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あっぱれマーちゃん物語 4

第四話 次元移動

マーちゃんの守役のツナモっちゃんの若かりし頃、「異次元の旅へチャレンジ」という企画に応募したけれど受かりませんでした。しかし、ツナモっちゃんは次元探査船に密航して別次元に行ったことがあったのです。でも、探査船内の安全室に入れず貨物室に隠れて乗り込んだためにとんでもないことになってしまったのでした。

「おっ、しめしめ探査船のエンジンがスタートしたようだぞ」

ツナモっちゃんは期待に胸をふくらませながら発射の瞬間を待っていました。探査船はだんだん光輝き出してきました。始めは青白い光から黄色みをおび、そして赤く光り出しました。光が強くなったその瞬間に探査船の姿が消えてしまいました。探査船の乗員たちは特殊モニターで外部を見ています。眩いばかりの光に包まれたと思われたその瞬間に七色の光がうねうねと輝く空間へと変わりました。乗員たちはその美しさに歓声をあげていました。幻想的なその映像は宇宙が光であるということを物語っているようです。次元の違いは波動の違いで、簡単に言えば光の周波数帯の違いです。六次元から今は五次元へと向かっています。最初に言い忘れましたが、次元移動は住んでいる次元から低い次元へと行くことはできますが、たとへば六次元から七次元以上に行くことはできません。なぜなら、それがルールだからです。さて、ツナモっちゃんはどうしているのでしょう。

「ギャーギャー、うお~~」

おやおや、とても嬉しそうですね。

「うひーーー、ムンクじゃー」

あれ?なんか変です。喜ぶどころか苦しんでいるようです。どうしたのでしょう。

「だれか、たひけてくでー」

搭乗員の人たちは安全にシールドされた部屋にいるのですが、密航したツナモっちゃんはシールドされていない貨物室にいるので、次元の変化をモロに受けてしまっているのでした。エネルギーの歪みに顔も身体も歪んでしまいます。波動が落ちてくるので身体が重く感じられて、だんだん床に這いつくばるように身動きがとれなくなってゆきました。呼吸も苦しくなっていきます。

「もうだめだ~」

薄まる意識の中、後悔と反省と過去の記憶が走馬灯のようにまわっています。そんな時、モニターを見ていた搭乗者たちが歓声をあげています。モニターには五次元の宇宙が映し出されていました。五次元の星であるゴボウ星が現れました。長い尾を引く特徴のある星星がゆらりゆらゆらと浮かんでいます。

「あれ?止まった」

ツナモっちゃんが息を吹き返しました。でも身体がまだ重いです。次元の差にまだ身体が慣れていないのです。

「どこだここは」

ツナモっちゃんがなんとか身体を動かして壁際の小さなモニターを覗きました。そこにはゆらゆらと優雅に移動するゴボウ星団が見えました。

「すげ~五次元だ」

始めて見る五次元世界に感動しています。するとまた虹色の光のゆらめきの中に移ると、ツナモっちゃんは悲鳴を上げてムンクになりました。

「おぇっ、ゲー」

うっ、きたねえ。見ないようにしましょう。でも、少し慣れたのか先程よりはよさげです。

「ううう、さっきよりも苦しい」

おや、違ったようです。そんな七転八倒しているうちに次の次元に到着したようです。でもツナモっちゃんは真っ青な顔で元気がありません。楽になるはずなのに・・・。

「こ、ここはどこだ」

搭乗室はきゃあきゃあと歓声があがっています。いや、ぎゃあぎゃあと悲鳴のようです。モニターには白い衣装の人間らしき者たちがゆらりゆらりと映されています。足がないようにも見えます。遠くの方では炎が赤く空間を染めています。白い衣装の集団が血相を変えて探査船に近づいてきました。物凄い形相の集団は何かに追いかけられているようです。外の音は聞こえませんが阿鼻叫喚が伝わってきます。その集団が探査船にぶつかってきました。

ビチャッ、ベチャッ、グチャッ。

気色悪い音が聞こえそうです。モニターには潰れて脳みそが飛び出した姿が映し出されています。搭乗者たちの悲鳴もいつしか消えて、泡を吹いて床に倒れ込んでいるものや気を失っていました。遠くから赤い顔をした鬼のような怪物がちぎった人の体を振り回しながら追いかけてきます。ツナモっちゃんはと見ると、小さなモニターに映された外の世界を見てとうに気絶していました。

そうです。この次元は四次元、またの名を幽界と言います。三次元で死んだ人たちが彷徨う次元で、ちょうど地獄と呼んでいる場所に次元移動してしまったようです。三次元の欲望が残ったままの人たちは、穏やかな五次元に行けずにこの幽界で彷徨って、恨みや憎しみの炎に焼かれる幻想をいだくのです。

大変な思いをしたツナモっちゃんでしたが、気絶しているうちにもとの六次元にもどっていました。そんな出来事を体験した事をマーちゃんに話して聞かせました。それで次元旅行など諦めると思いきや、爛々と目を輝かせてツナモっちゃんを見ています。

嫌な予感がします。今日はここまで。

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