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『殺戮にいたる病』を読んだ感想

読んだきっかけ

私が好きな『かまいたちの夜』のシナリオ担当である我孫子武丸氏の小説ということもあり読んでみようと思ったのがきっかけ。

感想

これが…叙述トリックかッ!!!!
と普段から小説を読まない私にとって頭をガツンと殴られたような衝撃的な作品だった。

たった一行でそれまで信じていたものがひっくり返る仕掛けには脱帽した。

本作は死んだ女性しか愛せない女性連続殺人犯の蒲生稔とその母親の蒲生雅子。そして被害者の1人と接点のあった元刑事の樋口の3人の視点から物語は進行されていく。

稔視点ではその常軌を逸した死んだ女性への執念。そして殺害に至るまでの過程。殺害後の死体との交わりの描写などが非常に生々しい。

雅子視点では巷を騒がせている連続女性殺人鬼が稔ではないかと疑い始めた苦悩やこちらも少し狂っているとしか思えない息子への思いが特徴的なパート。加害者家族からの視点の作品はこれまであまり読んだことがなかったので新鮮で面白かった。

樋口視点では殺された側の遺族の描写が特徴的。残された者の苦悩や悲しみが元刑事だった樋口の視点から描写される。そして樋口を被害者家族が手を組み、手がかりを経て徐々に殺人鬼である稔へ近づいていく捜査パートが面白い。

常に3人の視点が定期的に変わりながら物語が進んでいくため少し群像的な側面もあるため読んでいて飽きがこない。
もし稔だけの視点だったら…読むのはかなり辛いと思う。

最後の一言について(ネタばれあり)

物語終盤。稔の殺害現場へと駆けつける樋口と雅子。
そこには樋口の見知らぬ男が死んでいてどうやら稔は逃げた模様。

しかしその死んだ男を見た雅子はこれは息子だと喚き散らかす。ここで読者の疑問はピークに達する。息子は稔では…と。しかし直前から雅子の精神状態が徐々に狂い始めていたことが描写されていたので気でも狂ったのか?と半ば強引に納得していたが問題はこの後の描写。

色々あり稔が本当に愛していたのは母親だったことが判明。その母と交わるべく自宅へ戻る。
そして樋口と雅子も稔の自宅へ戻るが….

そこには初老の女性と交わる稔がいたが雅子が一言
「ああ!お義母になんてことを!!」
そして物語は幕を閉じる。

つまり今まで雅子の息子だと思っていた稔は息子ではなく夫だったのだ。
稔=父親
ということ。

振り返ると気になるような描写も少なからずあった。
稔をおじ様と呼ぶ被害者少女や恐らく30代だと発言する稔を目撃したバーテンダーなど。

しかしそういった違和感も元刑事の樋口が「目撃者の証言はあまり信用してはいけいない」とか「5、6歳前後の差はあるだろう」といった発言等で上手く煙に巻かれていた。

なにより殺害や凌辱シーンが非常に生々しく陰惨でそういった違和感に気に掛けることができなかったことも騙された原因の一つだったように思う。



いやぁ…面白かった。
叙述トリック面白いですね。しばらくは小説にハマりそう。
次は何を読もうかなぁ。




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