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その4:絵画小説 誘惑(1)

前置き
著作権が切れた文献を無料公開している「国立国会図書館デジタルコレクション」。10年以上以前、近代デジタルライブラリ—時代からウォッチしている私が、何の専門知識もなくご紹介しております。
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「絵画小説 誘惑」千葉春村 大正7年
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/909023

婦人向け文芸誌「婦女界」で連載されてたっていうし、「誘惑」なんてタイトルだし、昼下がりの団地妻的なものを期待してたんですけどね、も全然、いや、確かに美人妻が炭鉱王に狙われる話なんですが、寸でのところで危機をすり抜けちゃうっていうか、むしろ炭鉱王もっとしっかりしろ!炭鉱王、金に物言わせて男を見せろ!、ってなんかいつの間にか炭鉱王を応援しちゃってるそんな「誘惑」、ところどころ拾い読みしつつあらすじをご紹介します。

あ、ちなみに冒頭に「同誌三十萬の読者の皆様に」ってありますが、婦女界の発行部数は5万部だったそうです。盛りすぎです。

何だかよくわからない研究職の夫の稼ぎでは暮らしもままならず、新聞広告で求人を探す美人妻・千代子。

就職面接に行こうとした矢先に家へ訪ねてきた異母妹・俊子。俊子はセレブ実業家に嫁いだため豪奢なくらしをしており、千代子にさんざん自慢していくのだった。
「姉さん、私のところへ来て頂戴な、何でもおごつてよ」

千代子なんだかんだで事務職を得る。美人って得。みんな親切。ラッキー。

何の前置きも説明もなく唐突に鉱山王の邸宅にいる千代子。一体何しに行ったんだ。どえらい美人の千代子を一目で気に入る鉱山王。

兼ねてより子飼いにしていた貿易会社社長・多澤勇助に、千代子をモノにするべく相談する鉱山王。しかし「春田千代子」という名前を聞いて驚く多澤。「春田千代子…あれ?義姉さんじゃね!?」そう、多澤勇助の妻は先に登場した千代子の異母妹、俊子だったのだ!

多澤勇助「ちょ、鉱山王が義姉さん気にいっちゃったんだけど、どうにかなんない?ここでうまいことやったら俺、鉱山王第二世になれんだけど!」
多澤俊子「あらやだそれなら私はクイーンだわね!大丈夫よまかせておいて!お金次第でなんとでもなるわよ
いいよいいよもっとやれ

突然多澤家へ呼び出される千代子の夫、信次。てっきり千代子を働かせている事を怒られるのかと思いきや、「兄さん、僕が金出すからヨーロッパへ留学しない?その間、千代子義姉さんの面倒も見るじゃん!」と唐突に援助の話。人が良い信次は疑うこともなくウキウキ。

千代子の心配をよそにあっけなくヨーロッパへ行ってしまう信次。と同時に千代子、突然の解雇。そう、すべては多澤が裏から手をまわしていたのだった!もちろん千代子は知る由もない。
「義姉さん、クビになったんなら鉱山王のところで働きなよ!今だから言うけど、義兄さんの渡航費だって鉱山王が出したんだよ!」と、迫る多澤。

ちょ、思ったより長いので次回へ続きます。
次回千代子、絶体絶命!

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