『テミスの剣』感想

冤罪。隠蔽する組織。

法を行使する人間はその力を不当に扱ってはならないということが再認識できる作品でした。

本作では様々な権力をもつ人間たちがその力を悪用します。

無実の人間のために証拠をでっちあげる刑事。
保身のために隠蔽しようとする警察や検事。
等々…

都内某所の不動産屋で強盗殺人が発生。
新人刑事の渡瀬は上司の鳴海と共に捜査を行うことになる。

無実の人間を証拠をなどをでっちあげて容疑者に仕立て上げる描写が生々しくて胸糞が悪い。
そして鳴海というキャラクターが個人的には好きではないが嫌いにもなれない不思議な魅力のある人物だと感じた。
犯人逮捕の為なら卑怯な手段を問わない鳴海。
作中では決定的な証拠として血濡れのジャケットを発見したと報告をするがこれも鳴海が捏造したもの。

これについて渡瀬に追求させられるも最後のちょっとした演出のためだということで一切悪びれる様子もない。

また真犯人が逮捕されたことを報告してもその真犯人が嘘を付いているといって全く持って謝罪の言葉を述べない。

客観的に見れば鳴海はクソ野郎だと思う。
取り調べでは嘘ついたり暴力を振るったり、そして極めつけは証拠捏造。
真犯人が逮捕されたと聞いても嘘を付いている。俺は間違っていないという。

ただ鳴海は権力や出世のためにそういうことをしたのかというと違うんですよね。本当に犯人を逮捕してやるという狂気じみた執念がこのような悲劇を生み起こしたんです。

本当にクソ野郎なんですが、このストイックさだけはどうにも憎めませんでした。最悪だけど。

そして法を行使する職業に就く人たちも一人の人間なんだなぁと(当然だけど)思いました。





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