、憲法13条にも違反する内容であると思われる。

憲法13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

立法の過程で適正な手続き(デュープロセス)があったとは到底思えず、熟慮期間等のそれぞれの数字(1ヶ月4ヶ月1年)においても具体的な根拠が無いので、この辺りからも違憲の是非を問う事が出来るだろう。

③法律内容変更

SNS上での廃止運動

②法律廃止の冒頭で触れたもう一つの方法は、拡散力のあるツイッター等SNSを活用し、世論を巻き込んで廃止にしようというものであり、これは法律内容変更と内容が同じなので、こちらで解説しようと思う。

新法の附則4条では①2年以内に②新法の施行状況を勘案し③検討を加えて④③の結果に基づき必要な措置を講じなさい、としている。
そして③の検討については、AV公表期間の制限(4ヶ月)と無効となる出演契約の範囲(一部を無効にする)や、出演契約に関する特則について行う、とある。
2年以内なので今すぐにでも検討が出来るわけだ。折しもツイッターでは既に新法反対の声が多く上がり、先日は「AV新法」が、今日は「#AV新法の廃止を望みます」がトレンド入りした。

恐らくはまだ記憶に新しいであろう。検察庁法改正案の廃止運動がツイッター上で拡散し、その後廃案になった、という先例がある。
検察庁法の件は施行前の話であり、新法は既に施行されたので難易度は高くなっているが、SNSでの声が国に刺さったという意味では、貴重な例とも言える。

ツイッターでは既に現在進行形でAV廃止・縮小の流れとなっているので、ここまでの経緯をざっくばらんに説明する。

新法施行直前から、「仕事がキャンセルになった」「撮影中止」というAV女優らの悲鳴が、万単位のフォロワーを通じてツイッター上に拡がり、さらには立法に関わった議員の失言も相まって、「AV新法=悪法」というイメージが施行直後には定着した。
施行日の23日には前述の「AV新法」がトレンド入りし、どの声も批判をする内容である。新法擁護の声はすぐ埋もれてしまうのか全く見なかった。
検察庁法案廃止では「#検察庁法改正案に抗議します」のハッシュタグが旗となり、大きな動きになったのだから、新法廃止にするのならハッシュタグが必要だと考え、ギリギリ仲の良かった?月島さくら氏に何か作れと頼んだところ、「#AV新法の廃止を望みます」のワードが産まれたのである。
同タグは数時間後にはトレンド入りし、恐らくは国としても無視出来ない規模・内容となっているうえ、折しも参院選のただ中であり、この声に便乗して票に繋げれば、という計算から、新法廃止を訴える候補者が出てくれば、非常に面白い展開になると思う。
もっとも、セックスワーカーに理解のある要友紀子候補者は、AV業界からも期待されているようで、AV新法に関係するツイートでは、彼女を推す声はよく目にするところだ。
ハッシュタグを考案した月島氏は、新法施行前からこの制度を疑問視していた人で、ずっと反対の声を上げていたのだから、タグを考案したことで旗振り役となってしまったものの、最も適任なのだとは思う。新法をスピード廃止に追い込むには、器量や胆力としては過ぎるほどだ。
ちなみに月島氏は、参議院本会議でAV新法に対し唯一反対していたNHK党から出馬のオファーを受け、しかし辞退していたらしい。

さてツイッターではもう一つ、具体的な動きが出てきている。署名による新法の縮小だ。

再掲

署名は附則4条の検討を求め、必要な措置に繋げる運動である。新法を縮小する能動的なアクションとしては最も早い方法と言えるだろう。

相談機関を利用

新法17条には相談体制についての規定がある。

AV出演の被害者を想定したと思われるが、新法によりメーカーに撮影を先延ばしにされて収入が得にくくなり貧困になった、という女優の被害も当然にありうるので、”AVへの出演機会が減らされる被害”も、「出演に係る被害の発生及び拡大の防止」のために相談をして良い内容である。

恐らくは新法の成果をアピールするためにデータを得ようとしているのであろうが、「新法による被害」を内容とする相談が増えれば、新法の成果どころか目的とは逆の効果にしかならない事が鮮明になり、先の附則4条の検討の際には、法律の縮小に繋がりうるのだと思う。

相談体制の整備の条文に合わせるかのように、文科省は大学などに相談窓口を設置するように通知したようだ。

文部科学省は近く、全国の大学などに対して性犯罪や性暴力被害者のための「ワンストップ支援センター」など学生が被害にあった場合の相談窓口について通知する方針です。

新法により収入が減った女優諸氏は、是非とも相談窓口を活用して、いかにこの法律が不合理であるかを訴えて欲しい。

追認

最後に追認について書いてみたいと思う。これは解釈が必要なので直ちに使えるとは限らない。
追認とは、瑕疵があり取消しうる契約内容を、確定的に有効なものとして認める行為である。例えば未成年者の契約は(旧法では)無効であるが、法定相続人が追認をする事で有効な契約とする事が出来る。

民法20条

そもそもAV新法は、民法改正で未成年者取消権が引き下げられる代わりに制定されたもので、その代わりの条文として対応している条文が熟慮期間の定めである。立法趣旨は以下。

第208回国会 衆議院 内閣委員会 第26号 令和4年5月25日

被害者はAV女優として想定しているが、AV女優は判断力が乏しく、未成年者以上に手厚く保護しなければ自立できないと扱っているようでもある。

未成年者取消権と同じ趣旨なのだから、追認があって然るべきだろう。この場合、追認権者は契約者本人と言う事になる(未成年者の場合は法定代理人)。民法では1ヶ月以上の期間を定めてその間に追認を催告出来るので、新法もそのように対応するべきだろう。契約と追認による二重の意思確認が行われるのだから、新法で想定している被害の抑制としては充分に機能するはずである。

追認の制度は、取消しうる瑕疵ある契約により、不安定となる相手方の法的地位を早期に解消するためにある。新法による熟慮期間の定めは、期間が絶対的に定められており短縮出来ず、メーカーは長期に渡り法的地位が不安定のままになってしまう。また、女優にとっても期間が経過しないと仕事にならず、お互いの意思が合致していても新法のせいで契約内容の実現が阻害されるという異常な事態になっており、経済性から見ても不合理と言わざるを得ない。新法では追認の制度も盛り込むべきである。

熟慮期間の違反については罰則はないのだから、自主ルールで追認をしたと言い張る事は出来るが、追認を有効なものとして主張するためには解釈が必要であり、相当な腕力がないと難しいかもしれない。

民法では取消しについて追認が認められており、新法では「解除」となっているので追認にそぐわないと思われるが、新法の解除は実質的に取消しと同じ内容であり、追認が認められるケースであるとは思う。なぜ「解除」としたのかは、おそらく原状回復の条文に対応するためだと思われる。

以上、考えられる限りの「AV新法の潰し方」を紹介してみた。AV新法のあるべき形もこれで見えてくるかもしれない。新法撤廃までいかずとも、誰もが歓迎出来る、AVへの健全な規制になれれば良いと思う。

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