「死兆星」と北斗の拳と名曲が生まれる可能性の話
「音楽はネタ切れなので新しい音楽は生まれない」などと勘違いしたあなたにとっては、死兆星が見えてるようなものなわけです。死兆星というのは北斗七星のミザールの横にくっついてるアルコルのことです。まだ北斗の拳を読んだことない人には大変残念なネタバレになってしまいますが、こういう感じのことです。
ちょっと雑に言えば北斗の拳はこれが見えちゃったら死ぬとか死なないとか、見えなくなったらセーフとかいうのがちょっとしたテーマになってます。ちょっと雑に言えばです。
名曲が名曲たる要素=メロディ
それはおいといて、名曲が名曲たる要素のほとんどは、作曲者が最も聴かせたい部分の音符によるものです。その部分ってのは歌モノならほぼサビの歌のところを意味しますが、歌モノであっても、作曲者にとって聴かせたいのが歌ではなくリフである場合もあります。
エリック・クラプトンの「Layla」だとか、マイケル・ジャクソンの「beat it」なんかはサビメロよりもリフの方を覚えてる人のほうが多いのでは。 そんでもって、そういうのは言うまでもなく音符の順番によって実現されるわけですが、それを人はメロディ(旋律)と呼ぶわけです。
ところで、ひとつの音符には「音の高さ(音高)」と「音の長さ(音価)」という2つの情報が含まれています。
絶対音名(実音名)、キーやスケール、休符などのことを無視すれば、
音の高さ→前の音から見たときの次の音の音程
音の長さ→前の音の発音時点から次の音の発音時点までの長さ
と省略的な定義をすることができます。
ひとつの音符にこれらふたつの情報が含まれているわけですから、複数の音符による順番すなわちメロディには、「ひとつの音符が持てる情報」を、「音符の数」だけ累乗しただけの情報が含まれることになるわけです。
ですから、
「メロディの組み合わせ数」=「ひとつの音符がもてる情報」の「音符の数」乗
という等式が成り立つわけです。10の10乗は100億です。
メロディの組み合わせ数と名曲が生まれる可能性
さきほど、絶対音名(実音名)、キーやスケール、休符などのことを無視した
音の高さ→前の音から見たときの次の音の「音程」
音の長さ→前の音から次の音までの「発音時点の間隔」
という省略的定義を持ち出しました。
もし仮にひとつの音符があって、次の音符は、ある一定の限られた高さと長さをとらなければ名曲にはならないと言われちゃったらどうしましょう。このことを「ひとつひとつの音符に、名曲となるために理想の音高と音価の範囲がある」という何かしらの理論がある、と言い換えてもいいです。
そうした範囲を決める理論についての細かい定義は放っておくとして、その限られた組み合わせの数が、各音符について音高で3通り、音価で3通り、都合で9通りあるとします。本当はもっと多いはずですが、その沢山の中からベスト3×ベスト3を選んでるようなものと考えていいです。
そんでもって歌モノのサビのメロディってのはだいたい30音以上でできてます。そのうち、半分くらいは繰り返しによってダブるので、そうしたダブってる音符の数を差し引いて数えると、歌モノの作曲者ってのは15コ以上の音符を用いてサビのメロディを作曲してると簡単に見積もることができます。
そしたら9の15乗=205,891,132,094,649通り以上の名曲となりうるサビメロの組み合わせ数があるわけです。歌モノのサビのメロディだけに限った話で200兆通り以上が考えられるのです。当然、それに限らないありとあらゆる音楽の総体というものを考えれば、それよりも遥かに多くなるはずです。
肉眼で見える星は8,600コ、銀河の星は2,000億コ
非常に限られた種類のメロディだけ考えても星の数よりも遥かに多いです。だから新しく名曲を作るのは新たな星を探すよりも遥かに簡単で、新しい星を探し尽くすよりも遥かに難しいってことがこういう単純な見積もりだけで言えるわけです。
だから音楽はネタ切れって思ってる人は似たような場所にある2つの星を見て「似たような場所にあるね〜」って言ってるようなものなんです。死兆星を見てるのと同然で、つまるところお前はもう死んでいるなのです。
冒頭の謎掛けが非常に華麗に繋がりましたね。すごいテクニックだぁ…!
今までに生まれてきて死んだ人間の総数は1,100億人と言われています。そして史上最も多くの楽曲を世に出した作曲家で6,000曲です。
もし仮に1,100億人のうちの300億人が作曲家だとして、各人がそれぞれ生涯に6,000曲発表してようやく180兆曲になります。これは馬鹿馬鹿しくなるくらい大げさな計算です。
サブスクで月額ウン百円払えば誰でも聴ける楽曲とyoutubeなんかで無料で聴ける楽曲をすべて合わせてだいたい5,000万から6,000万曲と言われてて、それに楽譜やレコーディングが公式に記録として残されている楽曲なんかを含めても、全人類が作ってきた音楽は遥かに低い見積もりである200兆にすら遥か遠く及ばないのが現実です。
そういうわけなので、安心して曲を作りましょう。
ネタ切れは貴方がこれから耳にする音楽の問題なのであって、全人類がこれから耳にする音楽の問題ではありません。
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