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DJ初挑戦③ いざ本番、立て続けに8曲

 1月23日(土)はどんより曇って底冷えの一日。夕方から雪が降って、東京都心でもうっすら積もるかも、なんて言われておりましたが、結局おしめり程度でしたね、東京は。
 夕方にひとっ風呂浴びて仮眠をとってから、貸切状態の上りバスで出発。バスから電車に乗り換える駅前で天丼を食い、いざ神田へ。宵の口なら客引きも多そうな“日銀通り”も、22時を過ぎると人影もまばら。あるいは雪の予報で出足が鈍いのか、早々に切り上げたのか……

 そんな日銀通りの途中、ずいぶん年季の入ったビルの地下に、Cafe&Bar Extraweltがありました。静まり返った路地に漏れてくる音楽の源をたどるように、雑居ビルの階段をおそるおそる降りて行きます。

 押すのか引くのかちょっと分かりにくいドアをそっと開けると、終電まで時間があるせいか、なかなかの人口密度。グリーンカレーの香りがただようカウンターで入場料を支払っていたら、そのカレーを食べていたのが、私をDJに誘ってくれたRさんでした。お店のマスターと、今夜のパーティーの主催者の方にご挨拶して、1杯目のビールを飲みつつ、しばらくはスピーカーから次々に流れ出るビートに身を任せます。自宅などで普段聴いている音量にくらべればかなりのボリュームですが、耳鳴りしそうな爆音ではなく、耳への負担が少ない、居心地のよい大音量。

 今宵のイベントは題して「JKないとSP vol.38」。日本語・ハングルの楽曲限定ということで「Japanese+Korean=JK」なんだそうです。夕方6時から翌朝5時までの11時間を30分ずつ区切って、出演DJは総勢20名以上。次から次へと繰り出される楽曲の多彩さも見事ですが、つなぎ方もまた見事。実際にどんな動作をしているのか遠目にチラチラ見ようかと思ったものの、ブースの天板に角度がついていて、ブースによっぽど近づかないとDJさんの手元は見えません。
 意を決して、身の丈ほどのスピーカーにくっつくように立ち、ブースを覗き込んでみます。CDJが上段に左右2台、下段中央にミキサー、それを左右に挟むアナログのターンテーブル2台。CDJの間にすべり止めゴムマットがひいてあり、流しているレコードのジャケットをマット上に出して見せているようです。

 私の出番は25:30(深夜1時半)からの30分間。その直前の30分間をRさんが受け持つので、立ち食いそば屋のカウンターで食べる客みたいに、遠慮なく近いところで見学します。……ブースに入ると、スピーカーの裏側にあたるので、フロアで聴くより音量は抑えめなのですね。曲の頭出しのとき、ヘッドホンの外と中とで音を聞き分けよう、ってどこかに書いてありましたが、周りがうるさくて頭出しができないってことはなさそうで、一安心。

 音の空白を作らないように、左右2台のCDJから交互に楽曲を流しています。直前のDJさんが最後の曲を流し始めたら、もう一方のCDJを空けてもらい、自分のCDをセットします。ヘッドホンをミキサーにつないで、頭出しのチェック。
 ……いやぁー、CDJの何がすごいかって、CDを入れて何曲目かを選ぶだけで曲の最初の瞬間を自動検出してくれること! 各トラックの冒頭に入る数秒の無音を考えなくて済む!! あとは前の曲を聴きながら、次の曲を出したい瞬間に再生ボタンを押せば、即始まる!!! らくちん!!!!(曲の途中から使いたいときは、自分で頭出しポイントを探して決めなきゃいけませんけれども)


 1. Negicco『トリプル!WONDERLAND』

唄い出しが「今から始めるよPARTY ビートに乗せてRide On」ということで、ビートを効かせた華やかな幕開けをNegiccoに飾っていただきました。『ときめきのヘッドライナー』をきっかけにNegiccoを最近聴き始めたんですが、曲がいいですねえ。

 2. 松平健『マツケンマンボ』

今回のセットリストに、どうしても河内音頭か江州音頭を入れたくて、でも何の脈絡もなく音頭を流すのは支離滅裂かなと思いまして、“和もの”でワンクッション入れました。マツケンといえば『マツケンサンバⅡ』が有名ですけど、曲調が明るすぎて夜っぽくないので、『サンバⅠ』と『マンボ』を天秤にかけて、『マンボ』にしてみました。

 3. 椿 秀春『ディスコ河内音頭』

前項にも書いたとおり、河内音頭か江州音頭のどちらか片方を、あわよくば両方入れたいな……と企みまして、上の写真の『続・続々 カワチモンド』という河内音頭と江州音頭のオードブルみたいなCDを何べんも聴き返してあれこれ悩んだのですが、2枚組み36曲の中で最もクラブっぽいということで、1979年のダンスシーン(?)からお送りしました。DJに誘ってくれたRさんは「30分ずっと音頭でつなぐのかと思ってた」んだそうで、今回は期待を裏切ってしまいましたが、『ディスコ河内音頭』にフロアの反応は上々。

……後の出番のDJさんも気に留めてくださったようで、何よりです。

 4. ハックガールズ「おしえて! 恋のプロトコル」

リアル脱出ゲームでお馴染みのSCRAPが手掛けた“謎解きアイドル”「パズルガールズ」のメンバーにITエンジニアが2人もいて、内部ユニット「ハックガールズ」を結成。“週末音楽家”CHEEBOW氏の「プログラミングできるアイドルをプロデュースしたい」というツイートを目ざとく見つけて、ハッカソンで歌詞をまとめ上げて、出来上がった曲をGithubで配布(無料)という、ずいぶん洒落がきいてるプロジェクト。アニソンっぽい音色、アイドルらしくシンコペーション主体のリズム、そして歌詞は「徹夜続き」「残業」「冗長化」「涙でにじんだモニタ」などリアリズム満点なのです。……web連載を持ってるアイドルはいくらでもいるでしょうが、技術評論社のサイトで「ゼロから学ぶGit講座」という絞り込んだテーマの連載を担当するアイドルは、後にも先にもハックガールズだけだと思います。

 5. 林原めぐみ「Tokyo Boogie Night」

1992年のアルバム「WHATEVER」より。直前の『おしえて!恋のプロトコル』のサビとキーの高さもテンポの速さも一緒で、しかもこちらのサビもシンコペーションという、共通点が多い2曲のリレーであります。DJの受け持ち時間が土曜深夜1:30~2:00ということで、冒頭に「午前2時」という歌詞が出てくるこの曲を入れてみました。また、この曲名から番組名をとったラジオ番組「林原めぐみのTokyo Boogie Night」は、1992年の開始当初は土曜深夜2:00スタートだったというのも選曲理由ですが、……さすがにそこまでお気付きの方はいないかな。

 6. ゴスペラーズ「靴は履いたまま」

有名どころからゴスペラーズを入れてみました。「最高の夜にしよう 朝が来るまで騒ごう」とサビの歌詞にもあることですし、夜遊びにうってつけかなと。……このサビの部分をスキャットにしたバージョンが、「ニュースステーション」のテーマ曲として使われていましたので、ひょっとしたら聞き覚えがあるかもしれませんね。

 7. 坂井美唯子「MIDNIGHT PARTY」

縦長のジャケット、8cmシングル。懐かしいですねぇー。1994年の曲ですが、流してみたら評判よかったですよ。今回の目玉商品でございます。
TBSラジオで次代のアイドル・女優・歌手を育成しようというプロジェクト「シンデレラ・ドリーム」というのがありまして、オーディションで選抜された女の子が「ミッドナイト★パーティー」という深夜番組に出演しておりました。十数名いた“シンデレラ”の中で最初にCDデビューを勝ち取ったのが、愛知県出身の坂井美唯子(みいこ)さん。シングルを3枚出し、ラジオやテレビにも出ていましたが、1996年春に活動休止。唄もうまいし喋りも立つのに、惜しいなぁー。……ちなみに「シンデレラ・ドリーム」出身者にはほかに、多摩川のアザラシにタマちゃんと名付けた黒住祐子さんや、TOKYO FMでプロデューサーをやってる松任谷玉子さん、小説家の橋口いくよさんなどがいらっしゃいます。

 8. Perfume「NIGHT FLIGHT」

選曲で数日間悩んでる間、Perfume限定でやろうかな……と思ってしまうくらい、Perfumeの楽曲はDJ初心者にも使いやすいイメージがあります。でもDJさんが20名ぐらい出る中で誰かとかぶってしまいそうで、今回はこの1曲にとどめましたが、私が聞いてた限り(22時以降)ではPerfumeを使ってた人はいらっしゃらなかったような気がします。季節柄『チョコレイト・ディスコ』も考えたものの、やはり夜中の高揚感というテーマからして『NIGHT FLIGHT』かな、と。そこそこ有名ですしテンポもいいし、フェードインで始まるからつなぎやすいし。


 ……と、ここまででちょうど30分の持ち時間、つつがなく全8曲つながりまして、無事にお後と交替となりました。

 事前にあれこれ調べておいたおかげで、機材をすんなり扱うことができました。最初にRさんに言われた「再生ボタンさえ押せればOK」はほぼそのとおりだなという印象で、微調整しながら余裕を持ってDJに臨めました。私の隣につきっきりで居るつもりだったというRさんも、二言三言アドバイスをくださる程度で、あとはおおむね任せてくださいましたし、「7月にはみんな浴衣を着て集まるから、その時は東雲さんも浴衣でDJして、河内音頭をたくさん流してよ」と、妙なところを見込まれてしまいました。

 あー、楽しかった!

 月1回の当イベント、7月の浴衣回も喜んで(河内音頭と江州音頭ばっかりで)参加させていただきますし、あわよくばその前に二度目を……

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