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君の愛で育ったから これが僕の愛の歌

うわの空さんの記事を拝読して、コメント欄に感想を書いていたのだけれど、どうにもまとまらなくて、自分で記事にすることにしました。記事にすることを了承してくださって、うわの空さん、ありがとうございます。

この記事を読んで、私自身こみ上げるものが大きすぎて、抱えられない気持ちになった。泣きそうになる感じ。その涙は、悲しいとか共感するとか、そういうことだけじゃなくて、悔しいような怒りみたいな気持ちも含まれていて、とても複雑で、うまく言葉にできない感情なんだ。

普段、私はあまり自分の心情を吐露するような記事は書かないことにしているんだけれど、うわの空さんの記事は、やっぱり私の心を揺さぶりすぎて、どこかに吐き出さないと、溢れてしまいそうで、珍しく書くことにした。

その大きな理由はふたつ。

ひとつめは、私が吉井和哉が大好きだということ。うわの空さんは忌野清志郎さんが大好きだそうで、忌野清志郎さんの追悼ライブで吉井さんが歌った曲について書いていらっしゃる。私は忌野清志郎さんのことはあまり詳しくないのだけれど、吉井さんがとても尊敬していた方だというのは知っている。

私は、THE YELLOW MONKEYの曲と吉井和哉の声に支えられて生きてきた。自分の力ではどうしようもない事情を抱えた10代の頃から、良いことも苦しいこともあった時間を一緒に過ごし、40歳になった今でもずっと。そういう存在はとても大きい。

そういえば、吉井さんと忌野清志郎さんがコラボしたTシャツを持っていた。普通に着ていて可愛かったから、とても気にいって着古してしまった。

私が、うわの空さんの記事に揺さぶられた理由のもうひとつは、私が看護師だったからだ。精神科の。

私は、今は仕事を辞めて専業主婦なのだけれど、数年前まで14年間くらい精神科で働いていた。大学病院時代も、個人病院時代も、ずっと精神科だ。希望して配属されて、希望して働き続けた。

だから、認知症の患者様とご家族には、たくさん出会ってきた。そのうえで、うわの空さんが医者に言われたことが、どうしても許せない気持ちになっているのだ。

どの科でも同じだが、精神科は特にご家族の負担が大きい。肉体的精神的負担。患者様はご自分の疾患や障害の理解が難しく、その分ご家族への負担が大きく、悲痛な胸の内をあかしてくださるたくさんのご家族の声を今でも覚えている。だから、精神科の看護の対象は、患者様だけでなくご家族も含まれる。それは看護に限らず、医療全体がそうなのだ。

患者様、ご家族、医者、看護師、コメディカル、地域医療、福祉、施設、それぞれがみんなでチームなのだ。私はそうやって働いてきたし、私のまわりの人たちは、そうやって働いていた。少しでも患者様とご家族の支えになれるように、少しでも患者様とご家族がより良い時間を過ごせるように。

精神科の疾患は完治しないことが多い。寛解はあっても、完治は難しい。だからこそ、患者様とご家族が出来る限り負担なく穏やかで健やかな時間を過ごせるようにすることが、私たち医療の努めだ。

でも、うわの空さんがご経験されたように、ご家族にひどいことを言う医者がいることも事実だ。私はそのことが悔しい。現場を離れてぬくぬくと専業主婦をしている私が言えることじゃないのかもしれない。でも、14年間精神科で働いてきた私は、自分の看護観と医療観を持って働いていた。だからこそ、医者の一言で一生ぬぐえない痛みを与えられるご家族がいらっしゃることを、私は許せない。

私たちは、患者様とご家族のために何かできるわけではない。患者様とご家族がご自分たちで頑張っていらっしゃるのを、ほんの少しだけ寄り添って支えるお手伝いしかできないのだ。何かできると思っていること自体、おこがましいのに、そんな医療が、患者様とご家族を傷付ける。それがどれほど間違ったことか。

どうか、思いやりに欠けた医者の言葉に傷付けられた方がいらしたら、その医者を馬鹿にしてくれ。どうかご自分を責めないでいただきたい。その医者が悪いのだ。あなたたちは悪くない。

患者様やご家族のために一生懸命働く先生たちのことも、私はよく知っている。だから、どうか、馬鹿なひとりの医者に言われたことは、忘れられないかもしれないけれど、あいつが馬鹿だったんだ、私たちは悪くなかった、と思っていただきたい。

そして、同じ医療者として、申し訳ありませんでした。


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自分の記事にしたところで、まとまりがないのは同じでした。感情的な記事になってしまいましたね。ごめんなさい。どうか、今後も増えていくであろう認知症の患者様とそのご家族が、穏やかに健やかに過ごせる社会でありますように。祈っています。

君の愛で育ったから
これが僕の愛の歌
スローモーションで花が散る
たくさんの思い出とともに

「人生の終わり」なんて悲しいタイトルですが、「For Grandmother」というサブタイトルで、吉井さんが心から愛したおばあちゃんを追悼している曲です。悲しいけれど、愛の歌です。

りんこ


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