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読書感想 ダニエル・キイスさん『アルジャーノンに花束を』

 Kindle版で読みました。Unlimitedに含まれていないので、購入したのですが、その購入日は4年近く前でした。途中まで読んで寝かせていたようです。

 『アルジャーノンに花束を』というタイトルに初めて触れたのは、20年以上前にユースケ・サンタマリアさんと菅野美穂さんが出演されていたドラマでした。
 登場人物の名前も原作そのままではなく日本人の名前になっていて、主人公がパン屋で働いているときの笑顔や研究室での嫌味な表情など、素晴らしい演技だったと記憶しています。
 そもそもそのドラマが気になったのは、小学生か中学生くらいのときにダニエル・キイスさんの『24人のビリー・ミリガン』を読んだことがあったからなのですが、そのことをすっかり忘れていて、今回このnoteを書くにあたり改めて調べて思い出しました。確か、兄が持っていた本だと思うので、手元にはないですが、読み返せたら良いなと思います。

 まず、この本は翻訳をされた小尾芙佐さんの技量というか、工夫というのをとても感じました。チャーリイの拙い、句読点や助詞の使い方もままならない文章から知能が上がるにつれて漢字が増えていく変化や、使う言葉も難しくなっていく様は、大変興味深い表現でした。

 とてもたくさんの方に読まれている名作なので、感想を述べている方も多く、その中の大半の方が、「感動した」や「後半は涙が止まらない」という表現をされています。私は感動や涙はなく、チャーリイはどの瞬間が一番幸せだったのだろうかと考えていました。
 それは、チャーリイが短期間に経験した、①純粋で何も分からない時期②色々なことが出来るようになっていく時期③周りの人達が思っていたほど何かを分かっていた訳ではないことが分かる時期④恋愛を楽しむ時期⑤仕事に打ち込む時期⑥能力が低下していく時期⑦排泄のコントロールもままならなくなる時期というのは、誰しもが幼児期から死に至るまでに経験し得ることなのではないかと思えたからです。
 明確に書かれていないので推測するしかないですが、少なくとも、アルジャーノンという存在に出会えて、認識できることが少なくなってもなお、アルジャーノンの墓に花を供えて欲しいと思えるチャーリイは、何も分からなかった頃のチャーリイより幸せであると言えるでしょう。

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