見出し画像

2002年からの武術エッセイ

円を巡る・・・・・。
円を巡る・・・・・・。
円を巡る・・・・・・・・・。

隙なく、眼前の敵と闘いながら、自分の思いが円のなかに映し出されるのを待つ。
やがて円のなかにスクリーンが現れ、とがめることもなく、恥らうこともなく、いやなことでも、辛い思い出も、悩んでることも、これからのことでもぜ~~~~~んぶそのまま見つめて、それらを捕まえようと思うこともなく、消そうと思うこともなく、学ぼうとか、何かを期待しようなんてことも思わないで、ただただ現れては消えるものを見ている。

やがて、それらは腎にとりこまれ、背中を通して、前手の人差し指と中指から天に向かって昇っていく。
いくつもの思いが、指先から天に昇っていく。

この稽古を終えても、いやなことは容赦なくわが身にふりかかり、不安、心配、劣等感、ふがいなさ、悲しさは、消えてなくなることはない。
しかし、それらの負の感情は、知らず知らすのうちにわが身の負担と感じなくなる。
生きている以上は、当然のことだと、なんの気負いもなく感じられる。
そしてそれを乗り越えていくのが当然なんだと思えてくる。

武術は、確かに現代の無用の長物かもしれないが、わたしとしては、こんなことでけっこう重宝しているのです。

八卦掌好!

2005年9月記す。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?