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『片づけをすると、○○が変わる?』

片づけ取材二日目の朝、ちょっと天気は荒れ模様。

昼過ぎには嵐なると気象予報士が告げていた。

空はどんよりとした雲が覆っている。

駅ロータリーで依頼者のお嫁さん(A子さん)の車を待つ。

「雨、降らないといいですね〜」

空を見上げながら吉田先生に話しかけると、

「そうねえ。でも雨降った方がいいかもね。
ところでリンカさん、片づけをすると意外な変化が起こるのよ」

「え? 何が起こるんですか?」

「フフフ、さあ〜それは終わってからのお楽しみ」

吉田先生が謎めいた笑顔をする。

車がロータリーを回って来た。

「すみませーん、遅くなっちゃって。子供たちが学校行くのモタモタしてて〜」

謝りながらドアを開け、A子さんが降りてきた。

アレレ?

雰囲気がなんか違う。

「髪切りました?」

と聞くと、

「あ、ハイ。久しぶりにバッサリ切っちゃいました。
こんなショートにするの、子供産んだ時以来です〜」

A子さんはちょっと恥ずかしそうに短くなった髪を触る。

初めてあったときはモノに埋もれた部屋を前にして、暗い表情をしていた。

でも、今日は髪が軽くなったせいなのか明るく見える。

「あらあ、ショートカットも似合うじゃない!」

吉田先生がそう言いながら、私にウィンクする。

(え? 何か起こるってこのこと?
片づけを始めると髪が切りたくなるの? )

と思いながらA子さんの車に乗り込む。

車中、今日の予定の打ち合わせをしながら吉田先生がA子さんに、

「どう? 多分あと一回くればお部屋は片づくと思うけど。少しは片づけに抵抗が無くなってきた?」

と問いかけた。

「あ、はい。私ってネガティヴなんでスイッチがなかなか入らないんですよね〜」

とA子さん。

「A子さん、ネガティヴな感じには見えないけど。ねえ、りんかさん」

「ええ、お子さんの学校で役員もしていらっしゃるし、吉田先生の講演会に参加なさってた時も積極的に質問なさってたじゃないですか」

A子さんの思い切りのいい運転に関心しながら吉田先生に応じると、

「現状をわかってても一歩前に出られないタイプなんです。じっとしているのが好きっていうか。でも、吉田先生に手伝って頂いたおかげでお部屋がスッキリしてきて、ホッとしました」

前の車を追い越しながら、A子さんはそう答えた。

「A子さんにとって、片づけってどんなイメージ?」

「もともと苦手だからか、疲れるしダークなイメージでした。今回も一緒にやって頂けたからできましたけど…」

「コツさえ掴めば、片づけられるようになるから大丈夫よ」

「そうですか〜?そんなもんですか?」

自信のない返事をするA子さん。

でもこの日、A子さんの仕分けは前回に比べてずいぶん早くなっていた。

以前はひとつひとつ手に取っては悩んでいたのに、今は迷いがなく見たとたんに仕分けしている。

外は雨が降り出してきた。時折、激しい風がサッシを揺らす。

飼い猫のウニちゃんは外に遊びに行けず、私たちの周りを興味深げにスリスリしながら歩き回っていた。

遊び道具を見つけてはジャレている。

「お部屋広くなってきたから、ウニも楽しいんですかね〜」

A子さんが、ウニちゃんの遊んでいる姿を見ながら微笑んだ。

「A子さんと同じように、親の片づけで困ってる人って実はたくさんいるのよ。これだけの片づけできたんだから、A子さんお仕事できるかもしれないわね。どう? 一緒にやってみる?」

吉田先生の提案に、

「え〜、私がですか? そんな、できますかね〜?」

「できる、できる! A子さんならきっと悩んでいる人たちの気持ちがわかるから」

「考えてみます」

そう応えたA子さんにはもう暗い雰囲気はなかった。

予定していた時間より一時間も早く、その日決めていた作業が終わる。

A子さんは、もう少し片づけを進めようとしたが吉田先生が止める。

「今日決めた分以上はしないこと。一時間早く終わった自分を褒めてあげることが大事なの。でも、すごいわね〜。この調子なら次回もっと早く終わっちゃうわね〜」

「 ありがとうございます! おかげさまで今後の目処が立ってきました」

「あとは、お姑さんのリハビリがしやすいようにお部屋の改造をしないとね」

「そうですね。主人と相談します」

玄関に出ると雨は止み、

さっきまでの嵐が嘘のように綺麗に晴れていた。

帰りの車中、右側後方に茜色の富士山が見える。

「ここいらは地平線の向こうに富士山が見えるんですね〜」

美しい富士山に見惚れながら私が言うと、

「そうなんですよ。実は今日は息子の誕生日なんですけど、あの子が生まれる時も赤い富士山が綺麗に見えてました。私、お嫁に来るまではこの土地あんまり好きじゃなかったんですけど、赤富士見た時にここにお嫁に来たよかったな〜って感動しちゃったのよく覚えてます」

スイスイと運転してるA子さんの横顔が、夕焼けに照らされて眩しく見えた。

なんだかよくわからないけど、A子さんは確かに変わった気がする。

駅に着き、A子さんと別れてから吉田先生がこんなことを言った。

「モノが溜まると淀みができるの。そうすると塞がりができて気の流れが悪くなるのね。逆にモノを減らして気の流れをよくすると、どんどんパワーが漲ってくるの」

そういえば、かの有名な錦織圭選手もお掃除や片づけにハマり始めてから世界ランキングが変わってきたとテレビで話してた。

www!
年末の大掃除、私もお部屋をパワースポットにして○○を変えなくちゃ!

(了)

後記

このあと、1日かからずにA子さんのお姑さんの部屋はキレイに片付きました。
A子さんは今回の経験を生かして今、吉田先生のお仕事のお手伝いをしています。

#ときめき #親の片付け #金スマ