煽り運転で死ぬかと思った日の話。

ヒトの思い出には「死んでも忘れたくない」ものと「一刻も早く忘れてしまいたいもの」の2種類がある。

今日は寄りによって後者の方の思い出を書いてみようと思う。
とはいえ、この出来事から3カ月くらい経っちゃってるという事実。
(忘れてしまってたんやん!!笑)
でもね、今後の教訓も兼ねて書こう書こうとはずーっと思っていた出来事。

タイトルの通り、私は煽り運転に遭遇した。死ぬかと思った。
ニュースでたまに出てくる動画の通りの恐ろしい目に遭った。
動画と違かったのは、運転手が車から降りて来なかったことだけ。
それ以外はだいたいあんな感じだった。
今思い出しても胃がギューッと痛くなるけど、冷静に考えると、あの状況で車から降りて来なかったってことは、あのオラオラ系のお兄さんはもしかしたらめっちゃいいヒトだったんじゃないか?なんて感情が完全にバグってくる。

あの日は自宅最寄りのコンビニに用事があった。
今にして思い起こせばしょーもない用事だった。
某SNSでポチポチリツイートして、ラッキーなヒトには〇〇がその場で当たりまっせ!っていうアレですわ。
ポチポチしてたらビールが当たった。ラッキーガール(ガール??)は迷わず受け取りコンビニをポチっとし、意気揚々とビールを頂きに参上した。

ちなみにこの最寄りのコンビニ。
8割以上の確率でほしいものが手に入らないという、コンビニエンスの意味を言うてみぃ!!と言いたくなるような店なのである。
この日も予想を裏切ることなく、ラッキーガールが当選した銘柄のビールは置いていなかった。

歩いて来ていたら諦めていたのかもしれない。
でもこの日は車で来ていた。
ラッキーガールは一寸たりとも迷わずに、ちょっと離れた系列のコンビニへ車を走らせた。
これが悲劇の始まりだとも知らずに。
バーコードを提示するだけでお目当てのビールを手に入れたラッキーガールは、意気揚々と駐車場から出発した。

田舎なれど車通りは多い道路である。
確実に言えるのは「私が確認した時点では」車はなかった。
本線に合流した瞬間、

プップーーーーーーーー!!!!!!!!!!!

けたたましいクラクションが後方から鳴り響いた。
え???何事???とバックミラーを確認した。
黒いワンボックスカーが私のすぐ後ろにいた。
運転しているのは強面(に見えた)おにいさん。
明らかにそのクラクションと怒りの矛先は私だ。

あの一瞬でこの距離につけるなんて、一体どんなスピードで走ってきたんだよ・・・という気持ちよりも、こういう時って自分に非はないと分かっていてもひたすら「ああ私が悪いんだ」って思ってしまうものである。

ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい

念仏のようにごめんなさいを繰り返した。
血管が逆流するんじゃないかってくらいに心臓はバクバクだった。
そんな中でも冷静になろうと努めた。
事故でもないのに片側1車線の上で車を停める訳にはいかんだろうと思い、流れに沿ってそのまま運転を続けた。
それが良くなかったのだろうか。
明らかに私の車を煽ってきたのだ。

ワンボックスカーは時に蛇行を切りながら、車間距離なんてほぼゼロじゃないかってくらいに詰めてきた。
まさしく、ニュースで観た動画のソレである。

このまま前へ入られたらきっと止められる。
「おいコラ開けろよ」とでも言いながら、運転手は激しく運転席側のドアを叩いたりするのだろうか。
カギは絶対に開けてはならない。確認。大丈夫、閉まってる。
ドラレコは・・・こんな時に限って「メモリーが一杯です。フォーマットしてください」的な表示が出ていた。
自動でフォーマットしてくれない安いヤツをつけていたことを、これほど後悔したことはない。
これじゃ証拠が録画されてないじゃないか・・・。

幸いなことに、次の信号まではかなり距離のある田舎道だった。
信号で止まったら最後だ。
何とかそこまで前へは入れないように走ろう。

バックミラーに映る鬼の形相(に見えた)おにいさん。
ガンガン煽り続けるおにいさん。
どうかどうか気が済むまで煽っていただいて結構です。
だからお願い。
虫が良すぎるお願いなのは重々承知してるけど、このまま家に帰らせてください。
神様仏様、天国のお父さん。
どうかどうか、このアホな娘をお守りください・・・。

そんな願いは次の瞬間に空しく打ち砕かれた。
ちょっとの隙をぬって、ワンボックスカーは私の車の前に入ってきたのだ。

キキーーーーーーーーーーッッ!!!!!!!!
急ブレーキが踏まれた。
危ない!!!!!!!!
私も必死にブレーキを踏んだ。
とっさの出来事にあんなに俊敏に対応できたあの日の自分にアッパレと言いたい。

いよいよだ。
想像していた通りのストーリーが展開されるんだ。
車、ボコボコにされるわな。
いや、私もボコボコにされるわな。
タダのビールを貰いに行ったばっかりに。
タダより怖いものはない。昔の人はよく言ったものである。
もうポチポチ辞めよう。何ならSNSも辞めよう。
いや、その前に命ないかもしれん。

お父さん、私そちらへ行くのが急遽早まるかも知れないよ。
ここが私の墓場となるんだ。
夫よ、子ども達よ、愛すべき友人達よ。
産んでくれた母よ、優しかった姉よ。
みんな、みんな・・・
しょーもない死にざまでごめん!!!!!!

時間にして数十秒。
いや、もっと短かかったのかもしれないけど、永遠よりも長く感じた。
私の頭の中はフル回転で「恐怖」「後悔」あと何だっけ??
ドラえもんよ、今すぐどこでもドアを我に与えたまえ。
もう目なんて開けていられなかった。

アクセルを思いきり踏み込む音がした。
目を開く。
目の前のワンボックスカーが進んでいた。
降りて来なかったんだ。
命拾いした。
きっと「てめーさっき俺にこういうことをしたんだぞ!!!」という戒めのアクションだったのだろう。(煽ってはいないけどね)
意外と優しいお兄さんだったんだろうか。
いやいや、本当に優しいヒトなら猛スピードで田舎道を走らないだろうし、煽り運転なんてするもんか。
簡単に信じちゃいけないと、その昔山本リンダもそう宣っておっただろうに。

このまま進んだら確実に信号で止まるよな。
そこでまた降りて来るかもしれない。
そしたらもう絶対に逃げられない。
車、ボコボコにされるわな(以下略)

ふと進行方向を見る。
信号の手前に、たぶんその地域の方が使うであろう細い一本道があった。
ココへ逃げよう。
出来るだけゆっくり信号手前でそのまま進むかのように見せかけて、ワンボックスが止まった瞬間にその道へ右折するんだ。

おかしいほど冷静に、私はそのタイミングを計り続けた。
信号が赤に変わる。ワンボックスが止まる。今だ!!!!!

お兄さんがミラーで私を確認してたかどうかなんて知らない。
でも一刻も早く距離を取りたかった。
右折し、知らない道をただひたすらまっすぐに走る。
間違ってもあの道路と交わらないことを祈りつつ。

追いかけて来ないことを確認し、ひとまず路肩に車を停めた。
遥かかなたにワンボックスカーが消えていった。
助かった。
生きてる私。
浅かった呼吸を整え深呼吸。
涙が頬を伝っていた。
運転歴30年の中で、確実に一番怖い経験であった。

運転歴30年といえば、つい先日、無事故無違反を貫いてきた私は30年目にして初めてスピード違反で捕まった。
義母をクリニックへ送る途中。自宅からわずか数百メートルの、庭先のようなところで。

もちろん私が100パーセント悪い。うかつにもほどがある。
でも、ケーサツの方に一言言いたい。

こんなとこ誰も40キロでなんて走らねーよってとこにネズミ捕りを仕掛けてないでさ・・・
私を煽った人も捕まえてくれませんかね。
マジで死ぬかと思ったんだから!!!!!





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